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兄弟が行く 〜異世界へ幼馴染を救い出せ〜  作者: 喜郎サ
最終章 ランカー島編 後編
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第六十八話 兄弟は連れて帰る


帰るか、帰らないか。それが問題だ。自分達は何のためにここまで来たのか。それは目標のようなものであり、夢を叶えた時に感じる消失感にのも似ていた。幼馴染は愛する親元に返されて初めて救われる。そう信じていた。


けれど傍に立ってまぁちゃんの手を握る男の子の姿を見ればそれだけではない事を思い知らされる事になるのであった。自分達兄弟が様々な人々と出会い。絆を深めて来たように彼女も大事な人を見つけたようだ。


きっと恐ろしい目に遭い、哀しみ苦しんでいると思い込んでいた。不幸で可哀相なまぁちゃん像を心の中で作り上げ正義感を膨らませていた。それは勇気を振り絞った時のモチベーションを維持するのに役に立ったのだろうが、彼女が辛うじて無事であるという根拠のない思い込みは破壊神による記憶の介入なのだろう。


そう思えるほどに最大の山場を越えたのだ。大好きなまぁちゃんとの再会はそれほどまでに兄弟を安堵させ、同時に次の目標設定をせがんできた。


「その姿は何だ?混じっているではないか」


シュルパナカーは兄弟の纏う鎧と二つが調和したその顔を見て神の仕業である事を瞬時に理解した。けれどまぁちゃんにとっては彼らがどんな思いでここまで来たのか知る由もないだろう。変わった誰かがまた来た。魔人に獣人と人間ではない異界の住人に数多く触れて来た彼女にとってこの再会は恐怖にも感動にも振り切らず静観のみがそこにあった。


「そんな事は問題じゃない。シュルパナカー。お前は不可解な行動が多すぎる。まぁちゃんは今ここで返してもらうが、お前まさか…」


協力してくれるのか。そう言おうとした。何故なら最初を除いて幾度も彼女と闘って来たがそのバトルスタイルは常にこちらとのパワーバランスを計算した上での攻防に思える。インドラジットのようにただの敵ではない。何処かで見切りを付けようとしていると考えた。


「何を考えているのか知らないが、連れて行くのなら止めはしない。しかし一つだけ。どうやって帰るつもりだ?」


その通りであった。世界を渡る技術は魔人達のものだ。神はわざわざそんな回りくどい方法などやりはしない。別の世界から気に入った誰かを連れきたいのなら思い切って殺し、魂だけを自分の懐に収めてしまうのが手っ取り早い。


誰が好き好んで次元の裂け目という危険な状態を安全に制御して、維持し続けるシステムを組み上げる変態がいるのか。得られるメリットより払うコストの方が膨大になってしまう。


そんな魔王国の国益に関わる一大プロジェクトを敵かも知れない相手に使わせるか。まずあり得ないだろう。兄弟はシュルパナカーを脅してみるのはどうかと考えを膨らませる。しかしそれはすぐにボツ案になる。


「私を殺しても無駄だぞ?この技術は魔王ラヴァクシャが直々に管理しているんだ。頼むなら早い方がいいぞ。次期に取り返しのつかないことになる」


相変わらず全てを見透かしたような態度だ。けれどそれが嘘か実際に確かめるにしてもリスクしか無いのだ。思考をフル回転させても答えに行きつかない兄弟を見てシュルパナカーは遂に観念した。彼女は本来、そういう個性の持ち主だ。


「わかったわかった。意地悪が過ぎたな。どうだ?協力してやってもいい。そのかわりその神器を私にくれないか?老いた姿だとモチベーションが上がらなくてな」


そう言って皺くちゃな愛嬌のある笑顔を見せた。後に彼女が生粋の子供好きである事を知ったのは随分と後の話になる。兄弟は一瞬だけど迷い、一瞬で答えを出した。この神器は彼女に渡すべきである。そしてある可能性を考えていた。


「いいだろう。お婆ちゃんの姿も悪くないが、いつものあんたの方がしっくりくる」


兄弟はその樹木に似た神器をシュルパナカーに手渡した。シータ達を絡めとったままその皺くちゃなな手に渡る。すると乾き切った大地に恵みの雨が降り注いだかのように皮膚はハリを取り戻し、髪は潤い黄金に輝き出す。そしてその身長を大きく伸ばして18歳前後の少女の姿を取り戻した。


第三の眼が開く。それと共にこの一帯に異変が起きる。シータとフェヌクシスの様子が可笑しくなり、頭を抱えて苦しみ出した。そして気を失う。


「大丈夫だ。気にするな。直ぐに目を覚ますだろう。その時にはお前達が知っている者として蘇る」


どういう仕組みかは多くを語らない。だがシュルパナカーには神々の繋がりにジャミングをかける特殊能力が備わっているらしい。その力を得るために何を犠牲にしたのかはわからない。けれど流れはようやくこちらに向いて来た。それは神々の定めた運命ではなく自分達で掴み取った明日への道だった。

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