表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/205

127

すいません、前話で(終)表記をしたのですが、フィーの罰なのでどちらかというと続きものの話になります。

次からはタイトル変わりますが罰ゲーム編になるので本編みたい方は次の次からとなります。長くなってしまってすいません。

 フィーは文字通りのつるし上げを食らっていた。


 食堂に設置したロープに上半身を結ばれ、そのままミノムシのように垂れ下がっている。ちなみにゼリウスに頼んで作ってもらったものだ。

 本人も一応、納得しているのかロープに大人しく垂れ下がっている。


 見習い騎士の授業中や訓練中は外されるが、基本的にそれ以外の時間はずっとつるしっぱなしだ。

 それは晩御飯の時間も同じ扱いで。


「おなかへったよー……」


 当然、夕飯の時間はお腹が減る。

 ちなみに食べないのもまずいのでみんなが食べるのを眺めさせられた、あと20分ぐらいしたら縄が外されて食事にありつけるのだが……。


「ねぇ、クーイヌー。ひとくち頂戴」


 その時間まで我慢できずに、罰を逃れたクーイヌにご飯をねだる。

 クーイヌも共犯だったが、さすがに罰ゲームと罰が重複するのは可哀想だとして見逃された。


 クーイヌもそれが分かってるのか目をそらし、フィーの声を聞こえなかったふりをする。


「むぅー……」

 

 そのままフィーはみのむしのように食堂でぶらさがっていた。




 フィーの罰はそれから4日間ぐらい続き、今日は第18騎士隊の方にいく日だ。

 当然、拘束はほどいてもらっている。


「ひさしぶりの自由だー!」


 久しぶりに自由を得たフィーは、開放感からさわやかな笑顔を浮かべ、両手を広げ第18騎士隊の倉庫に飛び込む。

 その瞬間、ロープにするっと拘束された。


「ええー!ここでもですかー!?」


 フィーが叫び声をあげるが、無言でパルウィックによりロープで天井に吊るされた。

 さすがにこの日ぐらいは逃れられると思っていたのに。


「見習い騎士たちからクロウを経由してこちらにも話が来てな。クロウからの指示でこっちでも同じ扱いにすることになった」


 クロウは倉庫にはいないらしく、パルウィックが代わりに答えた。


「何でもやりすぎはだめよぉ~」


 ソファーに座ったコンラッドが、爪の手入れをしながらフィーに軽く注意する。それにオールブルもうんうんと頷く。


 フィーがふと部屋を見回すと、気づけばもう1人誰か吊るされてる。

 それはガルージだった。 


「ちくしょーう。年寄りには辛いぜー」

「年寄りなら落ち着きぐらいもってくれ」


 パルウィックが眉をしかめながら言った。

 フィーの工作に面白がって全面的に協力したガルージも同じ罰をうけることになったのだ。どう考えてもフィーの暴走に全力で力を貸したのだから仕方ない。

 二人とも反省のためしばらく吊るされることになった。


「うぅ……」

「とほほ……」


 髭面のおっさんがロープでみのむしのように天井に吊るされてるのは異様な光景だった。


 しょんぼりと縄にぶらさがるフィーの前に、誰かの足音が聞こえてきてフィーの前に立った。

 フィーはそれがイオールの足音だと分かる。


「たいちょー!」


 顔をあげると腕を組んだイオールが立っていた。

 あ、これは説教モードだと、フィーは見ただけで分かる。


「いいか、ヒース」


 イオールは腕を組み目をつむって低い声で言った。


「本は借りたら読むものだ」


 イオールの説教はそこで終わった。いつもなら長々といろんな言葉が続くのに。

 フィーはイオールの顔を見上げて言う。


「たいちょーもしかして怒ってます?」

「怒ってない」


 たいちょーは怒っていた。




 そうしていろんなところに吊るされていたヒースだが、最終日はなぜか王宮の庭の木の下に吊るされていた。クロウからの指示らしい。


(いったいなんでだろう……)


 疑問におもいながらもうこの姿に馴れてきたフィーは、プラーンとぶらんこのようにふりこにしたり、ちょっとだけ旋回しながら時間をつぶしていると、たくさんの足音が聞こえてきた。

 誰だろう、と思っているとそこに姿をあらわしたのは10人くらいの侍女たちだった。アルシアの姿もある。


「あ、アルシア!」


 明るい声で話しかけようとしたフィーは、アルシアにぎろりとにらまれた。

 アルシアはエプロンを握りながら、こっちを睨みながら言った。


「ヒースくん。私たちを景品みたいに使って、何かのランキングで優勝しようとしたって本当……?」

「あ、え、えっと……、それは……」


 アルシアに睨まれ、フィーは口ごもった。図星というかなんというか、言い訳のしようもないほど本当のことである。

 その額から汗が流れる。


「本当だったんだ……」


 大人しいアルシアが珍しくお怒りだった。据わった目でフィーを睨み続ける。

 しかし、それ以上にお怒りだったのが、まわりの侍女たちだった。


 フィーが言い訳できずにいると、侍女たちはその周りを取り囲み。


「やっぱり本当だったのね!何が天使の笑顔よ!この女の敵!」

「そうよそうよ!少しぐらい可愛いからって調子にのって!」

「お茶会は中止よ中止!」

「ぎゃー!ごめんなさいー!」


 そのまま怒りだしたアルシアの周りの侍女たちによってフィーは袋にされた。アルシアもさすがに助けなかった。

 結局、一番フィーに重い罰を与えたのは侍女たちだった。


 その光景を木の陰から見ている男がいた。

 第18騎士隊で一番のプレイボーイ、クロウである。今回、見習い騎士たちと第18騎士隊の連絡を取り持ったのもクロウであり、アルシアたち侍女に情報を流したのもクロウである。


 クロウは侍女たちから袋にされるフィーの姿を見ながら、ふっと笑みを浮かべ、諭すようにあさっての方向に呟く。

 ちなみにフィーにはまったく聞こえてない。


「ヒース、いい男っていうのは女の子と一緒に遊びを楽しむものだ。女の子を利用して自分だけ得しようとしてはいけない。この痛みを乗り越えて、お前も真のいい男になれ」


 それはそれでどうかと思うが、クロウは後輩に正しい道を教え諭した先輩のような満足げな笑顔を浮かべながら、その場を去っていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
フィーも女の子なのに女の子たちをそんな感じで利用するのはどうかと思う() ちやほやされるとかならともかく
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ