23
一応午前中に帰ると話をしていたので執事は玄関で待っていてくれたようだ。そして今回も客間へと案内された。
私物の無い本当に何にもない客間。
……私にはこれで十分なのね。
『家族って何だろう?』と、こういう時に考えてしまうわ。
仲良し家族ごっこをしたい訳ではないけれど、お前は家族ではないという扱いをされるとそれはそれでちょっと複雑な気持ちになってしまう。
「ユリアお嬢様、今から侍女達を呼びますのでしばらくお待ちください」
執事がそう告げて部屋を出た後すぐに侍女長を始めとした侍女三人が部屋へと入ってきた。
「ユリアお嬢様、おかえりなさいませ。明日のお茶会には最高の状態で向かわせるようにと旦那様から言いつけられております」
侍女長はそう言うと、私を風呂場へ連れて行き、一日かけてエステのフルコースが行われた。
休憩と称して午後のお茶を飲むときにマナーの確認があった。昔取った杵柄。とても素晴らしいですと褒められたわ。
『エメのおかげなの』と一言呟いておいたわ。
そうそう、食事も美容を気にした食事になっていたわ。一日位食べた所で変わらないと思うのだけれど。
「ユリア姉様おかえりなさい。平民暮らしが板に付いている分苦労しているんじゃない?」
ジョナスがそう嫌味を言うと、一番下の弟アレンもクスクスと笑っている。二人とも相変わらずみたいね。
「相変わらずだこと。その口を閉じなさい」
私はそう言って魔法で口を強制的に閉じてみた。二人とも目を見開いて驚いている。そしてモゴモゴと何かを叫んでいるわ。
「残念ね。こんな簡単な魔法も解除出来ないのなら貴族でも出来損ないではないのかしら?」
二人は私が反撃に出るとは思っていなかったようで怒り心頭のようだ。出来損ないという言葉が気に入らなかったのか。
二人とも魔法を解除しようとしているが、詠唱出来ないため解除出来ないでいる。
「ユリア、解除してやりなさい。ジョナスもアレンもユリアに謝りなさい」
父の言葉に私は仕方がないなと思いつつ指を鳴らして魔法を解除する。
「だって、こいつが!」
「ユリアはお前の姉だ。こいつではない。謝りなさい」
父が弟達に言うなんて天変地異が起こりそうだわ。
「中身が伴っていない謝罪なんて結構よ。お父様、ドレスを有難うございました。明日は買っていただいたドレスでお茶会へと行ってまいります」
「あぁ。粗相のないように」
母はというと、私を警戒しているのか黙ったままだった。
―――
〇
コホッコホッ。
「あぁ、咳が出ているな。今日は休みなさい」
「ですが、お父様。明日は大事な王宮で開催されるお茶会ですわ。ランドルフ殿下の婚約者としてこれくらい我慢してでも出席しますわ」
「クラーラ、明日は欠席だ。分かったな?」
「ですがっ」
「休みだ。いいな?」
「……はい。お父様」
「クラーラ様、公爵様に移ってはいけません。部屋に戻りましょう」
「ばぁや、わかったわ。お父様、おやすみなさい」
「……」
クラーラが乳母に連れられ部屋を後にした。
「ケルク、クラーラの薬を一週間分ほど追加しておけ」
「畏まりました」
―――




