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あやかし殺しの三千院家  作者: 刀綱一實
呪いと祝福の霊都
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高見の見物、これぞ悦楽

 疾風はやては、初太刀で二人を切り捨てる。やはり支援部隊、一人一人はそう強くない。


「わああああ!!」


 疾風を見た、やせっぽちの衛生兵が悲鳴をあげた。よせばいいのに、彼は手近にあった椅子を振りかぶる。衛生兵の腹がガラ空きになった。


「バカかてめえは」


 自分のことはとりあえず棚にあげて、疾風が刀を真横に振った。衛生兵の腹から血が吹き出す。


 出血は派手だが、これだけでは痛いばかりでなかなか死なない。疾風はもう一度刀を振るい、男の首を胴から切り離した。


 首を落とされたあと、どのくらいの間、目の前の相手が見えているのか。疾風はいつも気になるのだが、聞いてみたい相手はいつも死んでいる。


 結局今日も答えの出ない疑問を抱えながら、疾風は斬って斬って斬りまくった。


 ようやく敵が全滅し、悲鳴も怒号も聞こえなくなった。疾風は肩の力を抜く。周りの天狗たちも、生き残りがいないのを確認すると、めいめい好きなように体を動かしている。


「後は、本隊か」


 疾風はぽつりとつぶやいた。ただ、どのように料理するのかは聞いていない。長に聞いても、知らないと言われた。


「上空にいれば面白いものが見られる、とあの斧の小僧が言っておりましたが。とにかく、我らは一度戻りましょう」

「ああ」


 死体の山に向かって、一礼してから長が羽ばたく。疾風たちもそれにならってから、戦場を後にした。



☆☆☆



 ふじの後方支援部隊など、はなからあてにしていない。上田は、独自の調査部隊をこっそり戦場に放っていた。戦場では情報の有無が生死を分ける、これが常識だ。


 上田はじっと、直属の部下から入ってくる戦況報告を聞いていた。今のところ、自分が思った通りの展開になっている。


 相手が二重の堀を作り、侵入を制限されたところに詰め込まれた戦車隊、歩兵隊。その七割が失われた。これでは、もはや山に突入するなどできない。


 やはり、妖怪側は相当賢い。その上、きちんと準備をした上でこの場に臨んでいる。最初に彼らに接した時点で上田はそう感じていたが、やはり間違いではなかったようだ。


「次は、どうなるでしょうね」


 上田の傍らの部下が、薄笑いを浮かべながら聞いてきた。


「お前さんならどないする」

「私なら、次に通信・補給・衛生の中隊を狙いますね。重要な役目の割に大部隊でもなく、本人たちの戦闘能力はそう高くない。狙うにはうってつけです」

「言うなあ。賭けるか」

「何をいただけるんですか?」


 冗談を言いながら、二人で顔を合わせたところで、また伝令が来た。


「支援中隊三つ、連絡が途絶えました。その影響で情報が錯綜し、師団はバラバラに動き始めています」


 それを聞いた部下が、口の端をつり上げた。


「ほらね」


 抜け目ない部下は、手の平をこちらに向ける。しかし、上田はそしらぬ顔で言った。


「まだ何を賭けるかまで決めてへんかったし、不成立にせんか」

「……相変わらずずるい御方ですね」

「何とでも言え」

「では、次こそは。戦場の映像はあるか」


 上田が聞くと、すぐにスクリーンが出てきた。天狗たちのはるか上空に、藤には無断で偵察機を飛ばしてある。その機体からとられた戦場の全景が、目の前に映し出される。


「藤の部隊だけが、次の手をうつようですね」

「当然や。もう虎松とらまつ五十谷いそやは手駒が残っとらん。通信を切られたら、意味の無い動きしかできへんて。初日でデバイス使いもほとんど死んだしな」

「おっと、噂をすれば。藤がようやく、虎の子を出してくるようですよ」


 部下の言う通りだった。うろうろと動き回る歩兵たちの上を、デバイス使いたちが飛んでいく。それだけ見れば、なかなか格好がいい光景だった。


「藤のデバイス部隊は、なんぼほどや」

「千を超えると」

「あの若造にしては、大健闘やな」

「まあ、多いのは数だけです」


 上田はわりと本気で褒めていたのだが、部下の方はにべもなく言った。


「大部分が、本部では二軍扱いのBクラスですから。ぬえと鞍馬の大天狗の前では、紙くず同然でしょう」


 さらに部下が辛辣なことを言う前に、敵が現れた。土の中から、手足の長い蜘蛛たちが一斉に這い出した。蜘蛛たちはかなりの巨体で、一体が五・六メートルほどの高さがある。それがひと塊になって突進していくさまは、まさに動く壁だった。


「ほう、こりゃ見物やな」

「歩兵たちを食った土蜘蛛たちより、さらに大きな個体ですね。最後の戦いのために残していたのでしょう」

「手際がええな」

「全く。妖怪でなければ、こちらに欲しいくらいですよ」

「……さて、人間側はどう反応するか。仮にも精鋭の名を持つ部隊や、少しは健闘してくれんと」


 上田がそう言うと同時に、デバイス部隊が急浮上した。土蜘蛛たちの上をとるつもりだろう。


「ま、妥当なとこやな」

「あのまま土蜘蛛を吹き飛ばせるほど、強い使い手はいませんからね。ただ、妥当すぎてつまらない」


 部下が目を細めていると、土蜘蛛たちの顔が急に真っ赤に染まった。始まるな、と上田はつぶやく。


 次の瞬間、大量の白い糸が、デバイス使いたちに向かってまき散らされた。相手の牙や手足にしか注目していなかった大多数が、あっという間に身動きが取れなくなる。


「おお」


 あまりに鮮やかに決まった攻撃を見て、上田は思わず膝を打った。


 デバイスたちが自分の武器を起動させ、糸を切ろうとする。しかしかなり頑丈な糸らしく、Bクラスのデバイスが当たった程度ではびくともしない。捕まった仲間を助けようとして、わずかな生き残りがうろうろしている。しかし、いかんせん残っているのが少なすぎてどうにもならなかった。

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