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兄弟が行く 〜異世界へ幼馴染を救い出せ〜  作者: 喜郎サ
第五章 ランカー島編 前編
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第六十話 兄弟とかつての仲間


遠い昔に起きた出来事。人類はその事実を後世に残す技術に乏しく。写真も無ければ、本もない。そんな時代に巻き起こったダイナミックな歴史を知る事が出来ればこれ程に価値のある教科書は他にはないだろう。何故なら私たちの生命としての根源がそこで明らかになるからだ。けれど優秀な記録媒体が発明されるまでには原始的な文字を石版に刻み込むのが精一杯である。


そんな歴史の中で人々を万物の霊長に至らしめ、飛躍的に文明を発展させた巨大なコミュニティの裏には理由がある。それは言葉であり物語だった。他者へと気軽に情報交換ができる画期的な手段が言語であり、それを上手く伝えるテクニックが物語であった。


時には親が子へと伝え、より多くの人々に向けては音楽が発明された。故に何万年の時を経て我らに届いた昔話はご先祖様の知識と知恵の結晶だったのだ。


しかし、その内容にどれほどの信憑性があるのかは確かめようがないのだ。そう言う伝承を神話や英雄譚と呼び。事実としてでは無く真実、信実と言ってもいい。ようは聞き手が信じる事で事実を主観的に納得させる文化である。


シュルパナカーは代々繋いできた事実のバトンが長い年月の中でどれ程までに尾びれ背びれをつけられてしまったかなど確かめた事はないが、魔人という人種の寿命が数百年と考えても他の人類が語り継ぐ真実よりかは正解に近いと言える。


彼女が語る昔話には納得できる要素が多い。何故なら破壊神の力と叡智を授けられた兄弟は身に染みるほど神の本質を見抜く事ができるのだ。それは並の嗅覚ではない。どれ程に作り替えられようとも新しきを生み出せない破壊と再生の力は元の世界にあったパズルの個性を色濃く残している。


その感覚は全ての人が共感できるものだ。頭の中でオリジナルの世界観、オリジナルの物語を妄想したことの無い者などいないだろう。その時に気付くのだ。好きな物語の主人公や登場人物に影響を受けていると。


つまり我ら人類は原初の神が混沌の海から引き上げた凡ゆる事実を思考の世界で破壊し、より理想の真実に再生する作業をこよなく愛するのだ。そう言った物語のパワーは凄まじく、魔人を最大悪とする風評は破壊神シヴァとその眷属である人類の理想のストーリーに改変された。それを見抜く嗅覚は高い位置に上り詰めた者の苦労の末である。


「私が知っているのはこれで全部だ。煮るなり焼くなり好きにしろ。お前達なら造作もないだろう」


見るとシュルパナカーの身体から黄金のオーラが一方的に流れ出ている。それは破壊神と化したショウタロウとリョウスケの元へ身勝手に吸収される。やがて神力を枯渇させた彼女の体は幼い子供の姿を経て徐々に皺くちゃの老婆へと変化する。


無限に枝を伸ばした手に持つ神器も枯れ木のように痩せこけてボロボロと朽ち果てた。けれどまだ死んではいない。流石は魔人の生命力と言ったところか。


「すまんな。自分でも止められないんだ。許せ」


彼女の寿命は残りわずかだろう。それでも人に換算すれば十分だ。シュルパナカーは長い人生を一瞬で振り返った。けれどやはり今が一番楽しい。そう思える事が嬉しい。最後に護りたい者も出来た。もう十分である。そんな温情のような精神が口を軽くする。


「謝る事はない。私の役目はもう終えたのだ。こちらこそ感謝する。そんなことよりも気をつけた方がいい。今、世界から狙われているのは貴方達お二人さんだからね」


それだけ言い残すと、老婆とは思えないほどの俊敏さで動き、昇降装置と思われるものに乗り込んでは、より下層へと姿を消す。下がっていく合間にシュルパナカーは彼らの後方を指差す。そこにはショウタロウが開けた大穴があり、振り向いて見ると何者かが降りてくる。


それは巨神となったシータと骨格だけになってしまったガルーダに乗り込むフェヌクシス。そして最後に現れた者を見て兄弟は凄まじい悪寒を覚えた。


プラチナに輝く毛並みを風に揺らし、超巨大な槍を携えてやって来たのは生きる伝説。世界各地に残る逸話は数知れず。その超常的でぶっ飛んだ話は全てが事実。神話の中に登場する英雄の中の英雄。その名はハヌマーン。


そんな彼を兄弟はよく知る。けれどやって来たその姿には大きな違いがあった。もはや以前の頼もしい英雄は更なる高みへと昇る。かの霊峰ラヤカーンでの戦争により父ヴァーユを亡くしたハヌマーンは猿神の王になった。そして王だけが使うことを許された猿神の奥義。


その瞳は歯車のように複雑な回転をし奇妙な力を発現する。そしてその額には第三の眼が閉じている。


もう味方ではない。そんな雰囲気を強烈に示すように、降りて来た3人はその目で兄弟を睨み付けるのであった。


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