表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/205

5

(しまった!?ばれた!?)


 「お嬢さん」といわれたとき、フィーの心臓がぎゅーっと縮まった。頬から冷や汗が垂れてくる。


 なぜなら、このときフィーは男装してたからだ。

 申し訳程度に本国から与えられていた結婚道具のひとつのハサミで髪をショートカットまで切り、離宮の中で倉庫になっていた部屋からボロボロになっていた庭師の服を見つけ、それに着替えた。


 フィーとしては男性として、見習い騎士の試験を受けるつもりだった。


 別に性別に制限があったわけではないが、少しでも受かる確率をあげたかった。

 女の子より少年の方が受かりやすいだろう。単純な理由だ。


 なんていったってフィーのこれからの人生がかかっているのだ。少しでも確率をあげたい。


(どうする……どうにかごまかせないかな……)


 女だとばれるだけならまだいい。

 こんなところにいるのを不審がられて調べられたら、いずれはこの国にやってきた厄介者の側妃だということがばれてまたあの離宮に放り込まれてしまうかもしれない。

 今度は見張りもあんなやる気のない奴らのままにはしておかないだろう。


(とにかく、ここをうまく切り抜けないと)


 情報が必要だった。

 相手がどれだけ、こちらを女だと確信してるのか。それ以外に不審がられてることはないか。


「あのっ、えっとっ、僕はっ」


 振り返ると、後ろにいたのは金色の髪をのばした、ヘーゼル色の瞳をした騎士だった。

 背が高くすらっとしていて、顔立ちはととのっていて女の子にモテそうだった。

 そして。


(なんか軽薄そう)


 それが相手にもったフィーの印象だった。


 騎士の男はなぜかこちらの顔をみると、面白そうに笑った。 


「わりぃわりぃ、そうびっくりした顔するなって。

 あんまりにも坊主がかわいい顔してるからからかっただけだ。

 どうしたんだ?迷子か?」


 その言葉をきいてフィーはほっとする。

 どうやらからかわれただけだったらしい。


「あの、僕、列に並ぼうとしてたんですけど」

「あー、もしかして列から追い出されちまったか?おまえ体ちいさいからなぁ」

「は、はい!そうなんです!」


 列に並んだことはないのだが、都合よく勘違いしてくれた。

 フィーはその勘違いに便乗する。


「悪いけど、この場合は並びなおさなきゃいけないな。俺が最後尾まで案内してやるよ」


 そういって騎士はにかっと笑った。

 デーマンの侍女たちならその顔を見た瞬間、赤面して気絶してしまうかもしれないかっこいい笑顔だった。


 ただフィーとしては、それよりも最後尾まで連れて行ってくれるというのがありがたかった。


(これで不審がられることなく城を出られて、入団試験の列にならべる!)


 なんて運がいいんだろうと思う。


「ほら、お前ら道を開けろー。俺はおまえらみたいな図体のでっかい男の体になんてさわりたくないからな。触るならベッドの中で裸になってるかわいい女の子の体だってきめてるんだ」


 そういって騎士は、ごった返した入団希望者の列から、通り道を開けていく。


(やっぱり思ったとおりの軽薄な人だった……)


 その言動にフィーは、この騎士が第一印象どおりの人物だったことを確信した。


 騎士は入団者の列から通り道を作ると、こちらへ振り向いて笑いながら手招きする。


「ほら、坊主。いくぞ」

「はい!」


(でも、意外といい人だよね)


 フィーはその背中を微笑みながら追いかけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読み返すと、初対面から「カッコいい」とか「いい人」とか 好印象だったんですね ちなみに私はクロウのことを 初見では主人公をかどわかす中ボスかと思っていました すまないクロウ フィーは世間知…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ