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 入団試験の受験者としての受け付けは問題なく済み、ついに試験がはじまった。

 試験の内容は入団希望者同士が一対一で木剣で戦うというものだった。


 各々の場所で受験者たちが、剣をぶつけあう。それを騎士の格好をしている人たちが見ていた。

 クロウの姿もあった。


 そしてついにフィーの名前が呼ばれる。


 相手は大柄な、フィーの体の3倍ぐらいありそうな大柄な男だった。

 騎士の人に名前を確認され、戦うための木の柵で囲まれた場所に入る。

 入ってきたフィーの姿を見て、男は馬鹿にするようにわらった。


「なんで下の毛も生えてないようなガキが、こんなとこにきてるんだ?ここは子どもがちゃんばらごっこする場所じゃねーぞ。怪我するからはやく帰ってママのミルクでも飲んでな」


「あの坊主、運がねーな。まさかゴルムスと一回戦で当たるなんて」

「ああ、優勝候補の一人だぜ」


 まわりで見ているものたちの声を聞いてフィーは運がないな、と思った……。

 でも、勝つしかない。

 だから、むしろ開き直ることにした。


「あれ~?オーストルのゴリラって言葉がしゃべれるんですねぇ。かしこいんだなぁ。びっくりしちゃった。

 それでなんでゴリラが騎士の入団試験を受けてるんですか?全身毛深くったってゴリラが騎士になるのはいくらなんでも無理じゃないですか?」


 フィーは自分から人の悪口を言う子ではない。冷遇されるあまり、ちょっぴりひねくれてしまった面もあるが、根の部分はクロウに見せたようにいい子である。

 しかし、同時に日陰者としてあまんじてきた人生から、心に暗い部分を抱え、陰口や人を馬鹿にする語彙にはかなり詳しい。

 自分が幼いころ面倒をみてくれた侍女が、自分の陰口をいっていたのを聞いたときは泣きそうになったが、そんな苦い経験もいま役にたってるのかたってないのかはわからないが、とにかくまあ何かでてきてしまった。


 人生をかけた一世一代の勝負が、フィーのそんな暗黒面まで全開にしてしまっていた。


「て、てめぇ!いい度胸じゃねぇか!試合がはじまったらすぐぶっころしてやるから覚悟してろよ!」


「あのガキ、命知らずだな……」

「どんな神経してやがるんだ」


 あたりまえだ。ここで負けたら、フィーには死んだも同然の人生が待ってるのだ。

 フィーはいままでの人生すべてをかける覚悟で木剣を構えた。

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