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 僕が無能者だったら冷たく接するんですか、とイオールに聞いたフィー。

 イオールを前にその答えを待った。


 どきどきと心臓がなり、胸がきゅっと締め付けられる。


(その通りだって頷かれたらやだなぁ……)


 自分で聞いておきながら、フィーの気持ちはそうだった。


「ふむ……、そうだな……」


 フィーの言葉にイオールは顎に手をあてて考えはじめた。

 そして30秒後、フィーに向けて、口を開いて言った。


「そんなこと言われても、騎士の中でも稀有な才能をもち、弱点を克服しようと常にがんばっている努力家で、俺やみんなのために一生懸命に動いてくれる。それがお前だ。

 それに部隊の雰囲気もなごませてくれるし、俺自身もお前といる時間を心地いいと感じている。俺にとって代えようのない価値をもった存在だ。

 だから、それ以外のお前なんて想像しろと言われてもまるで想像がつかない。だから、そんなこと聞かれてもよくわからん」


 その言葉を聞いてフィーの頬が、かーっと熱くなった。

 思わず口もとがにやけた形になってしまいそうになるのを、必死におさえる。


「ほ、褒めてごまかそうとしたってむ、無駄ですからねっ!?」


 フィーはそれを誤魔化すため、怒った口調でイオールにそういった。


「そ、そうか。すまん」


 イオールはフィーが何故怒ったのかまるでわかってない顔だった。 

 本当に朴念仁、ここに極まれりだった。


 そしてまた少し考え「ああ」っと思いついたように言う。


「だが、負傷して騎士として仕事が出来なくなった者については手厚く支援をするぞ。彼らは国への功労者だ。ぞんざいに扱うつもりはない。

 お前に怪我はして欲しくないし、そうならないように俺も気をつけてるつもりだが、その点については安心してくれ」

「そういう話をしてるんじゃないです……もう……」


 フィーはまだ赤面したまま、肩を落として、はぁっとため息をはいた。

 一気に気勢もそがれた感じだ。


 結局、だめなのだ……。

 イオール自身に女の子を大切にしたいという気持ちがなければ、根本的な解決にはならないのである。


 それでも彼の忠実な部下として、一応の忠言をしておいた。


「じゃあ、部下からたいちょーへお願いします。女の子にはできるだけ優しくしてください」


 イオールはその言葉を聞くと、少し考えるように沈黙したあと、組んだ腕を揺らし、眉間をぴくぴくと震わせながら、搾り出すような声で言った。


「ぜ、善処しよう……」


 だめだこりゃ、とさすがのフィーも思う。


(そんなに女の子の対応に手間をとられるの嫌かなぁ……)

 

 少し想像しただけで、体をふるわせるほどの苦痛を見せたイオールに思う。

 実際、たいちょーは本当に忙しそうだし、そこは可哀想だとおもう。けど、このままじゃ、いろいろまずいと思う。

 騎士としては困らなくても、これから結婚とかあるだろうし。


(たいちょーも自分が優しくしたいって思う子がいれば変わると思うんだけどなぁ。

 きっとフィールみたいな素敵な女の子と出会ったら、たいちょーも変われるのに……)


 残念ながら、フィールはもう人妻だった。

 国王陛下の妻に横恋慕はさすがにたいちょーといえどまずすぎる。


 たいちょーを変える手立てが思いつかず、フィーはこの件を一旦保留にせざるを得なかった。

 いつかたいちょーを変えられる素敵な女の子を見つけたとき、また動き出せばいいのだ。そう決心しながら。



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