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 その後、クレープ屋さんによってクロウさんにおごってもらったり、家具屋によっていろいろ眺めてみたり、目的の場所につくころには、すっかり夜になっていた。


 フィーがクロウとやってきたのは、高級そうな店の立ち並ぶ地区だった。

 空は夜の闇に覆われているというのに、店の窓から漏れ出す明かりと、オイル式の街灯からでる光があたりを照らし、まばゆさすら覚えるほどだった。


「わぁ……」


 フィーはおもわず口をおさえて呆けてしまう。

 一応、王女として王宮で暮らしてた身だから、夜にも明かりがある生活は送っていた。

 でも、こんなに街が光り輝いているのを見るのははじめてだった。


 オイル式の街灯は、このオーストルでも一部の地域にしか設置されていない。フィーがゴルムスたちと行くような下町にはまったくなかった。

 つまり、ここは王都でもかなり高級な商業地区ということになる。


 いろんな店の窓から盛れでてくる光が、綺麗に塗られた壁や街路の石畳の上に折り重なり、街灯の光とまぜあわさり、さまざまな紋様を作っていく。

 初めて見る綺麗な光景に、呆然とそれを眺めていると、そんなフィーのリアクションにクロウがくすりと笑った。


「こういう場所にくるのは初めてか?」

「はい、見習い騎士のお給料じゃ足りませんから。でも、クロウさんもあんまり来たことないんですよね」

「まあ俺ももう少し気軽に過ごせる店のほうが好みだからな。それよりはぐれるなよ。治安はいいけど、迷子になられると面倒だからな」


 そういってクロウがまた手を握ってエスコートしてくれる。

 フィーは素直にそれについていった。


 二人は並んであるきながら、ひとつの店の前まで来る。

 店の前に掛けられた吊りランプに照らされている看板を読むと、フィーも名前を聞いたことがある有名な店だった。


「ようこそ、いらっしゃいませ」


 店に入ると、礼儀正しい物腰のウェイターが二人を迎えた。


 なんだかフィーは緊張してきた。

 だって高級な店って敷居が高い。

 下町メンバーと仲が良くすっかり庶民根性が身についてしまったフィーは、何かあって追い出されたりしないだろうかとどきどきしてしまい、思わずクロウの手をぎゅっと握った。

 そんなフィーの反応が伝わったのか、クロウはちょっと苦笑しながらも、手を握られたままにしておいた。


「二人だけど席は空いてるかな?」

「はい、夜景の見える席などどうでしょうか」

「ああ、頼む」

「それでは、ご案内させていただきます」


 クロウに連れられて、落ち着いた雰囲気の店の中を歩いていく。

 オーストルに来たばかりのときは、こんなことを経験するとは思ってなかった。


(ううん、デーマンに居たときも……)


 訓練とはいえ、クロウさんととはいえ、こんな風にお店にくるなんて。

 何もかもが初めての経験で、やっぱりちょっと緊張したりする。


 外の景色が見える席に案内され、席についてウェイターが去っていったとき、ようやくフィーはひとごこちついた。

 ふう、っと胸をなでおろし、息をはいた。


 それに優しい顔をしてクロウが言った。


「悪かったな。付き合わせちまって」

「いえ、クロウさんにはお世話になってますから。それに―――」


 フィーはメニューを開き、いつもの調子にもどって、舌なめずりした。


「美味しいご飯はごちそうしてもらえますし」


 有名な高級店でご飯。フィーにとっては楽しみなイベントだった。


61話チェックしてまだイベント追加できるじゃんっと気づいたのは投稿時間直前でした。前文に一行程度ですいませんorz

時間ができたら、具体的なイベント増やしたいです。

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