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25

(情けないなぁ……。次はもっとがんばらないと……)


 フィーは救護室のベッドに寝かされ、天井をみあげながら思っていた。


「あーあ。まだ無理してやろうって顔してるぞ、こいつ」


 いつのまにかクロウが近くにいた。


「あれ?クロウさん。わっ、なにするんですか!?」


 クロウはフィーに近づくと、そのままお姫さま抱っこで抱き上げる。

 そして戸惑うフィーの顔を見ていたずらっぽくわらった。


「馬鹿な隊員を説教場所まで連行だ。イオール隊長のきつーい説教が待ってるぞ」

「たいちょーが?」


 説教……。何かわるいことしただろうか。

 あ、ランニングぐらいで倒れたことか。

 確かにランニングぐらいで倒れるなんて情けなくて、たいちょーもお怒りかもしれない。

 フィーはそんなことを思う。


 そんなフィーの鼻をクロウがでこぴんした。


「いだっ」

「ばーか。そっちじゃねぇよ」

「まだ何もいってませんけど……」

「顔みりゃわかるの。お前はわかりやすいからな」


 どうやら違ったらしい。

 じゃあ、なぜたいちょーは怒ってるのだろう。

 フィーは首をかしげた。


「お前軽いなぁ。女の子みたいだぞ」

「ほ、ほっといてください……」


 クロウに抱っこされたまま連行されると、イオールが王宮の裏庭の人目のつかない場所でたっていた。


「来たか……」


 イオールはフィーが来たのをみると静かな口調でそういった。

 フィーはあらかじめ用意されていた椅子に、クロウによって座らされた。


 イオールは腰には剣を差し、その手には剣の柄を握っている。


(え……?斬り捨てごめん……?そこまで怒らせちゃったの……!?)


 イオールの真剣な表情に、フィーはそんなマヌケなことをついつい思ってしまった。


 さすがにイオールもフィーを切り捨てにきたわけではない。当たり前だが……。


 イオールのまわりには、木製の人形が5体おかれていた。


「ヒース、見ていろ」


 イオールはそういって剣を抜いた。

 銀の光が一瞬目にうつったと思ったら、イオールのまわりにあった5体の木製の人形が、その一太刀で切り倒されていた。

 フィーの目には、太刀筋がまったく見えなかった。


「どうだ、ヒース」

「す、すごいです……たいちょー」


 本当にすごかった。

 剣の速さもさることながら、その太刀筋の正確さもすごかった。すこしばらばらの位置においてあった木製の人形なのに、全部、同じ位置を正確に斬っている。


(こんなにすごい剣技……、デーマンじゃ見たことないよ……)


 フィーはイオールの振るった剣捌きに圧倒されていた。


「ヒース、お前はこれを一週間で真似できると思うか……?」

「む、むりです……」


 そんなことできるはずなかった。

 フィーが一生かかっても、身につけられるかどうかという剣技なんだから。


「そうだろう。俺がこの剣技を身につけるのには18年かかった」

「18年……」


(イオールたいちょーほどの人でも、それだけの時間をかかってようやく身につけたのか……)


 フィーはそんなすごいものを見せてもらえたことに気づき、唾を飲んだ。


「それはお前のまわりの見習い騎士たちも同じだ。5年間、10年間かかって今の力を身につけてきている」

(そうなんだ。じゃあわたしはもっとがんばらないと……)

「ちがう」


 フィーが口にださずに思ったことを、イオールは首をふって否定した。


「言っただろう。18年かけたと。

 もし、一朝一夕で力が身に付くなら、誰も5年、10年と努力したりはしない。もし、本当にそう思うなら、それはまわりの人間の力を軽んじているということだ。

 俺はお前にまわりの人間から学べと言ったはずだ。それはまわりの人間の力を尊敬し、尊重するということでもある」


 そう言われて、フィーもはっと気づく。


「あえて言おう、ヒース。まわりの人間に追いつこうなどと思うな。

 5年かけて今のあいつらに追いつけ。10年かけて5年後のあいつらに追いつけ。

 あいつらはそれだけの努力をしてきたのだ。そしてお前もいまから、騎士として長い年月をかけて、それをしていくのだろう?」

「は、はい……!」


 そうだ。自分もずっと騎士を続けていくんだ……。

 追いつくことはできなくても、長い年月をかけて、彼らのあとを一歩づつ追っていくことはできる。


「もし無理を続けて大きな怪我をすれば、それだけ努力できる日数が減るぞ。それは良いことか?」

「良くないことです!たいちょー!」

「そうだ。無理をすれば努力できる日数が減る。それはよくないことだ。わかったか、ヒース」

「はい、たいちょー!もう無理はしません!」


 フィーは椅子の上で、おぼえたての敬礼をした。

 その様子を、クロウが苦笑いしながら見守る。


 ヒースの様子に、イオールは頷いた。


「では、俺はいく。忙しいのでな」

「はい!ありがとうございました!」


 フィーはそんなイオールの背中を、ビシッと背筋を立てて見送った。

 その言葉を胸に刻み込みながら。


 あのすごい剣術と、フィーのおごりを見抜き本当に必要だったものを諭してくれる言葉。


(やっぱりたいちょーはすごいひとだ!)


 フィーは第18隊の騎士になれて、イオール隊長の部下になれて、本当によかったとあらためておもった。

 


さすロイ

なお、そもそもの元凶の模様。


※2015/11/11

フィーミルくんの名前をレーミエに変更しました。

あらためてレーミエくんをよろしくお願いします。


わたしもイオールの言動には、自分で書いておきながら突っ込みたいときがあって、あとがきで突っ込んだりしてしまうのですが、うざかったら感想欄でいってください。

さすがにやめます。


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[良い点] あとがき突っ込み草ぁ ロイぇ…
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