閉店業務
夕方。早番のメンツが帰ってから、遅番の仕事が始まると言っても良い。
定時に帰るためには、いろいろと作業の順番を組み立てながら動いていく必要がある。
とりあえずやることをまとめるところから始まる。
基本的に遅番がやることは『場所空け』『補充・整理』の二つだ。さらに言えば、早番から引き継いだものとか、次の日から始まるフェアの準備とかあるが、今日はその二つは無く、いつも通りの普通の遅番業務だ。
まずは場所空け。
場所空けは、次の日の早番が楽に新刊を出せるように、新刊台にスペースを空けておく仕事だ。慣れればそこまで難しくはないのだが、いかんせんお客さんがたくさんいる時間帯だとできないので、基本的に遅い時間からのスタートとなる。だいたいお客さんが引き始める七時半くらいからのスタートで、定時の九時に帰りたいから、逆算して最低でも八時半には終わらせる必要がある。この場所空けの量が多いと、始める時間を早くしないといけないか、残業ということになる。
手順だが、まずは次の日の入荷量の確認をし、それから実際に空けなければいけない面数を出し、そして実際に空けていく。
入荷量は、パソコンで取次先のHPから確認することができるので、それを見て確認をする。
ちなみに取次先というのは、出版社と書店の間に入って中間業務をしてくれるところだ。ウチの会社では、その取次先に入荷入力(何冊入荷したかの入力。店舗によっては手打ちで自分たちでやっている)をしてもらっている。そして売れ残ってしまって、店舗として在庫を抱えてしまいそうな商品も取次先に返品する。これを返本という。
そこで入荷量の確認が終わると、それを見ながら面数のチェック。面数は、基本的に一面だが、冊数や雑誌の分厚さによっては面数が増える場合が多い。この時期は大手出版社の二社の少年コミックスの発売日と、大手ラノベ社の発売日がかぶるので、必然的に開けなければならない面数も増えてくる。そうなると、さっきも言ったように時間がかかってくる。
このチェックが終わると、いよいよ面空けに入る。
面空けは、発売日が古いものを新刊台から引いていったり、冊数が少ないものを面ではなく差しへ回したり、また在庫が少ない大型タイトルの面数を削ったりして、面を空けていく。
一見簡単そうに見えるこの作業なのだが、『発売日を把握している』という条件がついて初めて『簡単』といえる。ほとんどのスタッフが発売日を把握していないので、確実に『これが発売日が古いやつです!』と断言できないのである。なので、いちいちレーベルごとにパソコンで発売日を調べて引き抜いていくことになる。
そして新刊台に見事残った商品をパズルのように並べ替え、空いた面を早番に出してもらいたい場所ごとに固める。
まぁそんなこんなで面を空けることができました、と。
ここで終わりではなく、今度は発売日が古くて抜いてきたタイトルを棚のほうに移動させる作業が待っている。
返本をするにはある程度の期間を開けなければならなくて、これも店舗によって異なるのだが、ウチは一か月経ったら返本をすることに決めている。
基本的に新刊台は入れ替わりが激しいので、必然的に返本できないタイトルばかりを棚へと回さなくてはならない。
それなりに残っている商品は、棚で面を作って展開させるのだが、これもちょっと大変で、棚で面にしているが、売れてない商品と入れ替えで面を作る必要がある。しかし、この時に引いていい面の商品にも、『売れてないから残っている商品』と『再入荷したばかりで残っている商品』と『フェア中だから残している商品』がある。こればかりは記憶力と経験がものをいうのだが、そのへんが足りない子にはまだ難しいらしく、最初のうちこそ指示して『これとあれとそれは引いていいやつ』というように言わなければならない。早く慣れてくれることを常に祈っているが、現実は難しい。
と、新刊台の面も空け終わり、引いた商品も棚に並べ終わった。
これで終わりでも良いのだが、新刊台の下に引き出しがあって、そこに新刊台の商品のストックが入っている。ここの中の整理もしておくと、次の日が格段楽になる。特に大量入荷の日だとなおさらだ。
引き抜いた商品のストック分が残っていないか。先ほど移動させた新刊のストックが移動させた先の近くにあるか。また新刊のストックは足りているか。明日の新刊のストックを入れておくスペースはあるか。こんなことを踏まえながら整理をしていく。
ここまでやって、やっと完璧に終わりである。
そして次は補充と整理。
これはもう簡単で、棚に並んでいる商品がキチンと綺麗に並んでいて、棚の下の引き出しの中にも若干のストックが入っているので、棚に抜け巻があって、ストックの中にその抜け巻があればそこから出す。これだけだ。
ただ雑誌に関しては、棚に満タンで並んでいても巻いてあるストックが少なすぎると、次の日の忙しい時間帯に巻いている分が無くなってしまうことがあるので、巻いておかなければならないものは束を崩して巻いておく。
新刊台も補充をするのだが、それは場所空けをやりながら補充するのが一番効率的だ。
とはいえ補充に関しては、今うちの店舗は『棚のストックを減らそう』というのを心がけており、『棚に並んでいないものを発注、そして入荷次第出す。そして売れるものは面にする』というの徹底している。なのでストックを開けても、新刊台から引いてきた商品の残りが入っているだけ、というのがほとんどだ。だから棚の補充に関しては、走り抜けながら見ても問題はない。ただ、棚に刺さっている本が崩れている列がある場合は、きちんと整理をする必要がある。
と、主に場所空けが大変だが、遅番は比較的楽である。
早番は時間に追われながら、お客さんが来るまでに全商品を出さなければならない。そして出し終わっても、そこから一日の業務がスタートする。遅番が来たころに機嫌が悪かったら、たいていが朝にやられていたという証拠である。遅番は大きな心で見てあげる必要がある。
それに比べて遅番は、早番からの引き継ぎが無い限りは、場所明けと補充だけをやっていればいいので、業務量的には楽だ。だから遅番の時間帯には、コーナーの作成をしたり、今の時期だとアニメの新番組の商品の確保に回ったり、そこのコーナーの手直しや場所入れ替えなんかをすることが多い。早番の時間帯でできなかったことを遅番がやる、という感じだ。
まぁ慣れれば遅番のほうが楽だ。ただし、時間の経過は遅い。
上がるまでの時間が長く感じるから困ったものだ。
そんなこんなで、遅番の説明を終わります。
おつかれさまでした。




