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 フィーに馬鹿にするように冷たく笑われ、少年たちの顔が真っ赤になる。


「こ、この、人が下手にでてれば調子にのりやがって……!」

「そうだぞ、貧民の癖に」

「ふんっ」


 下手にでられた記憶なんてないが、同じようなことしか言わない少年たちに、相手をするのも馬鹿らしくなり、フィーはそっぽむいた。


「もう、どいてくれないかな?話をするのも馬鹿らしい」


 フィーとしてはもう相手にもしたくなかったが、二人の体が邪魔でどこにも行けない。

 少年たちもフィーをにらみつけるが、手をだしてくるような勇気まではないようだ。


 そんなとき、少年たちのうしろに大きな巨体があらわれた。


「なにやってんだ、お前ら」


 少年とは思えない筋骨隆々の体に、ゴリラのような強面の顔。ゴルムスだった。

 ゴルムスの姿をみると、少年たちの顔は嬉しそうに変わった。


「ゴルムスさん!このチビ、ゴルムスさんに一回戦で負けた癖に生意気なんですよ。第18騎士隊に入れたからって調子にのってるんです!」

「そうですよ!いっぺん絞めてやってください!」


 ここまでやっておいて、自分では手をだせず、他人に頼るとは情けない少年たちだった。よく見習い騎士の試験に受かったものだとフィーは思う。


 でも、さすがにこの状況でゴルムスに来られたらかなわないな、っと思った。


 少年たち相手なら喧嘩になっても、噛み付いたり暴れたりして精一杯抵抗してやろうとおもっていたが、ゴルムスは実際戦ってわかってることだけど強い。

 木刀をもっていても、フィーの力では倒せなかったのだ。素手の力勝負になったら、フィーではまったく勝ち目がない。

 おまけに少年たちにも囲まれてるし。

 まあ、それでも精一杯暴れてやるけど。


 来るか?っとおもってまっすぐ見上げてると、ゴルムスもフィーをじろりと見て、視線があった。


 それからゴルムスは胸倉をつかみあげた。二人の少年たちの。


「なんで俺がお前たちの言うこときかなきゃなんねぇんだ。ぶっとばすぞ」


 ゴルムスの強面ににらまれ、少年たちは泣きながら逃げていった。

 フィーは思わずゴルムスをきょとんと見上げてしまった。


 そんなフィーにゴルムスは、はじめて会ったときのようにへっとした笑みをみせる。


「ったく、どこでもいるもんだなぁ。小さいってだけで、ろくに相手もしらねぇで馬鹿にしてくるやつは」

「それってどこかで聞いたような話だけど……」


 馴れ馴れしい話し方で話しかけてきたゴルムスに、フィーは思わず半眼じと目で返す。


「ばっかいうな。あれは俺が強いから、馬鹿にしたんだ。小さいからじゃねえ」

「そうだね。確かにゴルムスは強いよ」


 そこは認めなければならない。

 偶然が重なってあそこまで戦えたけど、あっけなくやられてもおかしくなかった。そして運が味方し、あれだけフィーががんばっても、結局は勝てなかった。


「はっはっは、さすがのお前も認めやがったか。俺様は強いぜ。優勝したんだし、当然だ」


 ゴルムスは腕を組んで自慢げに笑い、それから彼の額にずっと張られている湿布を差しながらいった。

 そこはフィーが彼に全力の一撃を叩き込んだ場所だった。


「でも、その俺をいちばん追い詰めたのは一回戦負けのお前だぜ。ちょこまかうごいてうざったいわ、やたらとしつこいわ、おまけに卑怯だわ、最悪だったぜ」


 その言葉に、ゴルムスが自分を認めてくれていることがわかった。


「そっか、ゴルムスをいちばん追い詰められたのは僕なんだね」

「そういうこった。あんな馬鹿な奴らのいうことは気にすんな」

「うん」


 嬉しくて、えへへ、と笑みがこぼれてきた。


 ゴルムスが隣の椅子に座って、まじめな顔になっていった。


「ガキは帰れなんて言って悪かったな。お前も必死でがんばってたのに。それに根性もあったぜ」

「ううん。気にしないで。僕もゴリラなんていってごめんね」

「それは頼むから、あんまり思い出させてくれるな……」


 あらためてゴリラの件を蒸し返され、ゴルムスがまじでへこんだ顔をした。

 それを見てフィーも本当に悪かったと思い、売り言葉に買い言葉でいっただけで、あんまり似てないよっとはげましておいた。

 仮にゴリラだとしても、結構かっこいいゴリラだよ、っと心の中でいっておく。


 ゴルムスがいつもの表情にもどって、フィーに向かって握りこぶしをつくる。


「まあ、次、試合するときはあんな都合良くはいかねぇから覚悟しとけよ。今度こそ一瞬でぶっ飛ばしてやるよ」

「じゃあ僕はゴルムスをさらに戸惑わせる新しい手段をがんばってたくさん考えておくよ」

「てめぇはまず剣の修行しろ……」


 騎士道の欠片もないフィーの返事に、ゴルムスが顔を青くしてつぶやいた。


「ところで、ゴルムスって優勝したってことは、見習い騎士の中でいちばん強いの?」


 すっかりゴルムスを友達認定したフィーは、親しげにそんなことを聞いてみた。


「あったり前だろ!っと言いたいところだが、あの入団試験は細かくブロックわけされてるから、そうかはわからねぇ。優勝までいった奴はあと11人いるからな。

 まあたぶん俺がいちばん強いけどよ」

「そうかー。まだゴルムスでもTOP12かぁ。」

「おい、てめぇ!」


 あっさり最強候補から格下げされ、ゴルムスはじと目でフィーをにらみつける。


「あはは、ゴルムスも僕もこれからがんばらないとね」

「ああ、そうだな」


 フィーとゴルムスは顔をあわせ笑いあった。

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