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あやかし殺しの三千院家  作者: 刀綱一實
故郷のための栄光
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囚われの女たち

「カメラ」


 携帯モニターに映像が転送される。妖怪たちは、なぜか室内で円陣を組んでいた。


「くっそー、楽しそうにしやがってぇ」


 塔子とうこがつぶやく。確かに彼らは段ボールを小脇にかかえ、特殊な言葉を交わし合っていた。


「それにしても、油断しすぎちゃうか」


 みかげは妖怪たちの姿に違和感を抱いた。何せ、まだ彼らは目標を達成していないのである。気を抜くには、ちょっと早すぎると思う。


「だが、好機かもしれん」

「行きましょう行きましょう」

「うーん……」


 塔子は乗り気だ、だが、本当に好機なのか。みかげは迷った。


(うーん、怪しい。でも妖怪の考えてることなんて、推測できへんしなあ……)


 思考の末、みかげは攻めてみることにした。決めてしまったからには、早く片付けよう。


「塔子ちゃん、合図したら一気に降りるで」

「あいさー」


 有事に利用することを想定しているビルのため、換気ダクトは大人一人通れるくらいの大きさになっている。そこから二人で落下し、相手が気付く前に殲滅するという手はずにした。


 壁のボタンを押すと、ダクトの蓋が音もなく開く。みかげは深呼吸してから、その中に身を躍らせた。


 視界が暗くなる。それはほんの数秒ほどで終わり、みかげは無事にフロアに立った。


「えっ」


 だが次の瞬間、みかげの口から声が漏れる。今までいたはずの妖怪たちが、きれいに消えているのだ。


(体が回った感覚はないのに……どういうこと!?)


 みかげは迷った。しかし闇雲に技を繰り出すよりも、まず自分の安全が最優先という本能が働く。


「アヌビス!」


 白布がみかげの全身を覆った。それとほぼ同時に、強烈な打撃がやってくる。


「ぐっ」


 体を丸めていたので、急所には当たらなかった。しかし、重い一撃がみかげの脳天を揺さぶる。


 周りからざわめきが聞こえる。やはり妖怪たちは、この部屋から消えたわけではなかったのだ。


(でも、どこに!?)


 みかげは必死に考える。しかし、敵は思考が終わるまで待ってなどくれない。


「うわっ!」


 アヌビスの布越しではあるが、左腕をつかまれ持ち上げられる。


 敵が一歩踏み出すのがわかった。流れるような動きで、みかげの体が後ろに放り投げられる。あっ、と思った時にはもう遅い。頭からコンクリートに叩きつけられ、目の前に火花が散った。


 衝撃で布が外れ、ぼんやり外が見えてくる。にやにやと怪しい笑いを浮かべた高入道たちが、みかげに向かって近づいてくるのがわかった。


「先輩!」

「危ない!」


 塔子が倒れたみかげに気をとられた。今は自分のことより、敵を減らすことに集中して──。


 みかげはそう言いたかったが、痛みのために口がまともに動かない。うめくみかげの前で、何か小さな物が塔子に突進していった。


「ぎゃあああ!!」


 塔子がうろたえる。彼女を襲ったのは、人間の頭部だった。首から下は、ごっそりこそげたように何もない。


 飛頭蛮ひとうばんか、踊り首か。いずれにせよ、彼らは歯をむき出しにして塔子に襲いかかった。


「くそっ」


 塔子もようやく気を取り直し、デバイスを起動させる。しかし、地を這う水は自由に空を舞う妖怪たちには届かない。


 戸惑う塔子を見て、生首たちがけけけっと笑う。彼らが遠ざかると同時に、高入道たちがやってきた。


 高入道はものも言わずに、塔子の肘をつかみ前方に押す。彼女が前のめりになったところで、腰のところを抱え込んだ。


「うわっ」


 塔子の足が上がる。それを高入道がつまみ、そのまま前方へ放り投げた。塔子はみかげと同じように、頭から落下する。


 めしゃっ、と嫌な音がした。うまく受け身がとれていればいいけど、とみかげはぼんやり思う。


 デバイス使いが動かなくなったのを確認すると、妖怪たちが騒がしくなる。


(有利になった時になにしとんや、こいつら?)


 みかげの手足はまだ思うようにならない。仕方がないので、聞こえてくる会話に全神経を集中させた。


「ひひ……女だ」

「誰が腸をもらう?」

「わしは足がいい」

(げっ)


 どうやら二人とも若い女だと分かったので、その場で食ってしまうつもりらしい。今までのデバイス使いたちが放置されたのは、単におじさんばかりだったからか。


(ひいい……)


 生きたまま食われるのは勘弁、とみかげは冷や汗をかく。塔子は倒れたまま、まだ動き出せていない。


「儂が」

「いや私が」


 そんな人間たちの思いも知らず、妖怪たちは分け前を争って喧嘩を始めた。


 そして今にもつかみ合いが始まりそうになった時。不意に声が聞こえてきた。


「お前さんたち、さっきから聞いていればくだらないことをくちゃくちゃと。この女どもはあっしらがもらうに決まってんだろ」


 姿を見せたのは、奇妙な姿の妖怪だった。蛇のように細長い体をしているが、頭の部分は横に広がっていて、ちょうどアルファベットのTのような形だ。


 はっきり言って、とても強そうには見えない。しかし彼らは自信たっぷりだった。


「ほらほら、散った散った」

「お前にそこまで言われる筋合いはねえ」


 ついにたまりかねたのか、生首たちが正面からかみつく。しかし、蛇たちはいっそう反り返った。


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