63話 次元繋ぎ
「わかったよ、つまるとこ皆、自立できる状態なんだよって言いたいんでしょ」
「おう、わかってんな」
「なら、安心して行ける」
オールがしっかりとした眼差しで告げる。
「僕達は主人のために尽力します。なのでやらせて下さい」
「ヴァン」
「最後の仕事は主の精霊らしくってやつだな」
「フルール」
「ワンマンステージで歌って踊る感じだよね!」
「めっちゃサイリウム振るわ」
「ふふふ、ありがと!」
フーちゃんのワンマンステージとか、満席御礼すぎてチケットとれないよね。
「本当変わらねえなあ」
「ルル」
「しみったれたのより、マシだけどな」
「ルル……私の胸で泣いてもいいのよ?」
すっと両手を広げると、驚いて瞳をパチパチして、次に笑った。
私は面白いことを言ったつもりはない、常に本気ですが。
「はは、遠慮しとくわ。お前の旦那にぼこられる」
「ぼこ? ん?」
サリュを見ても通常運行塩対応のごとく平坦な顔をしていた。
こちらは見てこなかったけど。
「主人」
「なに」
「メゾンさんから手紙を預かってます」
「メゾンたら、可愛いことして」
ここに来られないから仕方ないけど。
中身? 勿論秘密に決まってる。
何度も読んでにやにやしよう。
「三回読んだら消えます」
「ひどいトラップ!」
「主のことだから、後生大事にとっておきそうだし、使い捨てにしたよ、とのことです」
「分かってらっしゃる……」
どこまでも私のことを分かってるんだから。
逆に笑えてくる。
「俺達はいつでも会えるからな。夫婦喧嘩したら、いつでも来ればいい。匿ってやる」
「え?」
「いいね、そうする」
「エクラ、それは」
「新婚旅行の泊まり先ってのが先じゃない?」
「それもそうか」
「え、いや、先程から皆さん、どうして」
サリュがやたら慌てている。
なんだろと思って、視線を上げると、何も言ってないのに、何故私とサリュがそうなったのかきいてきた。
シュリと話してた時から、やたらあわあわしてたけど、そういうことなの。
てか、そんな気にすること?
フーちゃんが、ふふふーんと可愛く笑って、サリュを揶揄う。
「えー? だって主のこと好きなのバレバレだったじゃーん」
「ずっと側付譲らなかったしなあ」
「俺達には親切な割に、こいつには手厳しかったし」
「いつも張り付いて追いかけていたとメゾンから聴いた」
「それで出て行ったサリュークレさんを主人が追いかけていき、今ここで二人並んでいるなら、所謂二人は結ばれたということなのでは?」
「ヴァン、名推理!」
「ば、ばればれ……」
驚愕に打ち震えているサリュに皆大笑いだ。
まあ私もサリュが私のこと好きだとは分からなかったから、ここばかりはなんともコメントできないね。
「じゃあ、一旦離れるけど、いずれはまたってことで」
皆各々に頷いて言葉を返してくれる。
大丈夫、これは一時的な別れだ。
多少の時間がかかろうが、行き着く所は皆同じ。だから、大丈夫。
「やろう」
城の外に出た。
シュリとトレゾールは見える場所、大地の境目に。
内周ギリギリの境目に城を置いたのは、さすがというべきかな。
おかげでシュリとトレゾールが良く見える。
「またね」
他の子達はそれぞれの拠点へ転移で飛ばした。
あいてる外周拠点は探索すれば、すぐに分かったあたり、聖女たちの準備のよさが半端ない。
結界が残っていても、ここまでわかる。転移のやりやすさに逆に驚いたよ。大聖女ったら。
「よし」
そして今、ここにいるのは私とサリュだけ。
「では、ここで作戦名を発表します!」
「結構です」
「なんで! 数話かけて引っ張ったのに!」
「どうせ仕様のない名にしたのでしょう。それはもういいので、さっさとやりましょう」
「ひどい……塩対応が通常運行すぎるよ……」
溜息吐かれた。
打ちひしがれた風を装っても駄目らしい。
私はもう、うぇーいなノリで物事を進められないのか……いや、ここは新婚さん、是非私に合わせて、うぇーいと言わせる日を持ってこよう。
何事も訓練、修行だ。サリュだって少しは真面目を脱するはず。
「よろしいですか?」
「うん、いいよ」
今回はサリュに合わせて、きちんと真面目をしよう。
私が次元を繋いで、サリュが時間を戻す。
学んだことがないのに、どうやればいいか分かるのは、御先祖様達のおかげなのか。
それとも元々組み込まれ仕掛けられた魔法だからなのか。
ごく自然と使える特別な魔法。
光る足元、舞う風。
西から東に一本線が結ばれる。
「不思議なものだね」
見上げた空が、真っ二つに割れていく。
あれは私が必死になって皆を抱えて逃げ及んだ跡。
空間の割れ目が広がり、空の向こうが見えてくる。
鏡移しのように見える、もう一つの世界。
「確かに不思議な気持ちになります。表現し難い」
足元を金に輝かせて、サリュが空を見上げる。
逆行の魔法で、鏡移しの世界が巻き戻っていく。
同時、地響きと共に浮き上がる大地。
浮き上がった大陸は聖女と精霊の力で出来た結界に包まれてあがっていった。
そこにシュリとトレゾールがいる。
お互いに笑う。
そのまま次元の裂け目に吸い込まれていった。
「そうだね」
「エクラ?」
叶うなら、同じ事を繰り返さず、彼らが生きていけることを祈る。
あちらの世界で超えていけることを。
「うん、大丈夫」
「……はい」
さて、次シュリとトレゾールと会う時は、飛び切りのいい女になるとしよう。
今度はこっちがサプライズをかます番だ、今に見てろ。
たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。




