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第十九話 兄弟は立ち向かう



人類が新しい時代を発明する創造主なら怪物は古き時代に終止符を打つ破壊王だ。それはある意味、創りすぎる人々に対するアンチテーゼ。早すぎる時代の移り変わりにブレーキをかける安定装置。そんなところだろう。


魔人は古来よりそれらと相性がいい。娯楽と進化を愛する神に生み出された人類とは正反対。安定と調和から産まれたような存在が彼らだ。


しかし地に根を張る力が盤石である一方、前に進もうとする推進力は際限がなく無尽蔵で身勝手だ。時代の移り変わりと共に徐々にその速度を速め。遂には周りの全てを巻き込むまでに成長した。もはやブレーキで減速させることなど甘い考えだ。いっそのこと文明を完全に停止させる。それは大きな賭けだったが滅びるよりマシだ。人類が呼ぶ怪物とはそう言った存在である。


その意思が魔人一族によって集約したのは偶然ではない。それも神の意志だ。その信徒である彼らが唯一その核になる事を許されている。そして遂に神話がこの地で始まる。偽りの聖地が真実を手にした。これはもう神々の戦いである。前進か停滞か。二つの理想がこの場で衝突する。


街の住民の誰もが思った。魔人が復活したと。悲鳴と共に神に祈りを捧げる人々。「神よお救いください」。巨神となったブロディはそれを鼻で笑った。


「神はここにいる!お前たち人類は思い知るだろう。正義は私にある!」


ブロディに迷いも恐れもない。勝つのは自分だ。その想いに偽りはない。まるで全知全能を得た気分だ。


「邪神の使徒ショウタロウよ。お前の正体をここで暴き!真に正しいのは私である事を思い知らせてやる!そして世界を手にするのはこの私だ!!」


空高く視界を覆うほどの巨大な拳が兄弟に襲いかかる。それが4つの腕により繰り出され怒涛の連打が炸裂した。


地盤に割れんばかりの揺れが発生し大地が波打った。街の建物はその余波で崩れる。シータを背負った弟リョウスケは遠くに離れ無事である。けれど兄はその拳をモロに受けたはずだ。無事で済むとは思えない。


砂埃が視界を覆い尽くす。シータはこのタイミングで目を覚ました。煙たさで咳き込む。何が起きているのか状況が掴めない。そのベールが徐々に履けていく。


聖地の周囲にあった古い家々がクレーター状の窪みの中に崩れ、跡形もない。その中心に巨大な影を見た一本の腕を突き出したまま停止している。その先に黄金に輝く青年がホコリ一つ被らずその中を無傷で立っている。なんと涼しい顔だ。巨神の拳を受け止めるその姿はまるで神話の一場面のように美しく切り取られた。それは後の英雄譚で語り継げられる重要なシーンだ。シータはそれを目に焼きつける。兄ショウタロウは巨神ブロディに言い放つ。


「手にするとか何だとか俺には関係ない!俺はお前達が攫った俺たちの大事な人を取り戻す!そして元の世界に帰る!そのために力を貸す!!ただそれだけだ!」


大人達の思惑も世界に蔓延(はびこ)る大問題も額の第三の眼が容赦なく教えてくる。だがそれは何一つ意味が無いのだ。この世界に勇気を振り絞ってやってきた理由はただ一つ。攫われた幼馴染を取り戻し本来自分がいるべき場所に帰る。それ以上は望まない。


けれどそれがどれだけ困難な場所にいるのか。()しくも脅されるようにして情報は脳にインプットされている。むしろこんな事態を利用した神を許せない。その流れに従うしか無いことが悔しい。けれど思考は至って冷静だ。それが第三の眼を覚醒した超人の力である。


兄ショウタロウはブロディの胸に嵌め込まれた二つの黄金の神器を目にする。一つは自分が持っていた片割れの矢だ。そしてもう一つ。それが何なのかはわからない。けれどあれが奴の力の源。それだけは理解した。ブロディは腕を引き戻しながらショウタロウに返事を返す。


「そんな下らない理由で!この俺が止められると思うな!!」


巨神の力を得たブロディは自分に酔っていた。もう魔王など取るに足らない。このまま世界を更地に変え、新しい時代の覇者になる。そう考えていた。その野望を見透かしたかのように胸の中の神器が赤く発熱し彼の魂を壊し始めた。


「ぐわぁ!!何だこれは熱い!目が霞んで…」


急に腕をダラリと下ろし静かになる。そして目を開くともはや全くの別人になっていた。


「ほう。これが神の用意した力か素晴らしい…」


ブロディの魂はもう巨神の中に一欠片も残さず焼き尽くされてしまった。それをもたらした悪の根源。巨大な足元には全く恐れを成さない勇敢な青年が立っていた。それは黄金の髪を棚引かせ、手には黄金の弓を握りしめている。その姿はまさしく神話に出てくる英雄。神に選ばれし者がこの場にいる。それに驚きを隠せない。


「お前は…我が妹シュルパナカーを葬った神の使い…。そうか…もうここまで来たか。随分と早いではないか!」


巨神は高らかに笑い飛ばす。それを操る者の正体は魔王ラヴァクシャその人。好き勝手生きる事だけを求めて永遠の命を手に入れた強欲の男。そして全ての魔人の頂点に立つ世界覇者。何もかもが彼の掌で踊らされている。兄ショウタロウはその振る舞いから正体に気付いて激昂する。


「お前が魔王か!!まあちゃんは何処だ!今すぐに返せ!」


「まあちゃん…。そうかあの娘…」


不敵な笑みを浮かべる。何かに気付いて機嫌がいい。


「何と因果なものだ。我を餌で釣り上げたか!やはり神の成すこと全てが愉快だ!!面白いぞ小僧!これは競争だ!我の業とお前の願い!どちらが先に朽ち果てるか試そうぞ!」


魔王は胸の神器を一つ抜き取り兄ショウタロウの元に投げ捨てた。そして人智を超えた戦いが始まろうとしている。


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