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兄弟が行く 〜異世界へ幼馴染を救い出せ〜  作者: 喜郎サ
第四章 神の乗り物ガルーダ編
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第三十七話 兄弟はわからせる


神が直々に現世へと介入することはない。つまり間接的にはあるという事だ。それは転生を選択することが稀に…いや伝承の数からして頻繁にある事なのかも知れない。その姿は人、或いは野生動物としてその時代に生を受けて特別な役割を担うという。そんな伝説が静かに日常生活の中に残っている。


そして人類はそれらしき偉業を成し遂げた偉大なる人物のことを時に神の化身と呼び、多くの国の王朝が自分達こそがその末裔であると真しやかに主張した。そして何を隠そうこの鷹神の王サムパーティその人もそういう方向性で民を教育し、自分の王朝を尊き神の一族としてブランディングしている。けれどそれがいつの頃より始まったのか本人も定かではない。


そして先祖代々築き上げてきた磐石な王朝体制は一人の青年を前にして砂上の楼閣となった。彼の額から見下ろす神々しい瞳はどんな愚か者だろうがその場に跪かせる。更にその身から力強く発せられた激しい黄金のオーラはサムパーティが秘める悪意の数々を跡形もなく消し去り、彼は封じ込められていた記憶を呼び覚まして罪深き自分を知ることとなる。そしてその罪の重さに涙を流した。


「おぉ…神よ。そこに御座しましたかぁ…。ワシは何という愚かな事を…」


ここに来るまでの間にどれ程の失礼を働いたことか。想像するだけで身を引き裂かれる思いだ。それは神への冒涜。神の使命を背負いし自分がその役割を忘れ、主の遣わした使者に何度無礼を働いたことか。


もはや我が一族の信用は失墜した。この脆弱で力無き肉体がその証拠である。ただ翼があるその一点に神の寵愛を感じていたが、そんなものは残りカスでしかない。もうワシに生きる意味はない。そして現実を直視して燃え尽きたようにサムパーティは項垂れる。そして青年は改めて質問した。


「ガルーダはどこだ。時間がない。早く会わせてくれ」


単純な頼みだ。それ以上にここへ来た意味はないだろう。しかし今持てる精一杯の返事は彼らを失望させるのに十分だった。


「解らぬ。ワシは何か邪悪なモノに長い事この身をやつしておった。ガルーダ様はワシが王に即位する前、先代の王の時代に何処かへと姿を隠した。それが何故なのか思い出せぬ。いったい何処へ行ったのか…」


どういう事だ。ショウタロウはどこで運命を見誤ったのか膨大な思考の海を反復する。そしてハヌマーンが確かにこの隠れ里にガルーダがいると言った。それが第三の眼から伝わる真実と合致している。それは間違いないだろう。しかしその案内人となるはずの当事者がここにはもう居ないという。そしてこの悪意を孕んだ謎のオーラ。これは何か裏がありそうだ。


思慮に拭ける兄に弟リョウスケは尻尾を振て落ち着きのない素振りで兄ショウタロウの注意を引きつけた。何故なら前々から気付いていた事があったのだ今がその伝え時だと悟る。


「にいちゃん、なんかねぇ。ここに来てからずっと思ってたんだよ。この人たちから変な匂いがするんだ。あの青い人達みたいな匂い。微かだけどね。するよ」


「青い人達?魔人の事か?」


魔人と聞いた途端にサムパーティがビクッと反応する。3人はその動きを見逃さない。するとシータがすかさずその不審を問いただす。


「まさかあんた達、魔王に寝返って裏切ってたんじゃないだろうね?」


その問いは真実に限りなく近くて遠い。ここ数百年の間に巻き起こった騒動は神でさえ知りえない巧妙かつ複雑に隠匿されていたのだ。そしてガルーダの行方はその謎に隠されているのである。


そんな時、ひとりの鷹神の青年が王の間に血相を変えてやって来た。それはまだ完全に羽毛が生え変わる前の若者である。その身なりは王族を示す金の足輪を身につけている。それが地獄のような惨事を目の当たりにして激昂した。


「これはどういうことだ!!貴様らは何者だ?!王の御前であるぞ!何故このような事を!!おい!!どうなっている!曲者だ!!王を護れ!!」


取り乱して怒りを顕にするその若者は次代の王を担うとされる鷹神一族の男ジャタトリスであった。サムパーティにとって彼は甥っ子にあたるが、とある理由で現在は彼が王位継承権第一位を持つ。それがショウタロウの放つ黄金のオーラを受けても邪悪さを失わないのだ。それどころか跳ね返すような禍々しいオーラで身を包んでいる。


それが意気消沈している鷹神の王サムパーティ並びにボロボロになって血塗れで倒れている兵士達の体に憑依する。そして次々と伝染し耳鼻の穴に吸い込まれた。異変はその直後に起きる。完全に沈黙し戦闘不能だった彼らが狂ったようにダラリと不健康に立ち上がる。それは生きる屍のような理性を持たない狂戦士の軍団をこの場に作り上げたのだ。


「何よ急に!!きゃ!気持ち悪い!やめっやめろって言ってるでしょ!」


生気のないサムパーティは荒々しく狂った勢いのまま、シータを包むように抱きついた。その力は凄まじく、神力を失った神獣の力とは到底思えないものだ。別の何かが彼らを超人へと押し上げている。けれどその程度では覚醒した彼女の相手は務まらなかったようだ。


内に秘める神力を解放し超人的な腕力を漲らせる。老体とはいえ万力のような強さで締め上げる巨漢の鷹神を軽々と引き剥がし乱暴に前方に押し返した。そしてフラついて隙が出来た狂気の王をシータの怒りの詰まったビンタが凄まじい破裂音を鳴らしてその顔にお見舞いされた。そしてその威力によりサムパーティの首は明後日の方向を向いてしまう。


「あっ、やばいかも…」


正当防衛とは言えひとりの老人を殺してしまった。シータはそう思い冷や汗をかく。けれどその心配は必要無さそうだ。濁音の付いた苦しそうな呻き声をあげて、後ろを向いた首が更に一回転して正面を向いたのだ。


「え…やば。キモいんだけど」


それを合図に狂気をまとった鷹神一同は一斉に襲いかかってくる。その背後でジャタリトスがイヤらしい笑みを浮かべながら奇妙な動きを見せていた。その手には錆びついた鋏が握られ執拗に何度も開閉を繰り返す。そしてそこからは例の邪悪なオーラが溢れ出していた。

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