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 その日の夕方、フィーは今から城の外にいくという見習い騎士たちから、一緒にいこうと誘われた。


「うん、いいよ」


 フィーは笑顔でそれに頷くとクーイヌを呼んだ。


「クーイヌ、いこうー」

「はい」


 フィーに手招きされ、クーイヌも後ろからぱたぱたとついてくる。

 北の宿舎ではもうおなじみになった光景だった。だから誰も突っ込まない。むしろヒースとクーイヌ、二人とも誘うときは、フィーを誘えばいいとみんな思っている。


 集合場所と言われた北の城門前までやってくると、顔見知りの見習い騎士たちがいた。


 ゴルムス、スラッド、レーミエもいる。

 ギースは最近、足を怪我した。あまり出歩けないから来てないみたいだった。


「全員揃ったみたいだな」


 総勢11人の大所帯だった。


「それじゃあいくか」


 スラッドがそう言ったとき、城門前を騎士たちの集団が通りかかる。

 その中にはクロウとオールブルもいた。


「お前たち今から街へ出かけるのか?」

「はい!」

「下町にいってきます!」


 クロウが気さくな笑顔で話しかけてくると、見習い騎士たちが嬉しそうに返事をする。

 クロウはとにかく顔が広い。もともと見習い騎士の出身で、第18騎士隊ができる前は第一騎士隊の人員として活躍してた。

 いまもいろんな騎士隊の助っ人にいってることから、ほとんどの騎士隊の人間と顔見知りだ。

 先輩騎士が顔見知りなので、必然的に後輩である見習い騎士も、クロウと話す機会が持つことができた。


 おまけに北の宿舎にはフィーがいる。

 クロウはフィーに良く会いに来るので、他の見習い騎士たちもクロウと話せたりすることがある。


「あんまり遅くならずに帰ってこいよ。あと、うちのヒースのことをよろしくな!はぐれて迷子になったりしないように気をつけろよ」

「僕を子供みたいに言わないでくださいよ」


 みんなについていく子ども扱いされ、フィーはクロウを半眼でにらんだ。

 

 隣ではクーイヌがクロウの姿を見て、ぱたぱたと嬉しそうにしている。

 一番の憧れの騎士はイオールだけど、クロウにも憧れてるらしい。

 気の多い奴め……、とフィーは思う。


 でも、クロウはほとんどの見習い騎士にとって憧れの騎士の一人で、各々の少年たちは話しかけられて嬉しそうにしていた。

 ナンパなとこが玉に瑕だけど、実力はぴかいちで容姿端麗、性格も面倒見もいい。これで憧れない方がおかしいかもしれない。

 それにクロウがする女性関係の話も、男の子たちは顔を赤くしながらも、よく聞き耳を立てている。男子にとってはナンパなところも、マイナスではなくプラスなのかもしれない、とフィーは思った。


 他の騎士の人たちも交えて少し話すと、フィーたち見習い騎士はそろそろ街へ向かうことにした。


「それじゃあな」


 クロウたちが笑いながら後輩たちを送り出し、こちらも手を振って別れる。

 オールブルも『楽しんでな』と書かれたボードを掲げて見送ってくれた。


「くー、クロウさんやっぱりかっこいいなぁ」


 スラッドが興奮がおさまり切らないように、かみ締めるように言った。

 それにまだ褐色の肌の頬を、朱に紅潮させたクーイヌがうんうんと頷く。

 仲良くなってわかったことだけど、クーイヌは基本的には無口だった。必要なときには―――転入してきたばっかりのときのように―――喋るけど、それ以外は聞き手にまわって相槌をうつ方が多い。

 どうも喋ることをあらかじめ頭で決めておかないとしゃべれないタイプのようだった。

 ただし無口だけど、感情表現は表情から駄々漏れだ。何を考えてるかみんなわかってしまうから、コミュニケーションに不自由はない。

 クーイヌにとってはいいことなのかわるいことなのかはわからないけど。


「俺もクロウさんみたいに強くなってモテモテになりたいぜ」

「お前じゃ無理だって」


 それぞれの少年たちがクロウへの憧れを語り合う。


「俺はオールブルさんみたいに強くなりてぇなぁ」


 そんな中で、オールブルに憧れを示したのがゴルムスだった。


「へぇ、ゴルムスはオールブルさんに憧れてたんだ」


 みんなクロウに憧れる騎士が多いけど、オールブルも大好きなフィーはその話題に飛びついた。


「ああ、あの人は凄いぜ。パワーはおそらく騎士隊で文句なしの一番。それなのにスピードもあるし、技術もある。いろんな装備の扱いにも長けてるし、俺が目指すならあの人しかないって思ってるぜ」


 確かにゴルムスとオールブルの体格は似ていた。オールブルさんのほうがまだひとまわり大きくて、ゴルムスは悪人面で、オールブルさんは見るからに優しい顔だちだけど。

 みんなそれぞれ憧れの騎士があるらしい。


 フィーの憧れはたいちょー……と言いたいところだけど、自分がたいちょーになるのは無理だってわかっている。

 だから現実的な目標としては。


「僕はカインさんかな」

「カインさん?」

「誰だそれ?」


 聞き返され、フィーは答える。


「ほら、よく木の上に隠れてる、口元をなぜか隠してる、すごくやさしそうな」

「木の上に隠れてる?」

「顔を隠してる?」

「それって本当に騎士なのか……?」


 どうやらみんなカインさんについては知らないらしい。イオールたいちょーやクロウさん、オールブルさん、パルウィックさんあたりは有名なのに……。


「むぅ、本当にかっこいい人なのにぃ……」


 フィーは少年たちの反応に、頬を膨らませ、いつかカインさんの存在をみんなに知らしめてやりたいと思った。


 少年たちはいろいろ話しながら、夕暮れの街を下町のほうへと向かっていく。

 見習い騎士たちが下町をうろつく光景は、めずらしいことではなく、顔なじみになった店の人たちが手を振ってくれたりする。


 見習い騎士たちは3割ほどが貴族出身者で、残り7割は平民出身者だ。あとはフィーのようにちょっと出自が怪しい者も混ざっている。

 フィーと仲が良い人間で言うと、クーイヌ、レーミエは貴族出身。ゴルムス、スラッド、ギースは下町出身だった。

 やっぱり数が多いせいか見習い騎士たちで集まると下町の方にいくことが多い。見習い騎士の給料もそれに見合ってるから、貴族出身の子もそれに慣れていく。


 これがクロウさんみたいな大人になるとお給料が増えて、ちょっと大人な店とか行く場所も増えていくのだけど。


 そんなわけで、今日も下町に繰り出した見習い騎士たちだが、いつもいく方向とはちょっと違っていた。

 フィーはそういえば目的を聞いてなかったことに気づく。

 てっきり買い物か何かだと思ってたけど、下町の商業街がある場所とは違う。


「ねぇ、そういえばどこ行くの?」


 そう聞いたフィーに、少年たちから答えが返ってきた。


「ああ、言ってなかったか?今日はみんなでサウナにいくんだ」

「毎日水浴びばっかじゃさびしいからな」

「最近、安い場所ができたっていうから、みんなで行ってみることにしたんだ」


 サウナ……。

 それは熱い蒸気を満たした部屋に服を脱いで入り、汗を流して体を綺麗にするもので……。

 そして当然ながらみんなが一緒に入るものだった……。


みなさまお仕置き(そして罰ゲーム)について、たくさんの案をありがとうございます!

まだ何にするか決めてないのですが、とても良い意見ばっかりで、妄想して楽しんでます。

このエピソードではまだ男らしさランキングは決着がつかないのですが、決着がつくときには罰ゲームとお仕置きをかかせていただきたいと思います。

ありがとうございます!

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