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兄弟が行く 〜異世界へ幼馴染を救い出せ〜  作者: 喜郎サ
第五章 ランカー島編 前編
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第四十八話 シュルパナカーもう一つの顔


赤い攻めたヒールの音が廊下をカツンカツンとテンポ良く歩く。その堂々たる立ち姿は世紀の大女優さながらである。服は黒色で統一され、レザーのパンツがピチッと脚を長く際立たせる。そしておへソ丸出しのチューブトップの上からレザージャケットを羽織り醸し出す雰囲気は完成された良い女。しかしそれを極限にスケールダウンさせたのは紛れもない幼女の姿だったからだ。


そんな違和感の塊に指摘してやろうと言う命知らずな輩は一人としていない。何故なら彼女はこの国で実質No.2の地位に君臨する魔王の妹シュルパナカーであるからだ。その趣味は前世からのもので今更変えないのは彼女なりの意地である。


それがとある一室の観音扉の前に立つ。もう随分前から敬礼のポーズで微動だにしない警備兵二人。それが緊張のあまり冷や汗をダラダラと流している。中々状況が動かない。そして口の中に滑り込んだ汗を飲み込んだとき、ようやく彼女は口を開いた。


「開けてくれ」


「はっ!!」


無駄のない洗練された動作でドアノブをひねり、扉を手前に開いた。当たり前のように礼の一つもない。そして中に入ろうと脚が縁を跨いだその時、彼女は思い出したかのようにもう一度、戻ってきてそして言った。


「待たせてすまなかったな。ご苦労だった」


警備兵は感極まり「ありがたきお言葉!!恐縮至極に存じます!」そう言って深く頭を下げた。シュルパナカーはそれに目を合わせる事なく軽く左手を上げる所作をして「よい」とそれだけだった。けれどそれが彼女の人望の表れだ。中に入るとメイドが二人頭を下げている。その奥は子供部屋になっていて二人の子供が楽しそうに遊んでいた。


「人払いをしろ。私が部屋を出るまで誰も入れるな」


そう言うとメイド達は「畏まりました」と頭を一度深く下げ直ぐに切り替えしキリッとした所作で足速に部屋から退散する。それを見届けてから部屋の奥を眺めた。そこには男の子が兄のように接してそれより頭一つ小さい女の子がその後を構うようについて行く姿が見える。


シュルパナカーがヒールを脱ぎ柔らかい素材で敷き詰められたその空間に入ると子供たちが奇妙な人の気配に気付いてピタッと動きが止まる。けれどすぐに笑顔に戻った。知らない仲では無さそうだ。そして彼女は言った。


「遊びに来たよぉー」


その稚拙な声色は見た目そのままで格好だけがおかしい。けれど中の二人はそこを気にする素振りもなく快く歓迎する。


「シュルちゃんいらっしゃーい!!」


まぁちゃんは嬉しそうに走ってシュルちゃんことシュルパナカーに抱きついた。大変喜んでいる。背中に回された手に応えるようにして同じように抱きしめる。


「シュルちゃん久しぶりだねぇ!会いたかったよ〜」


「ごめんねまぁちゃん。パパのお手伝いが大変だったの。でも終わったから直ぐに来ちゃった!」


二人は手を繋いで「遊ぼー」と言葉を交わしオモチャのある方へと走って行く。そこに数百歳のスーパーお婆ちゃんの貫禄は一切ない。完全無欠に幼女を演じきっている。三人は一晩そこで過ごし、お風呂も共にした。そして二人の本物の子供が完全に寝付いた頃、シュルパナカーは目を覚ました。


「不味い。本当に寝てしまうところだった」


そう呟いて起き上がる。同じベットで眠るまぁちゃんを起こさぬようにゆっくりと毛布から出る。そして綺麗に畳まれた自分の服を取り可愛い子供用のパジャマから再び元のぶっ飛んだ服装に着替え直しふと、物思いに耽る。


子供の体力の使い方には感心するところがある。終始全力投球で生きるその姿に学ぶものを感じていた。そしてプツリと電源が切れたように安らかな可愛らしい寝顔を見せる。あんな風に生きれたなら幸せだろう。そう思うようになった。


この年まで世帯を持たなかった自分には当然、子供はいない。だからこんなにも子供と戯れる才があったなどと知る由もなかったのだ。長く生きるものだ。まだ知らない事が沢山ある。そしてハサミを取り出してスヤスヤと眠るまぁちゃんの元まで行く。


「すまんな。これもパパ(兄)のお手伝いだ…」


まぁちゃんの髪の毛を数本頂き、透明な袋にしまう。またしばらくのお別れだ。研究が続く限り再び会うことが出来るだろう。口には出せないが心の何処かでそう願っている。


子供部屋を出ていつもの高いヒールを履く。素足と比べて急に身長が伸びたかのようだ。そしてまたカツンカツンとテンポ良く音を鳴らしてこの部屋を後にするのであった。

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