第24話 普通に終わる気が……
ハンターの集団に近づくと、皆が俺に気がついた。
「誰お前?」みたいな視線が痛い……。
その中に、見覚えのある少年がいた。
「おっ、一条か」
「何故白河くんがここに……もしかして西園寺さんからの助っ人って君なのかい?」
よりによって、一条がいるのかよ。
それは一条も同じようだ。「こいつかよ」みたいな顔をしてる。
まあ、ここはコイツの父親のクランだし、一条がいても不思議じゃないか。
「一条も深淵に挑戦するんだな」
「今日は初めて、後方支援として帯同が許されたんだ」
「そりゃ良かったな」
やっぱ大手クランも、パワーレベリングやってんだな。
一条がここにいるのは、実戦経験積ませながら、位階上げようって算段だ。
深度がⅠからⅡくらいの深淵なら、素人ハンターが参加しても安全だ。
だからこいつの参加が許可されたんだろうな。
俺は一条との関係はあまり宜しくない。
だが今日に限って、こいつとそこそこ普通に話せているのは、たぶん初めて深淵に挑む高揚感があるからだろうな。
「深淵討伐の責任者に挨拶をしたいんだが、教えてもらえるか?」
「ああ。平賀さん、西園寺さんから頼まれていたポーターが来ました」
一条に呼ばれて、むくつけき大男が現われた。
背中に盾をしょってるから、盾役だな。
「オレは平賀。【払暁の光剣】C班のリーダーだ。お前が西園寺さんが言ってたポーターか?」
「はい。白河です。今日は宜しくお願いします」
「【払暁の光剣】はお前のような学生が関われるクランじゃない。西園寺さんのおかげで、今回特別に帯同させてもらえるんだ。あまり勘違いするなよ」
「……はい」
はい、挑発いただきました。
平賀はずいぶんと不機嫌なご様子。
そりゃそうだろう。
あのジジイのせいで、クランの狩りに部外者を入れられるんだもんな……。
平賀の後ろには、C班所属のハンターが5人いる。
大剣が二人、弓が一人、魔法職が二人。さすが最大手、バランスが取れてる。
その皆が不満そうな、あるいは訝るような表情を俺に向けてる。とても俺を歓迎する雰囲気じゃない。
針のむしろだ。
「お前がやることは荷物持ちだ。あと、倒した魔物、悪魔から魔石を抜き取ってくれ。ただし――」
平賀が俺を睨みながら、ぐっと顔を近づけた。
「たとえ小指の先ほどの魔石でも万一かすめ取ろうとしたら、問答無用で殺す。わかったな?」
「了解です」
「あと戦闘中は絶対に前に出るな。前に出たら、仲間がうっかり攻撃するかもしれんからな。覚えとけ」
「うっす!」
攻撃するかも?
いやいやアンタ、俺が前に出たら殺すって顔してるぞ。
クランの稼ぎやメンバーの命に責任をもつリーダーだからってのはあるけど、いささか脅しすぎやしませんかね?
むくつけき男にここまで近づかれると、さすがに気持ち悪い。
あと顔デカすぎ。
平賀たちから離れ、ポーターらしき人達と合流する。
「本日、特別にポーターとして参加します。どうぞ宜しくお願いします」
「宜しく」
「おー、若いね」
「今何歳?」
「もしかして一条さんと同じ学校の生徒さん?」
「初めてのことだろうけど、自分たちが教えてあげるから、なんでも聞いてね!」
うわっ、俺に対する扱いが優しすぎて涙出そう。
「平賀さん、チームリーダーだからピリピリしてるんだよ。みんなの命を背負ってるからね。別に悪気あるわけじゃないから、気を悪くしないでね」
「いえ、大丈夫です」
ポーターのリーダーに教わりながら、専用の鞄を背負う。
鞄の中には、狩りに必要な物資が入っているが、俺が渡されたのは空の鞄だ。
ヒールポーションやらマナポーションは高い。新人が持って万が一破損したら大問題だから、持たせられないんだろう。
平賀たちが中に入る。
深淵は次元を隔ててるから、目をこらしても中の様子は見えないな。
暫くすると、向こうから一条が出て来た。
「出入り口の安全を確保しました。皆さん、中に入ってください」
皆に付き従い中へ。
次元が切り替わると、色が暗色になった麻布ヒルズの建物が目に入る。
ここで戦うのは大変だな……。
建物のせいで、どこに悪魔が潜んでるかわからないのがキツイ。
下手に動き回れば、あっさり不意打ちを食らいそうだ。
ゲームだと深淵の中でどれだけ建物を壊しても、深淵をクリアすれば元通りになるって設定だった。
ここでも同じなら、最悪ビルを全部壊せば不意打ちは避けられるんだが、先行してるハンターがいるとその作戦も取れないな。
入り口付近に散らばっている悪魔から魔石を抜き出す。
初めての魔石採取……うへぇ。生暖かいし、ヌメってるぅ。
ゴム手袋付けてるけど、しばらく手から血の臭を感じそうだ。
「白河くん、ハンターさんが呼びに来るまで暫くここで待機ね」
「うっす!」
まさか、深淵で手持ち無沙汰になるとは思わなかった……。
「エルドラ。戦闘状況はどうだ?」
『遮蔽物が多いので悪魔の索敵に手こずってますが、かなり楽勝ムードです』
「……そうか」
所詮深度ⅠかⅡだもんな。
たぶんここのボスより、ダンジョン四十階に出るオークのほうが強い。
「なにか不審なところはあるか?」
『ドローンを使って捜索していますが、現時点では特に不審な箇所は見つかっていません』
「そうか」
それじゃあ本当に、このまま終わりか。
俺が出来ることって魔物の体から魔石を抜き取るくらいしかないが……。
いよいよ、エマのオヤジが何をさせたいのかわからなくなってきた。
『――むむ?』
「どうした?」




