第四十二話 え。……………マジで?
イッカイ カイタモノガ スベテ ナクナッタ。
サクシャ ノ タイリョク ハ モウ ゼロ ダ。
……巫山戯てないできちんと書きました。はい。
すみません。
ぼんやりと意識が戻る。
まだふわふわとしている記憶をたどり、ゆっくりと覚醒していく。
瞼を、開く。
「ん、ん゛ん゛ん゛。」
何処か、喉に違和感を感じる。
何度か咳払いをしようとするが、疲れからかうまくできない。
体調もすこぶる悪い。
かなり無理をして力を放出したせいか、回路がずたずたになり、力を感じることさえできない。
回路というものは、魂に付属しているもののため、私がマーヴィリー・フォレストの身体に戻ったとて回路は戻らない。
日常生活に支障はないだろうが、確実に不便になる。
私はまずまず体力がほとんど無く、何時間も馬車に揺られるようなときは身体能力の強化をしてどうにかしのいできていたのだ。
……日常生活くらいはできる。
できるが、かなりまずい。
そして、未だ私はセイント・セージャーの身体の中にいるようだ。
…まぁ、そうだよな。
意識がないのに勝手に戻るわけもない。
マーヴィリー・フォレストとセイント・セージャーの身体は違う。
根本的な問題で、私が母体に宿る際、セイント・セージャーを受け入れることのできる妊婦で、なおかつぐーたら生活ができるような家はなかったのだ。
そのため、泣く泣く私はセイント・セージャーの身体とマーヴィリー・フォレストの体を分けた。
……………そのせいで面倒なことも起きているが、まぁ同一人物だとバレるよりかはマシだ。
「……あ、あ゛ー…。」
声を出すのもかなり疲れる。
………アレンジを呼んで寝たきり状態をどうにかしたいが、声が出せないのだからどうにもならない。
今力を無理に使おうとすると、未来永劫力が使えなくなる可能性がある。
………あ、元に戻ればいっか。
マーヴィリー・フォレストの体に戻ってしまおう。
よし、そうとなれば、神の権能でパスを繋げてっと。
ばいばい、セイント・セージャー。
――
―――
「……ん、ん………んん〜…」
パチっと目を開ける。
……ふぅ…。
やっと戻ってこれた。
長いことこの体として活動してきたからか、我が家に戻ってきた感じがする。
あ、体が痛くない。
私はゆっくり体を起こす。
寝たきりになっているから確実に筋力は衰えているな……。
「アレンジー。」
何もない部屋にそう呼びかけると、ダダダダッと走ってくる音がする。
あぁ、見えないけどどういう光景が広がっているのか想像できるわ…。
バンッと勢いよく扉を開け、アレンジが飛び込んでくる。
「我が主!! 起きられましたか……!」
感極まったように涙目になるアレンジ。
「そんなに?」
「主は、主は二週間も眠っておられたのですよ!?」
え。
「……………マジで?」
△▼△▼△
―――北都
「マーヴェリー殿下の意識が回復したと!?
…。そうですか、良かった…。」
イングザイディは、その報を聞いて、ほっと一息つく。
良かった…。
我が領地の回復に尽力してくださったあの方が、マリー様が意識を失ったと聞いて、身体が凍りつくような心地がした。
……良かった。本当に、良かった。
マリー殿下たちが来てからというもの、何故か体調が回復傾向になった。
今まではずっと悪化するばかりであったこの身体が、回復し始めたのだ。
正直、あの方々は幸福の女神かなにかなのかと思った。
創造神、オースティング・ガーバナー様。
我らが恩人の命を救ってくださったこと、感謝いたします。
久しぶりのイングザイディ様。
マリー様呼びですヨ。
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