表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャガイモ農家の村娘、剣神と謳われるまで。  作者: 有郷 葉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/212

129 守護神獣の先輩

 転生者達との晩餐会は続いていた。

 姫様達をこう表現したのには理由がある。この場でリズテレス姫が明かしたからだ。自分達の魂は異なる世界から来たのだと。

 セファリスとキルテナはポカンとした顔で話を聞いていた。


 そうなるよね。

 何度も聞かされている私でさえ、今だにスマホとかアプリとかよく分からないもん。

 あ、私の誕生日プレゼント、もしかしてスマホというやつでは? いや、アプリの可能性も。


『マスター、私達の食卓にアプリコットが出現したのですが』


 すみません、〈トレミナゲイン〉さん。気にしないでください。


 突拍子のない話で固まった空気を和ませるように、ユウタロウさんが小さく笑った。


「あまり深く考えなくていいよ。僕達も別の世界の記憶があるっていうだけで、今は君達と全く変わらないから。一緒という点では、キルテナさんと僕は本当によく似ているね。僕も十歳で修羅の森を渡ったから」

「え、ユウタロウ、さんも……?」

「うん。ああ、トレミナさん達は知らないよね。世界樹周辺の神獣は十年に一度、一斉に子育てをするんだ。その年から十年間、世界樹の周りでは子供達だけでの生存競争が繰り広げられる。基本的に大人の神獣は手出しできないから、保護期間なんて呼ばれているね。その保護期間が明けると、子供達は通常、修羅の森でこっそり息をひそめて生活する。動き回ればそれだけ捕食される危険に晒されるから。まして、森を越えてこちらに来るなんて考えられないことなんだよ」


 彼の話をトレミナ熊さんは興味深げに聞いている。

 どうしたんですか?


『俺達野良神は内地生まれの奴と接することが滅多にない。情報としては、まだ人間の方が詳しいくらいだ。……俺は、いつか世界樹に行ってみたかった』


 そんな夢が……。


 現実世界ではユウタロウさんの話がまだ続いていた。


「僕には種族特性があったからどうにかなったけど、キルテナさん、よく【世界樹大竜】で森を抜けてこられたね。その年齢でもう上位進化しちゃうし、君は本当にすごいよ」

「そうかなー、そうかなー? なはははは!」

「そうだよ。キルテナさんのような子がコーネルキアの守護神獣になってくれて、僕もとても嬉しいんだ」

「マジか。私、守護神獣として頑張るぞ! よろしくな先輩!」


 よかったね、キルテナ。他ならぬ創国の守護神獣様にそこまで言ってもらえて。

 とユウタロウさんはリズテレス姫に視線を向ける。

 これに彼女は頷いて返した。

 ああ、なるほど。

 キルテナの心の内を知っていた姫様がユウタロウさんにお願いしたのか。相変わらず抜け目ないし何だか腹黒いけど、やっぱり優しいところがあるね。


 せっかくだから私も知りたいこと、ユウタロウさんに聞いちゃおうかな。


「ユウタロウさんの種族特性って何なんですか?」


 すると、ユラーナ姫が「脚力よ」と。

 お喋り好きの彼女はそろそろ我慢できなくなってきたらしい。


「ユウタロウは一刻も早くキオ(享護)に会いたいがために〈脚力強化〉に極振りして、修羅の森を突っ切ってきたのよ。キオもこの世界にいる保証なんてなかったのによくやるわ。元飼い主が一途なら、元ペットも一途よね」

「そのおかげでコーネルキアができたんだからいいじゃない」

「まあね、感謝してるわよ。前世でヒマワリの種をいっぱいあげておいてよかったわ」


 ヒマワリの種の見返りが王族としての人生なら、もらいすぎな気がしますが。

 ユウタロウさんは本当に温和だ。見た目にも優しいお兄さんで……、そうだ、もう一つ尋ねたいことがあった。


「人型の容姿や年齢ってどうやって決まるんですか?」

「外見は本人(神)の好みによるところが大きいね。年齢もそうだけど、こっちは結構精神年齢に依存するかな」


 精神年齢か。道理で進化したキルテナの人型が変わってないわけだ。

 あれ? 出会った頃よりちょっとだけ成長してるかな?

 ドラゴン少女を見つめていると、リズテレス姫がクスッと笑った。


「たぶんキルテナさんの成長速度はトレミナさんと同調しているわ。同じように大きくなっていくと思うわよ。人型といえば明日のことなんだけど、トレミナさん、お願いしていいのね?」

「はい、大丈夫です」

「あなたの精神通話のおかげで儀式はスムーズに進みそうだわ」


 そう、明日兎神の一団が到着したら、そのまま六十五頭まとめて人型を作る儀式に臨む。

 私はそこで添乗員を務めることになったよ。



 翌日――。

 私は王都コーネフィタルの外れで一人佇んでいた。

 やがて草原の向こう側に黒い毛玉の集団が現れる。

 主張するように少しマナを強めると、もふもふ達はまっすぐこちらへ。


『皆さん、お待ちしていました。本日は私が案内役を務めさせていただきます』

『それは心強いな。よろしく頼む、トレミナ』


 ルシェリスさんがぐぐーっと頭を寄せてくる。

 と、私の中でトレミナ熊さんが毛を逆立てた。


『我が因縁の宿敵! とその弟子共! 望むところだ! まとめて相手してやろう!』


 今のサイズじゃ無理ですって。

 あなたは体長五十センチ、あちらは小さくても体長五メートルですよ。

 ちなみに、当然ながらトレミナ熊さんの声は兎神達には聞こえてない。

 ややこしくなるので、ちょっと大人しくしていてください。


『ややこしくとはどういうことだ!』

『こういうことですよ。さ、子熊さん、行きましょう』

『私達が相手してあげますから、子熊さん』

『子熊子熊言うな!』


 小さな熊神のボスは〈トレミナボール〉さんと〈トレミナゲイン〉さんに連行されていった。


 私はルシェリスさんに向き直る。


『すみません、たてこんじゃって。では行きましょうか』

『……ん? 何かあったのか?』


 ルシェリスさんの背中に乗せてもらった私は、そこから精神通話で一行を誘導する。皆さん、きちんと心を開いてくださいね。

 王都の大通りを、六十五頭の兎神が大行進。


『右手をご覧ください。あちらの高台に見えますのが、このコーネルキアの王城です。皆さん、ご入城の際には必ず人型でお願いします。そのままですと、色々壊れますので』

『トレミナ、素晴らしい観光ガイドだが……、町に人が全く見当たらないぞ。人型を作るための条件は話しただろう?』


 心配そうにルシェリスさんは周囲をきょろきょろ。


『大丈夫ですよ、準備は整っていますから。マナで感知してみてください。この町の広場です』

『こ! これはっ!』


 王都の中心部にある広場は相当広々とした造りになっている。

 きっといつかこういう日が来ることを想定、いや、願ってだと思う。

 程なく私達は広場に辿り着いた。

 そこに集まっていたのは、何万人という王都の住民達。


 彼らを生贄に人型を……。なんて、恐ろしい話じゃないよ。

 必要なのは、皆の体の情報だ。

むしろ生贄になるのは兎達です。

もふもふゆえに。


400万PVになりそうです。沢山のご来訪、本当に感謝です。

評価、ブックマーク、いいね、感想、誤字報告、本当に有難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。





書籍化しました。なろう版へはこちらから。
↓をクリックで入れます。




陰キャ令嬢が沼の魔女に。

社交界で沼の魔女と呼ばれていた貴族令嬢、魔法留学して実際に沼の魔女になる。~私が帰国しないと王国が滅ぶそうです~








強化人間になってしまった聖女のお話です。
↓をクリックで入れます。




腕力で世界を救います。

強化聖女~あの聖女の魔力には武神が宿っている~








こちらも連載中の小説です。書籍化します。
↓をクリックで入れます。




事故で戦場に転送されたメイドが終末戦争に臨みます。

MAIDes/メイデス ~メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で最弱クラスのまま人類最強に。~




書籍 コミック


3hbl4jtqk1radwerd2o1iv1930e9_1c49_dw_kf_cj5r.jpg

hdn2dc7agmoaltl6jtxqjvgo5bba_f_dw_kf_blov.jpg

1x9l7pylfp8abnr676xnsfwlsw0_4y2_dw_kf_a08x.jpg

9gvqm8mmf2o1a9jkfvge621c81ug_26y_dw_jr_aen2.jpg

m7nn92h5f8ebi052oe6mh034sb_yvi_dw_jr_8o7n.jpg


↓をクリックでコミック試し読みページへ。


go8xdshiij1ma0s9l67s9qfxdyan_e5q_dw_dw_8i5g.jpg



以下、ジャガ剣関連の小説です。

コルルカが主人公です。
↓をクリックで入れます。




コルルカの奮闘を描いた物語。

身長141センチで成長が止まった私、騎士として生きるために防御特化型になってみた。




トレミナのお母さんが主人公です。
↓をクリックで入れます。




トレミナのルーツを描いた物語。

婚約破棄された没落貴族の私が、元婚約者にざまぁみろと言って、王国滅亡の危機を逃れ、ごくありふれた幸せを手に入れるまで。



― 新着の感想 ―
[一言] 65羽の大きなもふもふ行列… 飛び込みたい…
[良い点] たびたび思う、モフモフいいな〜(笑)
[一言] キルテナちゃんの成長速度がトレミナちゃんと同調してるということは、トレミナちゃんがどんぐりのままだったら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ