表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/64

34話 風呂ドン? 違う、ラッキースケベだ

「え」

「あ」


 そうだった、ここ足場ゆるいんだった。

 さっき転んだ癖にもう忘れてるよ、私。

 これは日々、ヴァンやサリュに窘められても仕方ないよね、本当やだ、今日はどういう日なの。

 そう、皆さんもうお分かりかと思いますが!

 案の定お互い引きあったところに、一緒に足を滑らせた。

 この短時間に二度もお風呂ダイブをかます私、実はお風呂と相当なご縁があるのかもしれない。


「あるじ」


 死ぬわけじゃないけど、落ちる瞬間がスローになったような気がした。

 その落ちていく最中、サリュが私の手を引いた。

 あ、この真面目はここにきて庇おうとしているな。

 でも待ってここで引くって事は、つまり。


「うえ」


 二人分なので飛沫も二倍。ここは遊園地のアトラクションか何かかな。

 最後のダイブで記念撮影もしています的な。

 そんなことよりも、また鼻に入ったよ。もうやだ、どうにかして。


「主、無事です、か」

「サリュこそ……え」


 いやいやいやいやちょっと。

 本日二度目のいやいやちょっとですよ、御先祖様。

 だって、ねえ?

 転んだ拍子に体勢がひどいことになった。

 私がサリュを押し倒して、その上に乗っている。

 しかも転んだものだから密着してるわけで。


「ひい!」


 私と彼の間にお情け程度にタオルが挟まれているけど、もう全然意味ない。全くない。

 滅茶苦茶いい身体してんじゃん何気筋肉あるし、ってそうじゃない!

 そうじゃないよ、私!

 ちょっとちょっと、これなに?

 どういう状況?

 床ドン? いや、この場合お風呂ドン?

 語感的には風呂ドンだな、違うそうじゃない。

 これ、御先祖様が言ってた。思い出したよ。

 ラッキースケベだ、間違いない。


「あ、の……」

「!」


 遠慮がちに降りてくるサリュの声に我に返った。

 ざばっと勢いよく立ち上がる。

 まともにサリュを見る事も出来ず、深々頭を下げた。


「大変申し訳御座いません! ごゆっくりどうぞー!!」


 そのままダッシュだ。たぶん私史上最速をたたき出したと思う。

 転ばなかったのが本当ラッキー。

 ダッシュで脱衣所に入り込んで、すぐさま戸を閉めた。

 幸いサリュが怒りで追いかけてくる気配はなかった。

 きっと驚きが勝っているな。

 盛大なお説教と言う名の断罪を受ける前に私室に避難しないと。


「いやもう本当やばい」


 言葉の通りだ。やばいぞ、これは明らかにやばい。

 ゆっくり着替えるなんて出来ないから、ほぼ濡れたまま服を来て、これまた全速力で部屋に戻った。

 脳内の大騒ぎぶりと反比例して室内はとても静か。

 畳にぱたぱた水が滴る音が響く。

 ええい、水も滴るはイケメンがやるからいいんじゃないか。

 いやいやそれよりもだ。


「セ、セクハラで訴えられる……」


 明らかに私に過失ありだろう。

 男湯に故意に入ってる時点でアウトだ。

 え、そしたら私明日吊し上げられる?

 いやもう大聖女まで話通って弾劾裁判とか起きる?

 男湯に入ってセクハラかました罪で?

 それよりも、折角ここまで築いたサリュとの関係がセクハラ行為一つによって崩壊?

 こんな形でお別れを申し込まれる?

 それは嫌だ。

 別れるならもっと感動とかシリアスさとか愛とかそういうのがある方がいい。

 いや違う、問題はそこじゃない。

 落ち着け私、落ち着かないと。

 というか、セクハラ通り越して強制わいせつ罪とかそういうのなんじゃない?

 断罪不可避やん。


「ど、どうしよう……」


 そもそもだ。

 サリュは師匠の元で、師匠の恋人金の精霊パラの代替で偽の恋人役をしていたはず。

 となると、彼にとって恋愛的な触れ合いとかはアウトかつトラウマと思われる。

 つまり、異性に触れられる事自体が駄目なはずなわけで。


「あれ、でも前の蔵での事は平気そうだったな?」


 むむ、そこを言及してる場合じゃないか?

 てか順番的に色々飛び越えたね?

 蔵で密着してたのが可愛いく思えるレベルの事が今日起きたよ?


「いやいやいや待って私きちんと考えて」


 落ち着かせる為にびっしょりになった服を脱いで、身体拭いて着替える事にした。

 いくら季節的に問題ない丁度良い気温でも、このままは身体によくない。

 それに作業をすれば少しは落ち着くだろうと思った、のだけど。


「ぐぐぐ思い出してしまう」


 脳内リプレイは駄目だ、今すぐ消去しないと駄目だろう。

 ラッキースケベっていうのは、そもそもあんなにあり得ない体勢になるものでも……いやありだな。

 そもそも、あれは途中サリュが私を庇おうと引き寄せたのが、あの体勢になるきっかけであって、あれ、そしたら私の故意は過失になり得る?

 でももう男湯に故意に入った時点でアウト?


「うん、アウトだな」


 ラッキースケベをかましたけれども、それで許される世界観じゃない。

 そう何度も起こる世界観でもない。

 けど、この一回がすごくアウトな気がしてならない。

 かといって、何もない風を装える?

 だめだ、どう考えても詰んでる。


「だめだ、詰んだ……」


 思考の堂々巡りが始まったら、もう結果はお分かりの事だろう。

 眠れない夜を過ごした私に試練の朝がやって来る。

 いや、自業自得かもしれないけど。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ