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 フィーは朝起きて首をかしげた。

 何か夢をみていた気がする。大切な……。


 でもそれは靄もやのように曖昧で、うまく思い出せない。


「なんだったんだろう」


 そのままフィーは朝食にいって、その違和感も忘れてしまった。




 朝食の席、あらためてゴルムスにたずねる。


「ゴルムスー。遠征訓練とサバイバル戦ってなにー?」


 朝食をぱくぱくもぐもぐ食べながらそんなことを聞くと、ゴルムスが昨日のことを思い出したのか、顔をしかめながら言った。


「なんで毎回毎回、てめぇは俺に聞きやがる……」

「えー、そうかな?」

「そうなんだよ……」


 ゴルムスが苦々しい顔でそう言う。

 まあ数度ほど巻き込まれてるので仕方ないが、授業態度がよくなくて(主に居眠り)、フィーにたびたび助けられてるので、そこはお互いさまだと思っている。

 フィーは思っている。


 とりあえず、ご飯をパクパク食べながら、じーっとゴルムスを見つめる。


 そういえば女の子だとばれてからは、フィーの食事制限は解除されていた。

 女性なので、そんなに成長しないだろうということらしい。むしろ、多少の発育の悪さを心配された感すらある。

 ただし、あくまで適度に、太らないように。


 そもそも、しばらく前から、かなり曖昧になっていた気がする。

 食べても一向に大きくならないから。


「ゴルムスー」

「ゴルムス……」

「くそっ、仕方ねぇ……」


 フィーとおまけにクーイヌにまで、じーっと見つめられ、ゴルムスはため息を吐きながら、ふたつのイベントについて教えてくれた。


「遠征訓練っていうのは、文字通り、遠征任務の訓練だ。見習い騎士全員で、何班かに分かれて、いろんな場所に派遣される。訓練つっても、請け負う仕事は一人前の兵士と変わらねぇ」

「うんうん。だからその前に長期休暇を作って、家族と会えるようにしてあるんだ。そんなに危険度は高くないけど、普段の訓練ではなく、本当に実戦にでるわけだしね」


 レーミエも捕捉をしてくれた。


「なるほどぉ」

「なるほど……」


 フィーとクーイヌは揃った動作で頷く。


「それからサバイバル戦っていうのは、全宿舎参加の大規模な試合だ。つっても、今度は宿舎同士で戦うわけじゃねぇ。二人一組のグループを組んで、最後の一組になるまで戦う。戦う場所も森の中だ。かなり実戦形式に近い試合だな」

「へぇー、じゃあゴルムス組もうよ!」

「まぁ、俺は別にいいけどよ……。そいつはどうするんだ……?」


 早速フィーがゴルムスを誘うと、ゴルムスは一応了承しつつ、フィーの左隣を指さした。


 そこではクーイヌが、まさにガーンっといった顔で、フィーを見ていた。


「えっ? クーイヌ組みたかったの?」


 クーイヌがこくこくと涙目で頷く。


「それはだめだよぉ。個人戦で1位と組むのは、なんかずるいもん。優勝しても勝った気がしないというか」


 確かにクーイヌと組めば、フィーの勝算はぐーんっと上がるだろう。しかし、それはフィーの力で勝ったのではなく、クーイヌに勝たせてもらったようなものである。

 今回は、それではだめなのだ。


「自分でいうのもなんだが、俺も一応、強豪の方なんだが……俺はいいのかよ……」


 ゴルムスがじと目でフィーを見てきた。


「ゴルムスとはなんだかんだ補い合える関係だし、いいパートナーになれると思うんだよね」

「おい、拗ねてるぞ……。拗ねてる……」


 その答えを聞いてクーイヌはしょげた。

 でもフィーとしては仕方ない。事実なのだから。


 おおよそクーイヌは戦闘においては完成されすぎているのだ。

 速くてパワーもあって強い。おまけに国一番の騎士に仕込まれた技術まである。


 それでも確かにクーイヌをのけ者にしたようで悪かったかなと、心の中でちょっと罪悪感を抱いた。


 でも、フィーはパートナーを変える気はなかった。

 サバイバル戦、内容を聞いたフィーは、今までの中でもっとも自分に向いた戦いだと思った。

 だから、今度こそ本当に勝ちたいと思ったのだ……。


 それならクーイヌと、一緒はだめなのだ。

 おそらく北の宿舎で……、いや全見習い騎士たちの中で、最強の彼を倒さないと、本当に勝ったとはいえない。


 この戦い、クーイヌとは敵同士でなければならない。


「大丈夫! 僕がちゃんとクーイヌに最高のパートナーを連れてきてあげるから!」


 フィーはクーイヌを向いて、どんっと胸を叩いてみせた。

更新、遅くなってしまい申し訳ありません。

お話も中盤を過ぎて、ちょっとづつたたむ段階になってきました。いろいろと迷いながら書いてます。

3月ごろまではアルファポリス版でテスト版を投稿して、なろうで手直しをするという作業をしていたのですが、ちょっとそれを復活させてみようと思います。

話の進め方が複雑になっていくので更新のペースは落ちていくかもしれません。話のアラもいま以上にめだっていくかもしれません。でもこのお話をぼろぼろでも完結させよう。それを目指していこうと思います。

これからもよろしくお願いします。


また一週間ほど前に書籍版が発売しました。

お買い上げくださったみなさま本当にありがとうございます。

売上の方なのですが、自分で調べた結果、続刊がでるかでないかぐらいのラインをぐらぐらしている気がします。

私としましては東北対抗剣技試合まではせめて書籍化したいなぁと思っております。

お恥ずかしい話なのですが、もしよろしければお力添えをお願いします。


ただどこで終わっても、この話が書籍化できたのは本当に夢のような話です。読んでくださってるすべてのみなさんのおかげです。本当にありがとうございます。


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