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兄弟が行く 〜異世界へ幼馴染を救い出せ〜  作者: 喜郎サ
第五章 ランカー島編 前編
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第四十六話 まあちゃんとラーマ少年


色取り取りの色彩と異国情緒溢れる文化的模様と柄。そんなファンシーでエキゾチックな部屋は大きな縫いぐるみや木製の玩具に溢れ、お絵かきボードまで用意されている。そんな至れり尽くせりな夢の子供部屋にアジア系の女の子が一人。そして獣の混じった同じくらいの男の子がもう一人。笑顔で対話するその姿には一定の信頼関係が確認できる。それは友としてか或いは小さく可愛い恋人たち。他に人が居るとすれば扉の横に二人、メイド風の世話係が置物のように立っている事とその外には警備兵が待ち構えているぐらいだ。


出会ったのは数ヶ月前、ママパパと激しく泣き喚き。一切を受け付けなくなった少女にあてがわれるようにして寄越されたのがこの少年だ。彼も同じような境遇であった。両親の元から攫われて人身売買屋の暗くジメッとした檻の中で売り捌かれるその日まで絶望の中で時間を消化する毎日だった。


ある日、眠ったままの少女を抱き抱える6本腕の魔人を柵の間から風景の一部のように見ていた。店のオヤジがおべっかをへつらい掌が擦り切れそうなほど擦り続けている。魔人が何かを言い、オヤジは慌てて周りを見渡した。そこで目が合ったのが運命の瞬間だ。向けられるその人差し指が俺をご所望だと言う事を示している。買われた。そう直感した。


そこからは散歩で引き回されるペットのような気持ちで心を殺して歩いた。リードの紐が鋼鉄の鎖である事を除けば、構図はほぼ一緒である。薄暗い路地は世捨て人の巣窟で歯の無い老婆が機械仕掛けの監視人のようにこちらを目で追う。薄気味の悪い場所だ。けれどそこを抜ければ、どこかで見た故郷の街並みだった。しばらく歩くと見知った他人と目が合う。けれど気まずそうに目を逸らした。


この6本腕の魔人の堂々たるや。皆が道を開けるどころか走って逃げていく始末。誰も目を合わせようとせず事がすぎるまで息を殺して待っている。女子供は家の中に隠されて男達だけが握り拳を作って警戒する。


そんなこともどこ吹く風。一切気にも留めず道端の石ころのように存在すら見ていない。それは無視とかそんな次元では無いのだ。その感覚を想像すると途轍もない恐怖が襲ってくる。この男は神にでもなったつもりなのか。人を人として見ないその感覚は理解してはいけない。そんな気持ちになった。


しばらくして港に着くと大きな木製の貿易船と小さな漁船が何隻も留められている。けれどただ一隻だけ海の上にない。それは一本の巨大な錨を陸上に打ち付けて砕かれた地面がその超重量を想像させる。もしもそれが身に降り掛かれば、即死も良いところだ。そこから上空に伸びた先。どの船よりも巨大な物体が空を覆い隠していた。


それはもはや船ではない。途轍もない握り拳だ。手だけを切り離してここまで飛んできた。そんなイメージを思い起こさせる。それから俺は泣く子も黙る魔王の国ランカー島に連れてこられたのだった。


目を覚ました女の子は状況を理解する間もなく泣き出した。パパママと辺りを発狂して走り回った。世話係のメイドがその後ろを必死に追いかけ困っていた。その青い肌からも伝わる焦りは死への恐怖。この小さな娘の身に何かあれば極刑はもちろん家族もろともあの世行き。それほどにこの娘は魔王にとって大事だと言うことだ。あの6本腕の魔神こそが魔王ラヴァクシャその人だと知ったのは少し後の話になる。


俺はその空間の中で身なりのいい格好をさせられて人形かおもちゃの一つとしてそこに置かれていた。すると少女がこちらに気付いて走ってくる。


「ショーちゃーん!!」


誰かを呼ぶその顔は涙と鼻水でグシャグシャになり前もろくに見えていないだろう。別人と間違えている。背格好が似ているのかもしれない。案の定、抱きついてきたその子は俺の顔を見た途端に真顔になり再び泣き出した。離れて逃げていくその手を何となく握った。


「大丈夫。俺が君を守る」


何故そんな事を言ってしまったのかは今となってはわからない。けれど自然に出てきたその言葉は凄く懐かしいもののように思えた。女の子も鼻を啜るグシャグシャの表情のまま「う…ん。ありがと…」と手を強く握り返した。不安がそれで無くなったわけではない。けれど二人は今日唯一無二の存在になった。


そして女の子は自分をまぁちゃんと読んだ。俺の名前はラーマ。父が熊の獣人で母は裸猿と呼ばれていた。彼女はそんな母さんと身なりが似ている。髪の毛以外に体毛はない。尻尾もない。そんなところに親近感が持てた。俺はこの子の事をもっと知りたい。そう思うのであった。

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