表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/205

80

 オーストルの国王、ロイが部屋の中に入ってくると、フィールは立ち上がり頭を下げた。


「こんばんは、ロイ陛下。リネットがお茶をいれてくれました。よろしかったらお飲みになってください」

「そうか、ありがとう」


 そういいながら、ロイはジャケットを自分で脱ぎ捨て、そこらへんの棚に放り投げた。

 リネットが眉をしかめてそこに走っていき、放り投げられたジャケットを延ばし、きちんとハンガーにかける。


 それからリネットは急いで厨房に走っていき、国王と王妃のための夕食を取りに行く。

 国王夫妻の食事としては、やや少なく見える―――一般人にとっては普通程度―――食事をカートにのせて戻ってくると、ロイとフィールが会話をしていた。


「オーストルでの生活はどうだね。不満があったら遠慮なく言って欲しい」

「いえ、ロイ陛下には十分によくしてもらっています。不満なんてありません」


 フィールに話しかけるロイの声は、普段の彼の声よりは若干やさしく聞こえる

 ロイは、部屋に入ってきたときと同じく、再び謝罪した。


「君には監禁するかのような生活を送らせてしまって、大変すまないと思ってる」

「ロイ陛下に助けていただいたこととても感謝しています。これ以上、望むものはありません」


 そう言ってから、フィールは少しもじもじしながら、ロイに言った。


「あの……、でも……、もしよろしければそろそろフィーねえさまに会わせていただきたいのですが」

「だめだ」


 フィールのたのみごとは、ロイによって即断で断られた。


「なぜですか……!」


 フィールが悲しそうにロイに問いかけた。

 それにロイは冷静な声で答えを返す。


「君の姉が今回の事件に関与してないという保証はない。もしもという可能性が否定できない以上、君を姉と接触させるわけにはいかない」

「ねえさまはそんなことをする人ではありません!」

「そうです。フィーさまは絶対にそんなことはしません!」


 ロイの言葉にフィールだけでなく、リネットまで侍女の分を越えて抗議の声をあげた。

 しかし、ロイはリネットを咎めることもせず、二人を見て静かな声で返す。


「言ったはずだ。私はほぼ全てを疑うと。この件において、君とリネット、そして私が信頼すると思える部下以外を信用するつもりはない。例え君の姉でもだ。

 私は君の身の安全については、可能な限りのリスクを避ける所存だ」

「でもっ……!」


 まだ言い募ろうとするフィールに、ロイの目つきが鋭くなりはじめた。

 その背中からは黒いオーラが立ち上りはじめる。


「繰り返し言おう、例え君やリネットがどれだけ誰かを信用しようと、私はその誰かを信用する気は一切ない。

 そもそもの話として、今回の捜査については私に一任してもらったはずだが?」


 ギロリと鋭くなった目つきが、フィールを捕らえる。

 思わずフィールの肩がびくりと震えた。


 リネットはその光景を見て思う。


(たぶんぜんぜん分かってない……)


 恐らく無意識なのだろう。この国王がこうやって相手を睨むのは……。


(フィールさまは怖がっていらっしゃるのに……)


 フィールさまはいろんな知識をもち、大変に聡明でいらっしゃる方だが、別に勇気にすぐれているわけではない。いや、むしろどちらかというと、怖がりな方かもしれない。

 大の男からにらまれれば当然ながら怖いのだ。


 それでも持ち前の優しさで恐怖を乗り越えることもあるフィールさまだが、今回ばかりは相手が悪かった。

 大国オーストルの国王で、氷の王と呼ばれるロイである。

 そこに今のフィールの状況も加わると……。


 フィールは意気消沈した様子でうなだれて、ロイに謝罪の言葉を述べるしかなかった。


「申し訳ございません。ロイ陛下には助けて頂いただけでも感謝すべき立場なのに……、過ぎた口を利きました……」


 その様子にようやくロイも自分が相手を怖がらせていたことに、ようやく少し気づいたようだった。

 顔の険を取り、あの冷静な仮面を被りなおすと、フィールに向かい普段より若干優しい声に戻し言った。


「いや、こちらこそ厳しい言い方をしてすまない。しかし以前にも言った通り、信用できる人間との接触以外はできる限り最小限におさえたい。我慢して欲しい」

「はい……」


 ロイは落ち込むフィールを見つめると、真剣な表情で言った。


「フィール王女。トマシュ王子との約束にかけて、君の身は何があろうと絶対に守る。安心してといえる状況では決してない。だが、可能な限り心穏やかにこの国で過ごして欲しいと思っている」


 そう言うと、ロイはリネットが淹れてくれたお茶を一口含み、席から立ち上がった。


「すまないが、まだ仕事が残っているので書斎の方にいかせてもらう。忙しいのでね」

「はい、来ていただきありがとうございました」


 そんなロイにフィールは頭をまた下げた。


「あの、陛下お食事は……?」

「これだけ貰っていく」


 リネットがそう聞くと、カートに乗った皿をひとつだけ取り、国王夫妻の居室とされている部屋の中にある書斎の方にいつも通り引っ込んでいった。


 リネットは今のフィーの状況を、フィールに告げることができずにいた。

 それは今のフィールの心労を増やすことにしかならないだろうから……。

昨日の夜、20時ごろに没をあげ、それを80話(この話)に差し替えたり、どたばたしてしまいました。大変申し訳ありません。

(一回の)更新量が少ないとのご指摘に、思いのほか動揺してしまいました。

(動揺した理由は正しいご指摘だと感じているからです)

かといって実は今の状態がいろんな条件のもと自分がもっとも速く更新を行える状態でして、何かできるわけでもありませんでして、このままがんばらせていただきたいと思います。

読者さんには大変ご迷惑などをおかけしました。


※すいません、記述が誤解を与えるものだったので文章を加えさせていただきました。(2016/1/2/17:48)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
今の状況? なんかなぜか騎士見習いになって楽しんでますが何か? いや、それはそれもどうなんだ…っ!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ