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42話 髪の触り心地で誰だか当てるゲーム

 さてさて、今日は障子に背を向けて壁を相手に事務仕事をしている。

 戸を開けて庭が見える状態でいると、サボり癖が出るからと、この状態にされた。

 仕事をためなければ、こういうことにはならなかったんだけど、ためてしまうと真面目な側付はこういう手段に出てくるようになった。

 前、私が忍者になって逃げ回ったせいだ。反省はしている、後悔はしてないけどね!


「あ」


 背後で聞こえた声はフーちゃんだね。一緒にひそひそと話してるのは、フォンちゃんとヴァンか。

 可愛いどころが揃って、背後で何かの作戦会議ってね。

 あーもー振り向いて見たいけど、ここは我慢だ。それ以上がくるから。


「エキュ」


 しーって諌める声と共に、何かが背中にのしかかる。

 可愛い重み。右肩に頑張って乗せる頭。

 うっかり出ちゃう声。

 もう可愛いな、バレバレだよ。

 

「フォンちゃんだね~」


 右手を右肩側にある頭を撫でてあげると満足そうに笑って離れる。

 次とばかりに新しい頭が右肩に乗ってくる。


「フーちゃーん」

「ふふ、当たり」


 さらに続く。


「ヴァーンー」


 くすくす笑って、ぱたぱた足音を立てて去っていく。

 仕事中だから、これで終わりだけど、本当うちの子たち可愛いすぎない?

 髪の触り心地で誰だか当てるゲーム開催。

 こうなると、口コミで伝わって大体全員くる流れよ。

 最高、ここが理想郷だったんじゃない?

 御先祖様、どうぞこちらにお越しください。


「いいねえ、活力だわあ」


 一人、ニマニマする。

 誰も見てないし、幸せに顔をゆるめてもいいよね。

 そうしてしばらく、通りがけなのかわざわざ寄ってくれたかはともかく、少しずつ絶妙なタイミングでやってくる。

 この前の水まきでも同じだけど、見た目年齢に左右されず、お遊びは全員全力参加と決まっている。


「ふふ、フルールだね」


 皆触り心地のいいキューティクルな髪をもってるけど、それぞれで全然違うから楽しくて仕方がない。

 まあ触り心地で全員分かってしまうあたり、私も極めてきたかな。

 ついでにいうなら、同じシャンプー使ってるのに、どうして皆それぞれで違ういい匂いがするんだろう。

 匂いだけでも分かるな、さすが私。いい具合に極めてきてる。


「はい、シュリー」

「もうちょっと撫でて」

「はいはーい」


 誰だか当たりになれば、声発してオッケーにしてる。

 シュリみたく言葉で示してくれる子もいれば、もっと撫でてとばかりに肩に頭を埋めたままだったりする子もいて、内心癒しと尊さに悶絶する。

 正直視線を追って見れば頭だけ視界に入ってすぐわかるけど、敢えて見ないで楽しむのを推奨。

 あと何人くるかなあなんて考えてたら、静かに障子の戸が閉まる音がした。

 ん? 閉まる?


「……」


 まあいいかと思いつつ、肩にかかる重みに変わらず右手を上げて撫でてあげる。


「ん?」


 この髪質、いやとてもさらっさらの潤いある良質なものを感じるんだけど触れた事がない。

 指を通る滑らかさ、そしてこの長さ。

 いや、ん? まさか?

 ちらりと視界に入れてしまった。

 その髪色を見て、思わず肩が鳴った。


「サ、」

「黙って」


 到底やってこなさそうな筆頭が今、私の肩口に埋めている。

 嘘でしょ、ここでデレくる?

 御先祖様、肩ズンきましてよ。


「サリュ」


 相変わらずのいい匂い。

 この匂いも良く知っている。

 散々くっつかれた時に嗅いだからね!

 というか、ここ最近結構な頻度でくっつかれてることに気付いた。

 そここそ問題視するべき? いやデレは貴重だしな。

 そんなことを考えていると、ぐいっと額を肩口に押し付けてくる。

 ねだっているデレ行動の尊さに癒されつつも、次にぶっこまれたデレに内心悶絶した。


「もう少し、このままで」

「……」


 掠れる囁きそのまま。

 一瞬触れる手を止めたけど、このままでと言うなら、存分に堪能しようとその髪に指を通した。

 レアだ、レアものの髪に触れている。

 これは貴重だ。


「ふふふ」

「……」


 黙ってとは言われたものの、込み上げる笑いを抑えられない。

 いやもう可愛いくない?

 皆やってるなら自分もってやつなんだろうけど、きっと恥ずかしくてどうしたらいいかってのがたぶん今ここ。

 デレは無限大ですね、御先祖様。ガチで触り心地良くて幸せですよ。


「ふふふ」


 こんなふうにずっと笑ってると、大概このツンデレは塩対応な一言を投げてくるけど、今日それは一切ない。

 ただずっと頭撫でていることを許しているし、それを求めている。

 可愛い事この上ない。

 ついに塩対応から卒業し、常時デレ稼働でいく日がくるのだろうか。

 大変おいしいので、よしだ、どんとこい。


「おや」


 しばらくすると、ゆっくり肩から離れていった。

 息が浅く吐かれるのを感じて、そちらを見ようかと思ったけど、さすがに皆にはそれやってないしな。と、逡巡してたら視界を塞がれた。

 サリュの片手が私の両目を隠している。

 え? だーれだ的なやつなの?

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。


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