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あやかし殺しの三千院家  作者: 刀綱一實
いつも心に英雄を
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アメリカン・ソウルフード

「偵察隊は!?」

「五班、六班がまだ未帰還、即時撤退させます」


 あっと言う間に日は昇り、じりじりとまた気温が上がっていく。士官たちの顔から、一斉に汗が噴き出した。中将は舌打ちをする。


「原因も分からない病人が山ほどいると言うのに、この気温とは……」

「ええ、健康な人間でも倒れる砂漠の中で、この状況はまずい。医療車が早く到着しないと」

「さっき夜になったのは無防備な兵士に病気をうつすためか……我々の隙を狙っていたのですね。これでは二回目の夜が来たとしても、うかつに休憩はとれない」


 陸将が困り切った顔で言う。


「なんてこった。無線は」

「一度通信に成功しましたが、今はノイズがひどくて使い物になりません」

「仕方ない。とにかくこちらから情報を発信し続けよう」

「水の使用方法も、見直しだな……」


 対応に追われる中将の顔が曇る。百戦錬磨の彼でさえ、これだけ時間がたっても状況の変化が読めないままだった。




☆☆☆




 駐屯地へ続く脇道にそれてはどうか、と部下から提言があった。しかし、大型トラックが大半の輸送隊を引き連れているあおいたちは大きな道を通らないと、あっという間にどん詰まってしまう。部下の意見を却下し、予定通り大きな国道を通るよう葵は指示した。


「駐屯地からかすかな無線の痕跡あり」


葵が話し終わるやいなや、唐突にひびきがぼそりと言った。


「情報は」

「ノイズだらけ。敵が邪魔してる」


 葵の横で、それを聞いたたけるが腕を組んだ。


「それとも単純に機械の調子が悪いかだな」

「あるいはその両方か。響姉、ノイズの除去はできるか」

「日本版ならすぐなんだけど、これアメリカの機械」


 時間がかかる上にめんどくさいらしい。響の声が嫌そうになっている。しかし、やってもらわないことには始まらないのだ。葵は餌を投げた。


「では高速回線とハードディスクをやる」

「もう持ってる」

「……ちょっと軍のパソコンいじらせてやるから」

「日本はもうやった。アメリカ側のやつなら」

「要交渉」

「ふん」


 確定はできなかったが、とりあえず響は少しやる気になったらしい。キーを叩く規則正しい音が聞こえてきた。


「もうすぐ増援と合流だ」


 すばるが言う。少し期待をこめて葵が聞いた。


「何が来る」

「救援テントと医療スタッフ、緊急用テント、あとアイスクリームカー」

「最後のいるか?」


 葵が顔をしかめたが、昴は厳しい表情のまま真面目にうなずく。


「アメリカ人はアイスクリームがないと暴れる」

「いろんなところから怒られるぞ親父」

「いやこれは本当に。あとコーラとピザを封じれば死ぬ」

「息子相手だと思って適当言いやがって」


 葵はふんと鼻を鳴らしてカメラを見た。横の道路から、ずらりとトラックが並ぶ。明らかに小さいトラックが三台併走している。あれがアイスクリーム車だろう。ご丁寧に扉に山盛りアイスのイラストが書いてある。


「本当にあれ連れていくのか……」


 危険なのではと思ったが、兵站輸送に関しては昴の方が専門家だ。それに、固形食料以外のご褒美があると士気が上がるのも事実。結局葵が折れた。新しく加わった車を組み入れて隊列を直し、一行は再び富士演習地を目指す。


「前方に敵集団確認」

「了解。機銃を打ち込んで数を減らしておけ。デバイス部隊はチームで移動、斉射後に残った敵を片付けろ」


 道すがら、ちょくちょく通信が入る。葵の指示で、ヘリコプターが散開していった。幸いあまり手こずることはなかった。一行がほっと息をついたところで、響が葵の背中をつついてくる。


「通信、できるだけノイズ減らしてみた」

「早いな」


 もう解析を終えたのか、と葵はつぶやいた。腐っても天才、響は仕事に関しては本当に抜かりがない。間もなく、無線データの再生が始まった。


「……救援を……求む……」


 処理後もノイズは残っていたが、中将の声だということはわかった。葵と昴は必死に耳をそばだてる。



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