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朝起きて

 翌日。朝早く起きて、早速騒ぎ出す翔太。

「お姉ちゃん、あぁさぁ。あさだぁ!」

 隣で寝ている涼子を揺すって起こす。

「なぁにぃ……翔くん……」

 寝ぼけたままの涼子に、翔太は「あさ!」と言った。

「そうだね、朝だね……」

 涼子は少し眠たかった。昨晩は布団の上で翔太とはしゃぎまわった挙句、やってきた真知子に「もう遅いんだから寝なさい!」と怒られた。それで眠ることになったが、体を動かして少し疲れたのか、ぐっすり眠れたのだ。その分涼子はまだ寝足りないようで、あくびが出ている。

 翔太は早くに起きて、元気いっぱいである。涼子の次は両親を起こすべく、真知子と敏行の布団を揺さぶった。敏行は少々揺さぶられたくらいではビクともしていないようだが、真知子はどうやら目を覚ましたようだ。

「うぅぅん……こら、翔くんどうしたの?」

 真知子は、もそもそと眠そうな目をこすりながら、自分の寝ている布団にしがみついてる翔太に言った。

「あぁさだょ。おかあさぁん、あさぁ!」

「ちょっと、やめなさい。翔太、わかったから、じっとしてなさい」

 まだ他人のことなど微塵も考えない翔太は、母の言うことなどお構いなしだ。真知子も眠い目をこすりながら、ゆっくりと体を起こした。

「翔くん、元気ねえ」

 そう言って起きてきたのは友里恵である。友里恵は翔太に起こされる前に起きたようだ。

「やっぱりさあ、お子ちゃまは朝からはしゃぎ放題ね。わたしなんてもう、眠くて……」

 友里恵は、自分が年上のお姉さんで、まだ眠いということをアピールしたい風だった。どうしてそう思うのか意味がわからなかったが、翔太が朝早かったから、子供は朝が早いと思ったのかもしれない。もしかしたら友里恵の弟も、早起きする子だったりして、そう思ったのかもしれない。

 ちなみに翔太が早起きしたのは今日がたまたまで、普段は別に早くない。


「こら、翔くん。いただきます、は?」

 真知子は配膳された朝食を、早速食べようとする翔太をたしなめた。真知子は躾にうるさい母親だ。涼子はその辺りはちゃんと意識してやっているので、母から叱られることは少ないが、わがままな上にやんちゃな翔太は頻繁に叱られている。

「いただきまぁす」

 渋々言うと、すぐさま食べ始める翔太。祖父母の家の朝食が普段どうなのかは知らないが、今日は白いご飯と目玉焼きとハムだった。味噌汁もある。意外と豪勢だ。涼子は目玉焼きは大好きだが、翔太はそこまで好きではないようで、食べようとしない。ハムは好きなので、すぐにハムだけ食べて目玉焼きは食べない。しかもこの目玉焼きは半熟で、翔太は中がドロリとした半熟卵料理が大嫌いなのだ。真知子はそれをよく知っているからいつも完熟で作るが、祖母はそれを知らなかったか、忘れていたのだろう。

「翔くん、目玉焼き食べなよ」

 涼子が言うと、翔太はさも嫌そうな顔をした。

「だってぇ……お姉ちゃんにあげる」

「私はいらないよ。もうお腹いっぱいだもん。翔くん、早く食べなよ。ほらほら」

 涼子は、目玉焼きを乗せた皿を持ち上げて、翔太の口に近づけた。

「もうっ、お姉ちゃんのばかぁ! いやぁ!」

 翔太は半泣きで皿を押しのけようとする。涼子はニヤニヤしながらさらに近づける。

「こら、涼子。いじめちゃいかんだろ」

 テーブルの反対側で味噌汁を啜っていた敏行が涼子を咎めた。

「はぁい。翔くん、好き嫌い多いねえ。うふふ!」

 涼子は、翔太をからかった。そう言う涼子も割と好き嫌いが多いが、そんなことは棚に上げている。

「あなたたち、仲がいいわねえ。私、秀くんとそんなに仲良いわけじゃないけど」

 涼子と翔太のじゃれあいをみて苦笑している。友里恵と秀彦の場合は友里恵がお姉さんぶっていることと、少し歳が離れているのもあると思われる。

「ゆりちゃんは、きちんと秀くんの面倒見てあげてるじゃないか。立派なもんだ。やっぱりお姉ちゃんだよ。涼子なんて、すぐ翔太をからかうんだからなあ」

 敏行は涼子を一瞥すると、友里恵を褒めた。

「そ、そうかなあ。えへへ、わたしお姉さんかしら」

 褒められて少し赤面しながらも、嬉しそうである。

「翔くん、別のを作ってあげたから、それは私にちょうだい」

 真知子が台所から完熟目玉焼きを皿に乗せて持ってきた。翔太はそれを受け取ると、黄身の部分を丹念にチェックし、今度は完熟だと判断すると、少しおかしい箸の持ち方で、目玉焼きを持ち上げて食べ始めた。うまく持てなかったせいか、もう片方の手で目玉焼きを持とうとして、真知子に怒られた。

「こら、ちゃんとお箸で食べなさい。手で持ったりしたらだめ」

「ええぇ、でもぉ」

「ほら、こうやって持つのよ。そうじゃないでしょ、こうよ、こう」

 それから少しの間、翔太に対する真知子の箸の使い方講座が開かれた。気がつくと敏行は、朝食を終えて応接間でテレビを見ていた。



「ねえ、ちょっと遊びに行きましょ」

 友里恵は涼子に近辺に遊びに行くことを提案した。

「うん」

 涼子が友里恵についていこうとすると、祖父に遊んでもらっていた翔太が「しょうくんもいく!」と言ってついてきた。

「じゃあ、みんなで行こうかしら」

 友里恵はそう言って玄関に向かおうとした。それを見た真知子は「どこへ行くの?」と言った。

「外で遊ぼうと思うの」

 友里恵がそういうと、「外に行くなら、おじいちゃんが連れってやろう」と祖父が言って、祖父も一緒についてくることになった。

「気をつけて行くのよ」

「はぁい」

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