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神の怠惰な日常〜めんどくさがりの神が本気を出す時〜  作者: おまめあずき
第一章 私達の王位継承争いの始まり
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第七話 交渉の失敗


「―――……っこほっ……

すいません。それで、お話、というのは。」

エントランスから場所を変え、エンダー公爵家の館の一室で、イングザイディ様が聞いてきた。


目元にある、大きなくまに少し青白い顔。

化粧で隠しているようですが、私にもアマイラにも、バレバレですよ。

時折、咳もしていますし。

全く、このようなことになる前は、見目麗しいご令嬢たちに引っ張りだこだったのですが。

勉学、体術、剣術、人柄、家柄、容姿、全てにおいて優れた人物と言われていて、ついたあだ名が「白馬の貴公子」。

……夢見がちな貴族の令嬢がつけるにふさわしい名前と言えましょう。

話がそれましたね。

少し雑談をして、その自然な流れで交渉の話を取り入れる予定だったのですが、見透かされていたようですね。

「簡潔に申し上げてもよろしいでしょうか?」

すぐにアマイラが申しだてをします。

「ええ、もちろん。」

よし、了承を得られました。

これでアマイラの真っ直ぐさ、決断の速さも伝わるのではないでしょうか。

「では。

……私の派閥につく気はありませんか?

もちろん、相応の―――」

「申し訳ありません。お断りさせていただきます。」

これには、私も驚きを見せます。

と、いっても表情筋が死んでいるので、無表情にしか見えないでしょうが。

ここまで明確な切り返しをしてくるとは。

「申し訳ありません。不敬だとは存じ上げております。

ですが、我々はどうしても、アマイラ様や、他の方々。王位継承争いに、割って入ろうという気はないのです。」

こうなるとはわかっていました。

―――そしてアマイラが、これだけで諦めないことも。

「……そうですか。

ですが、一つだけお願いがあるのです。聞いてはいただけないでしょうか。」

……自身の派閥に入ってもらえずとも、自国の、北都の問題を解決しようとすることを。

「了承するかは、お願いの内容によりますが。

どうか、お聞かせ願えますか?」

……なにか、解決策につながるかもしれないと、エンダー公爵家側はこの「願い」を聞こうとすることを。

「どうか、エンダー公爵領に、とある商家の馬車を入れては、もらえないでしょうか。」

「商家の、馬車を……? ……っど、どうして……いえ。

その、商家の馬車を入れることによる、我々の見返りは。」

食いついた。

「北都への、支援機材の搬入ですね。

……私達からは、ほかは何も。

この国の一つの都が壊れるところは、見たくないもので。」

アマイラの、その返答に、イングザイディ様は驚きを隠せない表情で、こちらを見つめる。

が、やがて破顔し、すぐに顔を切り替える。

「その馬車は、いつ頃。」

乗り気になってくれているな。

……ここからは、私の出番だ。


「……今。今、ですわ。」


「……え。」


ここまでの流れは読んでいました。

なので、信頼を高めるためにも、用意をしておくのは当然でしょう?

……だから、アマイラ、あなたも驚いた顔はしないでちょうだい。

あなたが一応トップなのよ……?


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