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参加メンバーが決まったので、少年たちは次に決めるべき議題に移ることにした。
フィーもみんなに合わせて食堂の椅子に座ると、ギシッと音が鳴った。フィーの定位置だけど、最近立てつけが悪いのだ。
次に決めるべきなのは、団体戦の順番である。
「あいつらご丁寧に自分たちの順番を教えてくれるみたいだぜ」
そういってゴルムスがひらひらとみんなに見せた紙には、相手の順番が書いてあった。
先鋒ルーカ、次鋒ジェリド、中堅ケリオ、副将リジル、大将パーシルの順だった。
「あはは……、完全に舐められてるね……」
「ああ、こうなったら絶対にぎゃふんと言わせてやりたいぜ」
レーミエが肩を落としちょっと悲しげに笑い、スラッドが腕を組んで怒る。
「うーん、クーイヌとゴルムスを確実に勝てるところに当てて、あとは3人で誰かが一勝を拾いたいとこだけど」
フィーは割とまじめに考えていた。
戦力差を考えると、実際にそうするしかない。
残りのメンバーは、フィーが2勝10敗33引き分け、レーミエが22勝18敗5引き分け、スラッドが23勝21敗1引き分け。
引き分けメーカーのフィーは置いておいても、割と微妙な成績だった。
「クーイヌ、出てくるメンバーのおおよその強さってわかる?」
もとは東の宿舎にいたクーイヌに情報を求めてみる。
クーイヌはこくりと頷いておしえてくれた。
「パーシルが強いです。リジル、ルーカは同じぐらい。リジルが若干上かもしれない。ケリオは以前まで補欠だったから、ケリオが一番倒しやすいかもしれないです」
どうやら東の宿舎のメンバーは、かなり正攻法な順序となっているようだ。
「一番倒しやすいって言っても、優勝者の一人なんだよね。他の人がでてない大会では優勝してるの見たことあるし」
レーミエがいまいち自信なさそうに言う。
補欠といってもクーイヌがいたからなのだから、実力者であることは間違いなかった。
「でも、やるしかねぇだろ。とりあえず俺とクーイヌが1番目と2番目に強いのをぶっ倒せば、お前たちの中で勝つ確率があがる。それより早めに対戦する相手決めて対策を練って一人一人が勝つ確率を上げる方が重要だと思うぜ」
「確かにそうだね」
「じゃあ、こっちも正攻法か」
ゴルムスの言ったことは正論だった。
ゴルムスたち上位陣の差より、フィーたち下位陣の差がたぶんかなり大きい。これをできるだけ詰めておかないと、きっと勝負にもならない。
ゴルムスの意見にみんな頷いた。
対戦順序が決まった。
大将がクーイヌ、副将がゴルムス。
そして……。
「僕が先鋒だね!」
先鋒を命じられたフィーは、きりっとした顔で力瘤をつくった。まったく膨らまなかったけど。
先鋒は勝って試合の流れをつくる重要な位置だ。重要なポジションを任されて俄然気合が入ってくる。
「ああ……、お前を途中に入れると、流れがめちゃくちゃになる可能性があるからな。そこに置くしかねぇ」
「なんだよぉ!それ!」
ゴルムスがフィーが先鋒に選ばれた実情を述べた。
「そうじゃねぇっていうなら、試合で証明してみろ」
「むぅ!もちろんだよ!」
フィーが気合を入れている理由は他にもある。
相手がルーカだからだ。
「それにあいつクーイヌのこと馬鹿にしてくれたからね!一撃頭にお見舞いしてやらないと気が済まないよ!」
全員から総ツッコミを受けたあの時のフィーのセリフだが、割と本人は本気で怒っていた。
上下関係は持ち込んでても、クーイヌはフィーの友だちなのである。そういうちょっと変わった友情意識を抱いているのは、王侯貴族ゆえの独特な感性か、本人の特徴なのかはわからないけど。もしくは偶然手に入れた大型犬への愛着か……。
「俺は気にしてないです」
「僕が気にするの」
クーイヌの表情はフィーのことを心配するものだった。
「でも、ルーカはかなり強いから」
「クーイヌは心配しないで、自分の試合に集中して。一番強い相手と当たるんでしょ?僕もがんばるからさ」
いまいちクーイヌの心配は伝わってないようで、フィーはやる気満々の顔でそう言った。
そうして少年たちの対戦順序がきまった。
先鋒はフィー対ルーカ。フィーとしては是非ともぎゃふんと言わせてやりたい相手だ。
次鋒はスラッド対ジェリド。
中堅はレーミエ対ケリオ。やる気満々のフィーは置いておいて、このどちらかで一勝を拾いたいのがゴルムスたちの実情だった。
副将はゴルムス対リジル。邂逅したときににらみ合った大柄の少年ときのこ頭が、そのままぶつかり合うことになった。
そして大将はクーイヌ対パーシルである。




