第五話 エンダー公爵家への馬車の中で
「狩猟大会のお知らせ、ですか。
お姉様、よくこんなことに気づきましたわね…。」
ガタゴト、と少し揺れる馬車の中。
アマイラが、チェーンが渡して来た書類を見ながら、苦笑する。
ああ、もちろん自分たちの仕事はちゃんと、数週間後まで終わらせてきましたとも。
だから、私とアマイラ、二人の外出が許されているのですから。
ちなみに今は、エンダー公爵家への道中。
もう既に、エンダー公爵家への手回しも済んである。
公爵からの話では、ヘイダーはすでに公爵家を出て、狩猟大会へと向かっているらしい。
ヘイダーが帰ってくる前に交渉をあらかた終わらせてしまいましょうか。
と、頭ではそんな事を考えながら、アマイラの質問に答える。
「…いや、たまたまよ、たまたま。
チェーンが北都出身で、こういうことに詳しかっただけ。」
「チェーンは北都の出身だったのね。
そうだわ、到着するまで、北都の話を聞かせて下さいな、お姉様。」
「……ええ、構わないわ。道中暇だしね。
……おさらいすると、北都はこのフォレスト王国の中でも海に隣接している唯一の都。
海からの魔物の侵攻により、北の都市ならではの寒さへの備えに必要な物や、産物などのの両通が滞っている。」
「だから、そこの支援と引き換えに、支持を得る、と。」
そう、アマイラが私の言葉を引き継ぐが、言うと同時にアマイラは少し表情を曇らせる。
「……ごめんなさい。
嫌なやり方よね。」
「い、いえ。特には!
しょうがないのもわかっていますし。
中立の家を引き込むのがどれだけ難しいことなのかも、わかっていますから……。
むしろ、ありがとうございます、お姉さま。」
……よかった。笑ってくれた。
でも、無理をしているのはわかっている。どうにかしたいな。
と、そこで、御者台に座っていたチェーンが声を掛けてくる。
「……マーヴィリー殿下、アマイラ殿下、もうすぐエンダー公爵家へ着くかと。」
「わかったわ。」
「ありがとうございます。」
アマイラが礼儀正しく告げる。
はぁ〜。うちの妹が可愛い。
……私もヘイダーに言えないくらいのシスコンだな。
そんなふうに考えながら、馬車に揺られていた私なのであった。




