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あやかし殺しの三千院家  作者: 刀綱一實
故郷のための栄光
658/675

役に、立ったぞ

 モニターから、表示が消える。最低限の通信機能は残ったが、艦隊は大事な『眼』を失うことになった。


「砲台〇一、十六再生まであとわずか。くらま、あしがら、やまゆき、やまぎり。各艦発射準備」

「了解。ポイント特定は不鮮明になりますが──デバイス使いは目標を補足しています。必要なのは目眩ましですから、多少のずれは気にせずやります」

「……頼もしい」


 現場も、自分たちのやるべきことをしっかりと把握している。あおいはうなずいた。


「了解。発射用意」

「発射用意完了」

「目標との距離、維持しています」

「撃ち方始め──撃ぇっ!」


 レーダーがないため、着弾したかはデバイス使いの報告がないと確定できない。司令部の中が静まりかえった。


「仕留めたよ。次もよろしく」


 ようやく報告があった。士官たちが胸をなで下ろす。


(これが続くのか。昔はこんな戦ばかりだったとしたら、息が詰まるな)


 そんなことを考えながらも、葵は次の砲台に意識を向ける。攻撃のローテーションは、すでに頭の中で組み上がっていた。


「次、砲台〇三、〇七。準備」

「了解」

「狙撃班も、所定の位置で待機中」

「撃てっ」


 第二陣も、無事に攻撃を終えた。


「目標に着弾したよ。この調子ならまだいけそう」


 りゅうが明るい声で言う。葵はうなずいた。同じペースで、あと四十五分。


「次、〇八と十四」


 目標を指示する。その時、門別もんべつから通信が入った。


「砲台が増えたぞ」

「なに?」

「デバイスが反応してる。生意気にも、私の艦を標的にしてるさ」

「なるほど……これが狙いか」


 通信を遅くし対応できなくした上で、新砲台による一発逆転を狙う。計画としては十分にありそうだった。


「すぐ攻撃してきそうか?」

「いやあ、もうしばらくは。しかし、ずっと黙ってちゃくれなそうだ」

「了解した」


 引き続き門別に監視を頼み、葵は他のデバイス使いにも連絡をとる。幸い他のエリアでは、新砲台の出現はなかった。


「砲台に備えて、計画を練り直す」


 各砲台の再生までの予測時間、艦の補給・発射までにかかる時間。それを組み直して、新砲台を攻撃する時間をひねり出す。


「とわだ。じんつう、いそゆき組に補給開始」

「きりしま、さみだれ、うみぎり。〇二と〇三に向けて発射用意」

「〇四、着弾確認。次は十を落とす」


 何度も繰り返すうちに、徐々にリズムができあがっていく。一定のパターンが決まると、艦にもデバイス使いにも余裕が生まれてきた。


(よし)


 楽になってきたのは、葵も同じだ。淡々と口を動かしつつ、少し余計なことを思い出す。


『面白味がない』

『そんなことができて、一体何になるんだ?』

『これからは情報はいくらでも検索できる。計算力なんて役に立たない』


 部屋の隅っこで資料を読み漁り計算式を重ねる葵に対して、口さがない大人や先輩たちはよくこう言っていた。


(お前ら全員、首の骨折って死ね)


 言い返す時間がもったいないので、葵は心の中で呪いの言葉を吐きまくってうさ晴らしをした。


(戦場に行って機械が使えなくなったら、誰かに譲ってもらうつもりか)


 そんなことをしていては間に合わない。全ての情報を頭に入れて噛み砕いた状態、かつ対応策を限界まで用意してはじめて、不測の事態に対応できるのだ。


 誰にも認められない。

 誉められもしない。


 それでも続けてきたことが、今になってようやく生きてきた。


(どうだ、役に立ったぞ)


 まだ顔を覚えている大人たちに向かって、葵はうそぶく。


(ざまあみろ)


 進行していく砲撃。それは徐々に、敵の戦力をはぎ取っていく。その様子を見たアメリカの士官がつぶやくのが聞こえた。


「たった十八の子供がこれをやったのか。いい土産話になるな」


 その近くにいた男が、笑いながら答える。


「嘘つきだと言われるぞ」


 するとはじめの士官が言った。


「いいさ。何が正しいかは、俺が知っている」



☆☆☆



「……敵発見せず」

「僕も同じだよ。思ってたより、数が少ないね」


 狙撃能力を持たないデバイス使いたちは、各艦の護衛を命じられていた。今のところ所定の位置からずれることもなく、リアムたちは事前に通告されたルートを巡回している。


 しかし、二人とも全く気が抜けない。本来三人組でユニットを形成するのに、一人が怪我で離脱してしまったからだ。


「増員がないのはこたえるな」

「国内でかなり人手が必要みたいだからね……仕方ないよ」

「今はまだいい。これが続けば、離脱者は一人や二人じゃ済まんぞ」

「確かにね」

「日本の方がデバイス使いが多いっていうじゃないか。助っ人は頼めないのか」


 タイロンの話を聞いて、リアムは手をうった。


「今はあっちも大変だろうけど、その仕組みはいいね。上官に提案してみたら」

「そうするか。ただ、日本側にいる『仮面の男』がうんと言うかだな」

「誰、それ」


 リアムが聞くと、タイロンは目を見開いた。


「知らんのか。合同練習にいたと親父が言ってたが」

「演習……?」


 正直ずっとかなめの側にくっついていたので、会った人間の数は限られている。


 それでもそんな重要人物なら、一度は顔を合わせているはずなのだが──。


「あ」


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