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兄弟が行く 〜異世界へ幼馴染を救い出せ〜  作者: 喜郎サ
第四章 神の乗り物ガルーダ編
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第三十四話 兄弟は案内する


ひたすらに広がる大いなる自然。人の手を拒み続けたこの秘境に名はない。その代わり人々はそこを暗黒の地と恐れを含んで言い表す。どこの国にも属さず。目指した者を飲み込んで誰一人帰さない。その実態を探る行為は愚かで命知らず。勇敢な探検家はネギを背負った鴨だった。


ヤラカーン地方。その山脈が囲うようにして守る暗黒の地。けれど果たして護られているのは一体どちらだろうか。それは踏み入れた者だけがよく知っている。けれどそんな輩には出会ったことがない。


人類に名を馳せた上級冒険者の若者一味。その噂のパーティー「明日の黄昏」は更なる栄光を求めてその山を越えた先に到着してしまった。何故なら先日、数百年に一度の大噴火の噂を聞きつけた彼らは山の神が守りの手を緩める可能性に賭けてその実態調査に出た。


その読みは見事に的中した。大災害の前後で野生動物が危険を察知してその地を離れると言う迷信はよく耳にする。そんな眉唾物のオカルト話が本当だったとは、流石の彼らも諸手を挙げて喜びを表現する。


「ヤッフーイ!!」


「ウェーイ!やったぜ!これで俺たちも英雄の仲間入りだ!!」


「「あはははははは!」」


笑いが止まらないわけである。そんな男4名女2名、全員で6名となるこのパーティーは同じ村から出発した元農民の倅達である。皆第三子から第四子の生まれで農地を継げず泣く泣くこの職業に身をやつした。そんな挫折も今や昔の話。


まさか自分達の天職が探検家だとは産まれながらにして答えられる者はいないだろう。世間では墓泥棒だの死体漁りなどと呼ばれているが、体制からは怪物の生態調査や地図の開発に大きく貢献する人の為の職業である。名を上げ国からの依頼や貴族連中の頼み事をコツコツとこなして来た彼らは今の自分達に誇りと愛着を持っている。誰からも蔑まれる筋合いはない。


そして自分達は歴史に名を残す。村に残った兄弟姉妹の悔しがる顔が目に浮かぶ。6人は己に発破をかけて勇猛果敢に未開の地へと挑んだのだ。そして暫くの事。


「逃げろ!!早くいけ!!」


地面を這いずり脚を潰された男が口から血反吐を撒き散らしながら叫ぶ。その脚を踏みつける巨大なヤマアラシの神獣が彼らを死へ追い込んでいた。背中の棘には既に2人の男女が串刺しにされ息はない。


残る3人は祖国に流通した最新の武器であるライフル銃を構えて応戦する。けれど巨大な神獣は血を流すばかりで動きが止まらない。死を一切恐れないその姿勢にゾッとするような恐怖を覚える。逃げろと言われても足がすくんで動かない。やがてその超重量の獣は3人目を押し潰し命尽きるまで突進する。


ところがその目前に突然、矢が降ってきた。地面に刺さると同時にそれは黄金の輝きを放つ。そして周囲を暖かさと希望で包み込む。ヤマアラシの神獣はその光景に涙を流した。溢れる怒りが沈んで穏やかさを取り戻す。けれど先はもう長くない。そこへ黄金の頭髪を持った青年が現れた。その背後に大きな犬神と赤い槍を持った猿人の女。彼らは命尽きようとする神獣を優しく撫でて慈しむ。そして獣は恨みを忘れ安らかに息を引き取るのであった。


黄金の青年は蔑むような眼差しで生き残った彼らを見た。この近隣諸国では珍しい鳥の獣人だ。その内面を見透かすようなその神々しく鋭い眼差しに神の姿を見た。3人の冒険者は無性にその場に跪きたい衝動に駆られ感情のままに行動する。


「ごめんなさぁ〜い…どうか…どうか!お許しを…こんなつもりでは無くて…」


地面に両膝をついて、祈る手で格別の慈悲を得ようとしていた。けれど何一つ言葉をいただく事は出来ず着いてこいとばかりに彼らを案内する。


戦意を喪失し自信も無くした3人は小刻みに震えながらもその後に着いていく。そしてたどり着いたのは断崖絶壁。青年とそのお供は何の躊躇いもなくその先へと飛び降りた。


突然の奇行に鳥人の女が絶叫する。どういう事だと事態が飲み込めない。すると鳥人の男2人は恐る恐る崖の下を覗いた。そして驚く。


彼らが目にしたのは崖の壁面に空いた無数の洞穴と打ち付けられた数々の建造物。そこには伝説に残る太古の姿を保つ鳥神の一族が活気あふれる生活を営んでいた。彼らは自分達のような翼を失った鳥人とは違い体が大きく逞しい。その光景に感動で打ち震える。


「我らが祖先は…ここに」


祖国に伝わる鳥人の起源。それが現在の故郷に渡ってきた足取りは一切記録が残っておらず、伝承のみがその真実を本物とした。この世の何処かにあるとされた幻の隠れ里。そこに眠る最高神ガルーダの伝説。彼らは仲間の命と引き換えに歴史に残る大発見をした。そんな思いで胸がいっぱいである。


「俺たちも行こう」


彼らは勇気を振り絞って身を乗り出す。そのすぐ下に着地出来そうな足場を見つけて飛び降りた。そこは誰かの民家の茅葺の屋根。足の踏みごごちは柔らかく手応えはあまり無かった。


そしてそのまま屋根をすり抜けて家内に侵入した。そこは丁度風呂場であった。その浴槽内に勢いよく飛び込んだ彼らは水面から顔を出すと内装を見る前に無数の刃が目前にあった。自然と目線のピントが反射する刃先に合う。そして声がかかった。


「見たことのない奴らだ。翼がない…。忌み子か…」


3人は鷹神の隠れ里に奇跡的にたどり着いた。けれど快い歓迎はしてくれそうにないようだ。

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