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兄弟が行く 〜異世界へ幼馴染を救い出せ〜  作者: 喜郎サ
第五章 ランカー島編 前編
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第五十三話 兄弟と落ちぶれインドラジット


海底を潜水で泳ぐ巨大な人影がランカー島の海岸線までやって来た。海面に無数の気泡がぷくぷくと昇り、泡立つ。まるで海が炊き上がっているかのようだ。案の定、煮込まれてしっかりと火の通った煮魚が水面に上がり磯の香りと濃厚な魚介の旨味を放出し、辺りは大量のだし汁の海へと変貌する。この島の周辺は白濁したスープに満たされた。


砂浜にズンズンと赤い炎の巨神が上がってくる。その頭は二つ。開いた口には無数の舌が出入りし腕は四本生えている。そして胸の中心を開くと灯台のような黄金に輝く光が溢れて、3人の黒い影がその中に観えた。


その光に包まれたまま砂の上にフワリと着地すると炎の巨神は「よろしく頼むぞ」とそれだけ言って海の中へと帰っていった。その異例の登場はもちろん大きな騒ぎを呼んだ。けれど海からの侵攻を殆ど想定していなかった魔王国の動きはその判断に僅かな遅れを取る。


その誤差とも思えるコンマ単位の隙はこの3人にとって十分過ぎるほどの余裕となった。そこを突く彼らの神速に着いていける者などいない。戦闘準備が整ってしまう直前に頭を出したカラクリ兵器が次々と潰されていく。


市場で買い物をしていた一般市民が慌てて避難し誘導の指示を受けている。敵の侵略を知らせる、けたたましいサイレンが島全体に鳴り響く。今世紀初めての敵からの侵攻は平和ボケしていた国民の帯を締め直す衝撃的な出来事となった。


そして逃げる住民の肌の色は老若男女問わず全員青色。けれどそれを除けば見た目はただの人間である。ショウタロウはその個性に大陸で吹聴されている極悪な印象を一切抱くことが出来ずむしろ仲良くなれるかも知れないとポジティブな気持ちが燻るように湧き上がる。


しかし第三の眼はその気持ちを隠すようにしてふと込み上がった感情が完全な認識に発展する前に強制的に蓋をした。それは決定的な損失感となって残る。今話そうとした内容を途端に忘れてしまった時の感覚に似ている。その違和感は今に始まった事では無い。彼はその度に自分をここまで連れてきた神に不信感を募らせる。


「またか…」


「ん?どうしたの?」


残念な気持ちが自然と口から漏れていた。弟のリョウスケがそれを耳にして兄の心配をする。けれど今は迅速な行動が求められている。ショウタロウは「いや、何でもない」そう言って先を急いだ。


中心部に近づくとそこは斬新な造りをした要塞都市であった。高さを持った沢山の建造物が地面に埋まるようにして格納されていく。その様子は映画に見るSFの世界観そのものである。


そして代わりに生えてくる設備兵器が敵を迎え撃つ。戦闘態勢へとその姿を変えるのだ。そう設計された社会体制はまるで世界の崖っぷちに追い込まれた人々の駆け込み寺ののようにも見える。それだけ魔人という民族は世界から敵意を向けられていると自覚していると言うことだろうか。


そんな雑念を振り払うようにして無数の大砲から発射された視界を覆い尽くすような弾幕を紙一重で避けていく。並の物理攻撃は当たっても当たらなくても何の意味も成さないだろう。けれど油断一つ持たない3人の考え方は一切の隙を敵に与えない。そしてようやく準備が整った魔王軍がこの時のために用意した切り札を登場させる。


それは全身を錆で覆われた見窄らしい装甲に所々、黄金に輝くラインが走ったミスマッチなデザイン。しかしそのフォルムはスラッとして長く双頭で腕が四本。まるで神の姿を象った人型決戦兵器。侵攻してくる神の使徒を迎え撃つ為だけに開発された禁断の人工神。腕を組み下から浮かび上がってくるその姿はまるで今日という日を心待ちにしていたかのようだ。


「お前達を歓迎するぞ!ギタギタにもてなしてやろう!!」


その声には聞き覚えがある。霊峰ヤラカーンにて死闘を繰り広げたあの男。魔王の長子にして魔王軍の総指揮を任されていたイントラジット。しかしこの度の失態で地位を落とした落第点。そんな彼の威勢が目の前の巨神から聞こえる。その時…。


「お前の相手はこの俺だ!!」


上空から隕石と見間違えるような赤く燃え上がる超重量の物体が一切そのスピードにブレーキをかけず地上へと突撃してくる。とある地点で鳥の形態から人型に変形しその勢いのまま腕から生えた鍵爪の刃を巨神に叩きつけた。


世界に凄まじい衝撃波が津波のように押し押せただろう。信じられない事にイントラジットはその神撃を辛うじて受け止め、地面は陥没し支えていた地盤は地下に設けられた空洞へと落下していく。


「フェヌクシス!!」


ショウタロウ達はその後を追って大穴に飛び込んだ。そして知ることになる。この惑星はもはや誰の所有物なのかを。

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