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兄弟が行く 〜異世界へ幼馴染を救い出せ〜  作者: 喜郎サ
第五章 ランカー島編 前編
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第五十九話 因縁の歴史


大昔、その時代は平和そのものだった。世界は自然に包まれ動物達は自由のままに野生を謳歌する。もちろん人類もそこに存在していた。ただ一つ違いがあるとすれば、ここには魔法や魔術や化学まである夢のようなファンタジーの世界であった。


ありとあらゆる文化と価値観がごちゃ混ぜになりその全てが許されている。世は興奮と感動に溢れ自由自在に生きる事を許された様はカオス。まさに混沌の世界だ。


そこには様々な人種がいて、争うこともあるが自然のままに食うも食われるも死ぬのも生きるのも一緒だと、この世界を創造した神ブラフマーは自分自身の存在を一切明かさずに、所謂「俺の考えた最高の世界」を観察し堪能し悠久の時の中で至高の日々を過ごしていた。


けれどある日突然、空から破壊の大王がなんの前触れもなく降ってきた。それは大地を溶かし、海を蒸発させて惑星の10分の1をもめくり上げた。その一瞬で生命の半分は絶滅に追いやられたという。


そして焼き尽くされた不毛の地の中心で太陽のように赤く巨大な物体が残っていた。それは卵のようにも見えるし、何かが縮こまって丸くなっているようにも見えた。


その中心に空間の穴のようなものが突如開くと、内側から一体ずつ何百もの大きな人型が順番に降りてきた。まさかこの中にこれほどの人数が入っているとは到底思えない。それが絶え間なく続き、ようやく最後の1人が現れる。


黄金の長髪、頭が4面、腕は八本、筋肉隆々。もう誰の目から見てもあれが一番強いと確信を持って言える強烈な見た目をしていた。なんならその表情でさえおかしい。感情がないというより、どれが本性か判断できないと言った方が正しいだろう。4面には喜怒哀楽の全てがあった。


その一番ヤバそうな男は自分達が乗ってきた船をそっと掌で触る。すると赤い体躯にヒビが伝って、遂には粉々に粉砕し崩れて落ちる。この惑星の人類はその行動原理に彼の本質を見た。それは破壊の化身。後に残るのは何かの生物の骨格と巨大な心臓だけ。そしてそれをした張本人である破壊神シヴァは声を張り上げて言った。


「これでもう逃げ場はない!!」


誰に対してそんな事を言うのだろうか。逃げ惑うこの星の人々の事だろうか。いや違う。船を壊した事により自分達はもうこれで帰りの手段を失ったのだ。そして取るべき選択は一つ。


「血に飢えた神々よ!!必ずこの世界を手に入れるのだ!!故郷に帰りたければ!命など惜しくない!どんな手段を使ってでも奴を探し出すのだ!!」


凄まじい雄叫びに世界は激しく振動する。彼らの目的は侵略。それも逃げる選択肢を完全に捨てたイカれた野郎どもの集団であった。そんな巨体を持った破壊の巨神達が一斉に走り出す。その超重量がもたらす地響きは昼夜を問わず鳴り響いて世界の至る所を求めて足元にある全てを潰した。大地は踏み荒らされ海は攪拌されて泥に塗れた。世はもうめちゃくちゃである。彼らが探したのは何処かに身を隠した臆病な最高神。けれど中々に見付ける事が出来ない。


その間も世界は蹂躙され続けた。けれど誰もその悪逆非道を極める暴挙に抵抗しなかったわけではない。生き残った人類は力強く立ち上がり持てる力の全てを出し尽くした。


耳長族は聖霊神の力で破壊の巨神共の行くてを阻んで足を絡め取り、長髭族は大地神の力を借り倒れた敵共を串刺しにした。そして長腕族は魔法神の知恵を借り魔力で生み出した特大の火炎弾を頭上より降らせ、脳天をかち割る。


他にも沢山の種族が持てる秘術の全てを披露し巨神を徐々に追い込む。けれど彼らには決定的な強みがあった。それは死ぬ気であると言う事だ。その本気度は半端ではない。後から危機感を煽られて立ち上がったのではもう遅いのだ。人類は再び窮地に立たされ始める。お互いにジリ貧だ。けれど気持ちで負けている。そんな状態である。


そして、世界の果てに創造神ブラフマーの姿があった。彼は堂々とそこに立っている。その姿は破壊神と酷似していた。けれど顎に髭を蓄えて、腕は六本。それを除けばとても似ている。その目の前にあの男が現れた。


体はボロボロに損傷し、腕は後一本。やって来たばかりの頃の威勢は無くなっている。4面あった頭のうち3面は潰れ怒りだけがそこに残っていた。


「遂に見つけたぞブラフマー!!」


その反面、ブラフマーは哀しみの表情を前面に向け彼を憐れんだ。


「シヴァよ。我を見つけにこんな所にまでやって来たか」


破壊神は破壊と再生の神。自分の世界を手に入れるには他者の世を破壊し作り直す以外に手段を持たない哀しき定めである。


ブラフマーの作った世界は間もなく終わりを迎えようとしている。そんな彼の大きな背中に隠れて震える最後の人類。その青い肌は闇によく溶け込んだ。そして避けることのできない神々の行いをただ息を殺して、その隙間から見つめるのであった。

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