表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒頭巾 おとぎの国の暗殺者  作者: 稲葉孝太郎
第1章 革命の国のアリス
3/4

Tale3 影喰い

 中央広場は盛況だった。

 陽もかたむき、長い影を持つ冒険者たちであふれかえっていた。

 その群れのなかに、ひときわ豪華な装備の女がいた。赤い竜騎兵の衣装。つばの広い帽子に白い羽飾りが映えていた。一目で特注だとわかるアバターだった。凛とした目鼻立ち。腰まであるブロンドの髪。最近流行りの乱雑なサイドヘアーが、夕風にゆれていた。

 アリスだった。

 テールは彼女のまえに立ち、堂々とこう告げた。

「イルマさんから伝言だよ。酒場にいて、すこし遅くなるってさ」

 アリスは主人公然とした調子で、

「きみは何者だ?」

 とたずねた。

 テールは、

「酒場でイルマさんに会ったんだ」

 と、とぼけた答えをかえした。

「何者だ、とたずねているのだが?」

「フェアリー・テール」

 アリスは、ととのった眉をもちあげた。

「おとぎ話……か。変わった名前だ」

「きみたちも変わってるね。エンテレケイアは、完全な現実を意味するギリシャ語だ」

 テールのかえしに、アリスはオヤっという顔をみせた。

「ずいぶんと学があるな」

「なぜそのチーム名に?」

「社会で成功する秘訣は、現実を直視することだろう」

 テールは笑わなかった。

 むしろしたたかだな、とさえ思った。

「この街の住人か?」

「今回のクエスト参加者さ」

「フェアリー・テールという名前は、聞いたことがない」

「それは無名の冒険者に対する、トッププレイヤーのあてつけかい?」

 アリスはこの返答に怒らなかった。

 上位者の余裕なのだろうか、彼女は仲間の男へ顔をむけた。

「ウォーガン、イルマはまた酒場らしいぞ」

 ウォーガンと呼ばれた男は、精悍せいかんな武闘派キャラだった。右目に眼帯をして、銀色の髪を短く刈っていた。顔立ちはやや老けていたものの、かえって歴戦の勇者をおもわせた。左のほほに傷があった。アバターの作り物なのか、それとも実戦のダメージを記念に残したものなのかまでは、判然としなかった。

 テールはこの男を知っていた。アリスのチームメイトで、肉弾戦の担当だった。彼は巨大なハンマーの手入れをしながら、

「あいつの酒ぐせは、サーバのリニューアルで治せないのか」

 と返した。

 アリスは腰に手をあてて笑った。

「電脳治療というやつか……おい、フェアリー……いや、テールのほうがいいか? どちらがファミリーネームのつもりだ?」

「どちらでも。ただ、テールと呼ぶひとのほうが多いかな」

「テール、きみのチームはどこだ? ひとりということはあるまい?」

 テールはおおげさに肩をすくめてみせた。

「オシリスっていうチームに悪さをされて、全滅しちゃった」

 テールはアリスの人脈に賭けた。

 この賭けは成功した。

「そうか、あいつらは手グセが悪かったからな……ちょうどいい。イルマが帰ってくるまで、野営の手伝いをしてくれ。多少のこづかいは出す」

 日が沈むにつれて、冒険者たちは続々と、街に流れこんできた。

 住人のいない建物を、好きなように占拠していく。

 彼らはみな中央広場に立ち寄って、アリスにあいさつをした。

「アリス、今回もよろしく頼むぜ」

「アリス、すこしは俺たちにも見せ場をくれよな」

「アリス、このクエストが終わったら、俺は引退することにしたよ」

 すべては彼女を中心にまわっていた。なんの相談もなく、リーダーは彼女だった。チームの配置を決め、アイテムを分配し、ときにはケンカも仲裁した。街が夕焼けに染まるころ、彼女の衣服はその赤にとけて、白い肌をかがやかせていた。

 テールは雑用にこき使われた。そのすべてを忠実にこなす。最後のおつかいから帰ってきたとき、市壁のむこうの残照も、いよいよ消えかかってきた。テールは中央広場にのこり、夕餉ゆうげの時間をすごす。

 トップグループのチームは市庁舎に、それ以外のチームは民家に入った。ごく少数の冒険者たちは、野営をわりあてられた。アリスの人選はみごとだった。野営には、ランキングの低いチームか、社交が好きでない志願者が選ばれた。

 テールも野営組にまわされた。信用されていないな、と思った。

 アラビア風の衣装をまとった男が、よつんばいになって、ふぅふぅと種火を吹いていた。

「チェッ、せっかくの記念クエストが、屋外で炊事すいじとはな」

 男は舌打ちをしながら、もういちど種火を吹いた。

 夕食は簡素だった。だれかが持ってきた携帯用のパッケージをわけあって、それを食した。焚き火を数人で囲む。それが広場に点々とひろがっていた。

 市庁舎の窓からもれる明かりは、そこに別世界があることを物語っていた。さかずきをみかわす人影が、ちらほらとみえた。市庁舎の大時計が、じっと広場をみおろしていた。

 テールの焚き火には、ウォーガンも同席していた。パーティーは好きじゃない──それが彼の言い分だった。しかしその場のメンバーは、彼を監視役とみなしていた。

 炊事係だったアラビア風の男が、ふいにウォーガンの肩をつかんだ。すこし酔っているようだった。ウォーガンは眉ひとつ動かさなかった。

「ウォーガンのだんな、一杯やりませんか?」

「遠慮しておこう」

「へへ、あんたの腕まえなら、多少酔ってても問題ないですよ」

 男は銀杯に酒をそそいだ。どちらも民家から盗んできたものだった。

 男はさかずきを手渡そうとした。ウォーガンは受けとらなかった。

「だんな、そうケチケチせずに。ガキのパーティーじゃないんですぜ」

「VRMMOをプレイしている時点で、俺たちはガキみたいなもんだ」

 男はおもしろくなさそうな顔をした。酒はじぶんで飲み干した。

 となりに座っていた女の魔法使いが笑った。

 それがまたおもしろくなかったのか、男はふてくされて二杯目をついだ。

 そんな光景をしりめに、ウォーガンはテールに話しかけてきた。

「さっきは名前を聞きのがしてしまった。俺はウォーガンだ。きみは?」

「フェアリー・テール」

 ウォーガンは、

「おとぎ話か……それもいい」

 とつぶやいた。

 炎がゆれる。ウォーガンの黒い眼帯さえも、うっすらと赤みをおびた。

 彼は、ゆっくりと語り始めた。

「ひとつ、俺の好きなおとぎ話をしてやろう。むかしむかし、カンブリアという名のテストサーバがあった。あらゆるVRMMOの元祖だ。そのサーバには、おとぎの国という小さな記憶領域があった。そこにひとりのプログラマーがいた。テスターだった彼……あるいは彼女は、転送事故で人格が固着し、二度と現実世界へもどれなくなってしまった。いまでは肉体をもたないゴーストとなって、暗殺者ごっこをしているそうだ。そいつの名は……」

 ウォーガンはその場の視線を一身にあつめたまま、しばし間をおいた。

「黒頭巾という」

 炎がゆれる。すこしずつかたちを変えて。

 神妙になった女の魔法使いは、キセルをふかした。

 妖艶なポーズで、じぶんの語りを始めた。

「あたいが聞いた話は、ちょいとばかりちがうね。黒頭巾はAIなんだよ。だれが開発したのかはわからない。けど、自我を持っちまったのさ。もともと保管されていたサーバを抜け出して、あちこちのVRMMOをさまよってるってうわさだよ」

 対面の若い狩人が口をはさむ。

「どっちも非現実的だな。俺が聞いた話によれば、黒頭巾は大国の電脳スパイで、VRMMOの諜報活動をしてるんだ。いかにもありそうだろ。今の電脳世界は、やりたい放題だからな。政府に都合の悪い連中を、黒頭巾はこっそりと始末しているのさ」

 ふと背後で、小枝の折れる音がした。

 冒険者たちは身をすくめ、そちらをふりかえった。

 一匹の黒猫が、さっと闇夜に消えた。

 ウォーガンが身じろぎもしなかったことに、テールは気づいていた。

 そしてウォーガンもまた、テールの観察に気づいているようだった。

 手強いな、とテールは思った。ウォーガンには隙がなかった。

 酔っぱらったアラビア風の男は、急に立ちあがった。闇に石を投げる。

「チェッ、おどかすな」

 魔法使いが注意する。

「ビビりすぎよ」

「ビビってなんかねぇよ……だけどな、影喰いがどういうモンスターか、俺たちは知らされてないんだ。猫のかたちをしてたらヤバいだろうが」

 魔法使いは、もういちどキセルをふかした。

 男は気がおさまらないらしく、酒瓶をラッパ飲みした。

 口もとをぬぐう。なにやら言いかけたかと思うと、急に瓶を落とした。

 魔法使いの顔に、液体がふりかかった。

「ちょっと、なにやって……」

 テールとウォーガンが動いたのは、ほぼ同時だった。

 男は首から血を吹き、地面にたおれた。

 魔法使いは、液体の正体が血しぶきだと気づき、悲鳴をあげた。

 しかし彼女を気づかう者など、この場にはいなかった。

 焚き火の炎が、異形の怪物を照らしていた。おとなの背丈ほどもある、植物型のモンスターだった。黒い薔薇の頭部。その花弁の奥には、獲物を丸呑みにするための穴がみえた。紫水晶をコアにして、からみあったいばらがボディをかたちづくっていた。そこから伸びた四本の太い枝が、手足の代わりになっていた。どの枝にもナイフのようなトゲがあり、その一本には血がついていた。

 怪物は死体のそばで、ゆらゆらとゆれていた。

「影喰いだ!」

 だれかがさけんだ。若い狩人は弓をひく。

 影喰いの右腕がしなって、弦を切断した。返す刀で狩人ののどを掻っ切った。

 数人の魔法使いがかけつけ、一斉に炎をはなった。

 いばらと花弁が燃えあがる。

 植物型モンスターに対する、経験者たちのとっさの行動だった。

 影喰いは薔薇の花弁をひらき、おぞましい大口をあけた。

 周囲の闇が、奇妙にゆがんだ。

「や、闇を喰ってるぞ!」

 そうさけんだ男の魔法使いは、首をはねられた。

 影喰いのからだから炎が消えていく。あたりはパニックになった。

 やみくもに矢と魔法がとびかい、そのいくつかは影喰いに命中した。

 しかし効果はなかった。はずれた攻撃で、相打ちになる冒険者もいた。

 市庁舎からアリスが飛び出してきた。

 広場にむかって号令をかける。

「ひとまず散開しろ!」

 冒険者たちは散り散りになった。

 影喰いはそのなかから、不幸な犠牲者をえらんでいく。

 悲鳴、罵声、喧騒。

 テールとウォーガンは、ひと足早く広場を離脱していた。路地を駆けぬける。

 左右の家屋から、明かりがもれていた。それが足もとを照らしてくれた。

 ウォーガンは屈強な走りをみせながら、うしろを確認した。

「闇を吸収してエネルギーにするタイプだな」

 テールもおなじ意見だった。

「回復液のなかで戦うようなものだね。アリスには勝算があるの?」

 テールの質問に、ウォーガンは反応しなかった。

 ひたすらに路地を突き進む。

 テールは、

「この道はどこに続いてる?」

 とたずねた。

「教会だ。そこにも広場がある」

「それがボクに対する罠ってわけかい?」

 ウォーガンは足をとめた。

 テールもぴたりととまる。

 ふたりのあいだには、わずか数歩の間合いができた。

「……なんの話だ?」

「この路地の住人たちは、そろいもそろって消灯を忘れたようだね」

 窓の明かりは、まるで誘導灯のように、街路の奥へと伸びていた。

 ウォーガンは、背中の大槌おおづちに手をかけた。

「あからさますぎたか……おまえがアリスの命をねらう殺し屋だな」

「それはだれから聞いたの?」

「答える義務はない」

「ぬれぎぬだって答えたら、信じるかい?」

 ウォーガンは大槌をかまえた。

 静寂──ものかげから黒猫がとびだした。

 それが合図となり、ふたりは交差した。

 ウォーガンがふりかざした大槌は、テールの立っていた場所を正確にぶちぬいた。

 石だたみがはじけとび、窓ガラスが衝撃でわれた。

「……?」

 ハンマーの跡だけがのこっていた。テールは消えていた。

 死体どころか、血痕すらなかった。

「ここだよ」

 頭上から声が聞こえた。ウォーガンは夜空をみあげた。

 月光を背に、テールは彼をみおろしていた。三階建ての屋根のうえだった。

「このサーバの設定で、そこまでは跳べないはず……補助魔法サポート型なのか?」

 テールは無言で飛び降りた。

 着地点の石だたみが、やわらかに波打った。

 トランポリンで跳ねるように、テールは空中曲芸を披露する。

「ア、アーキテクチャ干渉能力……まさか!」

 ウォーガンは唖然として、身をふるわせた。

 テールは固い地面に着地し、かるくタメ息をついた。

「おじけづいてくれた……ってわけじゃないようだね。武者ぶるいかな」

 ウォーガンは苦笑した。

「感動してる……三〇〇勝目のあいてが、黒頭巾とはな。ようやく本気で戦える」

「イカサマは戦績にカウントするものなのかい?」

 ウォーガンは口を閉じた。

 テールは闇をみつめながら、

「本気のゲームを始めよう」

 とつぶやいた。

 ウォーガンは大槌の柄で、地面をたたいた。

 ちらばっていた瓦礫がれきが、宙にうかぶ。不自然なうかびかただった。

 テールは地面に手をふれ、粘着床ボンドに変えた。からだを固定する。

 その刹那、瓦礫は猛スピードで、ウォーガンのほうに飛んだ。

 一個のガラス片が、テールの頭巾を切り裂いた。

「そのハンマー、重力金属グラビティだね」

「俺をただの物理系フュジックだと思ったなら、おおまちがいだ」

 テールは粘着床ボンドを解除した。銃をとりだす。

 ウォーガンは大槌を持ちあげて、ポンポンとじぶんの肩をたたいた。

「なるほど、飛び道具もあるのか。だが……」

 テールは引き金をひいた。

 銃声。それにつづいて、金属のぶつかりあう音がした。

 弾丸はハンマーに引きつけられ、磁石のようにくっついていた。

「どうやら俺とは、相性が悪いようだな」

 その瞬間、弾丸が爆発した。

 あたりに炎と煙が舞う。

 テールはその場で待機した。イヤな予感がしたからだ。

 そしてその予感はあたった。炎と煙は収縮し、ハンマーに吸い込まれていく。

 視界が晴れた。ウォーガンは衣服のそでで、鼻と口をおおっていた。

 彼はしばらく息をとめ、それから大きく呼吸した。

「ふぅ……魔弾か。毒でも効かせてあったんだろう。三段構えってわけだ」

「……」

「もう一段あるか? ……ないなら、俺の番だ!」

 ウォーガンは大槌を一回転させ、テールに襲いかかった。

 重力でテールのからだが浮く。

 ウォーガンの突進とハンマーの重力。加速度的に距離が縮まる。

「英雄は俺だ!」

 突然、近くの家屋がくずれた。

 壁を突き破り、巨大な触手がウォーガンのまえに伸びた。

 ウォーガンは間一髪のところでそれをよけ、大槌でつぶした。体液がとびちり、重力に吸収された。ちぎれた触手は、地面で気味の悪い音をたてた。それは薔薇の枝に似ていた。

 くずれた壁のむこうから、黒い花弁がのぞいた。

「か、影喰い!」

 ウォーガンはうしろに跳躍し、距離をとった。

 広場でみたときよりも、ふたまわり大きくなっていた。成長しているのだ。

 影喰いは花弁をひらき、闇を吸い始める。

 ウォーガンがつぶした触手は、すぐに再生した。

 三つどもえ──テールは態勢を立てなおし、フードのほこりをはらった。

「さっきの煙幕は、魔獣寄せのフェロモンだよ」

 ウォーガンはこの説明を無視した。

 視線を交互に走らせる。

 その仕草をみて、テールは銃をかまえなおした。

「そのようすだと、影喰いの弱点を知っているのはアリスだけかな……っと」

 回復した触手が、テールへ水平に斬りかかった。

 テールはそれを回避し、壁に貼りつく。

 スルスルと屋上へよじのぼった。粘着床ボンドの応用だった。

 テールは夜風に吹かれた。足もとでウォーガンがにらんでいた。

 うらめしそうなまなざしではなかった。どうやってこの場を切りぬけるのか、それを真剣に考えているようだった。

 いっぽう、テールも難題をかかえていた。

(依頼内容は、エンテレケイアのグランドスラム達成……ボクが影喰いを倒すわけには、いかないんだよね……かといって、ウォーガンをアリスと合流させるのもマズい……)

 テールの懸念は的中した。

 ウォーガンは影喰いと格闘しつつ、路地の奥へと移動し始めた。

 テールもあとを追う。屋根をスプリング床に変えて、建物から建物へと飛び移った。

 そのときウォーガンにむけて、何発か試し撃ちをしてみた。

 弾は重力に引きこまれ、すべて不発に終わった。

 ウォーガンは大槌を駆使して、影喰いの触手をつぶす。そのたびに闇を吸い込み、影喰いは大きく育っていった。攻撃範囲もひろがり、テールにも触手がとんだ。

 テールはウォーガンの作戦に気づいた。

(影喰いを巨大化させて、この場を混乱させる気か)

 怪獣映画のようなワンシーン。触手がうごめくごとに、家屋がくずれていった。

 薔薇の頭部から、うなり声も聞こえてきた。

 いよいよ十分とみたのか、ウォーガンの行動が変わった。

 影喰いをうまく利用して、テールの視界から消えたのだ。

 テールは、となりの建物に飛び移ろうとした。

 影喰いの触手がそれをさまたげた。

(このままだと見失うな……逆用させてもらおう)

 テールはフードのなかに手を入れ、右耳のイヤリングをはずした。

 親指で垂直にはじく。イヤリングはブーメランに変形した。

 テールはそれを左手でキャッチし、銃口を影喰いの触手にむけた。炸裂弾を撃ち込み、炎上させる。触手全体に火が回ったところで、テールはブーメランを投げた。それは弧をえがいて飛行し、燃えあがった触手の根元を斬った。

 かわいた音をたてて、触手が自重で折れた。

 テールは照準をおろす。影喰いの足もとから、ウォーガンが飛び出してきた。

 銃声。

 テールはもどってきたブーメランを、左手でキャッチした。

屋根から飛び降りる。火の粉が舞う幻想的な夜道を、テールは疾走した。

 ちいさな花屋のそばで、ウォーガンはあおむけに倒れていた。

 テールに顔をむけ、左目をひらいた。

「ど……どうして、当たるタイミングが……?」

「落下物をさけるには、重力をオフにするしかないからさ」

 ウォーガンは引きつった笑いをみせた。

「い、イカサマなしの戦績が〇勝一敗……とは……な……」

 ウォーガンは血をはき、そのまま絶息した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ