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60話 敢えて語らない戦法

「出来るのですか」


 そんなことが、と声を震わせる。


「サリュ、誰も犠牲になる必要はないんだよ」


 見方によっては次元繋ぎの聖女達が犠牲と言われるかもしれない。

 けど、生きている。そして了承している。

 その差は大きい。

 私にとって、この生存と了承は犠牲にはならない。

 なぜなら開き続けた次元の狭間から、劣化版転移の力を持つあちら側の聖女達は、いつでも戻れることが成立する。

 聖女自身があちらとこちらを繋いでいる、つまりもう皆ギフトです、的な。


「大聖女も次元繋ぎの聖女たちも皆、犠牲にはならない」


 戻れないからギフトではないというのなら、皆が戻れるための準備を私がすればいいだけのこと。

 聖女たちの新しい選択が来るときまで、私はこの次元を開きつづける。

 聖女たちが、自分が繋いだ道を戻るだけでいいって具合にしておけば、劣化版転移の魔法で戻れるはずだ。

 閉じることは決してするもんか。

 サリュが一人でやれば、サリュの死という犠牲だけで成り立つ魔法が、方々にお願いするだけで全員生きる結果がくる。


 「あ、犠牲ないとは言っても、次元繋ぎにサリュはいれてあげないから」

「それは」


 さっき生き返った折に、私の側にいることを頷かせた。


「私の側にいるって頷いたでしょ」

「それは、そうですが」

「手放してあげないんだから」


 小さく唸った。

 そして同時に、そこまで、と僅かに囁いて見下ろしている。


「エクラ」

「サリュの名前ってさ、鍵だけじゃないでしょ?」

「はい?」

「サリューは救済って意味でしょ。だから、サリュは全てを救うヒーローになるんだよ」

「そんな」

「格好いいでしょ?」


 言葉に詰まらせた。

 そうだ、わざわざ救済と言う言葉が入ったのは何故か。

 私達聖女を救済する唯一の鍵、それが通常の見方なのだろうけど、もうここは王道勇者の世界を救うという意味合いでいいと思う。

 勇者の世界救済という意味でとるなら、やっぱりサリュはこっちに立っていないとね。

 そう認識すれば、その現実がやってくる。

 そうでしょ、おばあちゃん。

 と大聖女に笑うと、満足そうに頷いた。

 

「では私は今度こそ行くとするか」


 春を冠する大聖女の背中から大きな翼が現れた。

 うっわ、本物!

 山の向こうの隣国、鍵の一族は翼を持つ一族だった。

 その中でも、長寿の種、龍の翼を持つ占術士が、目の前にいる。


「リアルで見られる日がくるとは……」

「どうだ? かつてのギフトも、これを見て喚いていたが」

「シリアスじゃなかったら、飛びついて頬ずりしたいです」

「エクラ、止めなさい」


 サリュに窘められてしょんぼりだよ。

 せめて別れのシーンが、少しでもまったりすればと思っていたのに。

 そんな私のことなど見向きもせず、サリュが懐かしそうに目を細めて大聖女に問うた。


「パラディーゾの元へ行くのですか」

「ああ、死んでも待っているんだ。中々しつこいだろう?」


 と言って笑う大聖女は嬉しそうだった。

 あ、やっばい。

 笑顔で飛び立つ、この様よ。間近に感じる風圧に速さ。

 もう一度戻ってきて、やってほしいぐらい熱いシーンじゃない。

 てか、翼持ちとか反則だと思う。癒し要素しかない。

 しかも大広間前のこの場所は、大きなバルコニーがあって、そこから飛び立っていくわけで、もうやばい。

 熱い、これは熱いぞ。視覚的に。


「相変わらず派手だねえ」


 見上げ、やれやれといった具合に肩をすくめるおばあちゃん。


「エスターテのおばあちゃんはどうするんですか?」

「私もリラと同じでとうに寿命を迎えているはずだったからね。かつての場所で今度こそ全うするよ」

「看取りますか?」

「結構、御免だね」


 ここと決めた場所があるらしい。

 なので好きに行ってもらうことにした。

 死に際を見せないという所も、大聖女ってネームバリューぽくていいよねということで。


「お前は頭が足りないが」


 相変わらず、前置きがひどいなと思う。


「ずっとお前の選択について、表の思考に出さなかったね」


 何故だい、と珍しくおばあちゃんがきいてきた。 

 みえてるはずだけど、みえてないの?

 まあいいか、応えておこう。


「そんなの簡単です」


 笑う。


「初めからネタバレしてたら、つまらないでしょ?」


 そういう表現の仕方もあるけどね。ミステリーとかでみるやつ。

 犯人はこいつ、さあ探偵がどう詰めていくか的なやり方。

 でも私はそれをとらない。

 だって選択肢は変わるものだから。

 敢えて語らない戦法の勝利だぜ。


「なるほど、お前らしい」


 最後まで面白そうに笑いながら、おばあちゃんは去っていった。

 こんなことなら、御先祖様ときちんと話してればよかったのに。

 最初のギフトとこの未来の話をしていたら、きっと御先祖様は最善を叩きだして走り出してた。

 もしかしたら、私の選択じゃない、全員抱えて救っちゃうような英雄伝が生まれていたかもしれないのに。

 あ、その世界線あったら、今度こそ御先祖様と当事者同士のオーディオコメンテータリーしたい。

たくさんの小説の中からお読みいただきありがとうございます。

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