73 男らしさランキング
クーイヌと仲良くなってしばらく経ったある日のこと。
フィーが休憩所を訪れると、男の子たちが集まって、何か紙を見ながらわいわいがやがやと騒いでいた。ゴルムスとスラッド、レーミエの姿もある。
なんだかとても楽しそうな気配だ。
「なになに?なに見てるの!」
気になりフィーも飛びつく。
「ん?ヒースには関係ないものだぞ」
「そうそう、ヒースにとってはあんまり意味がないものだ」
「うん、ヒースは気にしないでいいと思うぞ」
しかし、まわりの反応は冷たい。冷たいというか薄い。
自分だけ関係ないと言われ、フィーは眉をしかめ頬をふくらませた。
「なんだよー!僕だけのけものかよー!」
そして近くにいたゴルムスの頬を飛び上がってつねる。
「いててっ、俺はなにもいってねーだろが!」
「うるさい、のけものにしようとした時点で同罪だ!」
「わかったわかった!見たいなら見ろよ!」
じたばた暴れだしたフィーに、慌てて見習い騎士たちが紙を1枚渡す。
フィーはそれを受け取って見た。
そこには北の宿舎の見習い騎士たちの名前と、その横に数字が書かれていた。そしてタイトルにはこう書かれていた。
「おっ……とこらしさランキング……?」
「男らしさランキングな」
フィーが首をかしげながら読み上げた単語を、他の見習い騎士が訂正した。
「北の宿舎で誰が一番男らしいかを決めるってランキングだ」
「それで1位になった奴が、この北の宿舎で一番男らしいってことさ」
「そういうわけで、ヒースにはあんまり関係ない話なんだ」
そう言われてフィーは心外だという気分になった。
男らしさ?自信ありますとも!
胸をとんっと叩いて、それをみんなに主張する。
「この国ひろしといえど、僕ほど男らしい騎士はなかなかいないよ。イオールたいちょー、パルウィックさん、その次に僕が来るぐらいの勢いだね!」
「え……?」
「いや……」
「それはねぇよ……」
あまりに大きくですぎたので、みんなものすごく微妙な反応をした。
フィーもさすがに誇張しすぎたかもしれない、と思った。
のけものにされてちょっと腹が立ったのだ。
でも、自分で言うのもなんだがいい線いってると思う。最近、侍女の女の子たちはきゃーきゃーしてくれるのだ。フィーは間違いなく自分が男らしいと確信していた。
「とにかく僕もそれに参加して、男らしさを証明してみせるよ!」
「いいのか?最下位は罰ゲームだけど」
「ちなみに僕が今のところ連続最下位だよ……」
そういったレーミエは肩をおとして、ちょっと涙目だった。
柔和な性格で容姿もどちらかというとかわいい系のレーミエは、こういうランキングが低くなってしまうのも仕方ない。
フィーもレーミエには、普通に勝てる自信があった。
「うん、レーミエには負ける心配ないし参加するよ!むしろ僕は上位獲るし!」
「ひどいっ……!」
フィーの言葉にショックを受けるレーミエをおいて、フィーに男らしさランキングの説明をしてくれていた見習い騎士の少年は、フィーが参加の意思を表明すると、急に男らしい格好で腕を組み、男らしく低くしたっぽい声で言った。
「よし、わかった!北の宿舎男らしさランキング第四回からは、ヒースも参加するぞ。みんないいな?」
「おう!」
「問題ない!」
「いいぜ!」
それに見習い騎士たちがそれぞれ男らしいっぽい返事をして、フィーの北の宿舎男らしさランキングへの参加がとり決まった。




