第四十話 神の御子は、本気は出さない
「『見つべき者に あまねく言葉の導きを
我が名はオースティング・ガーバナー
全ての理を創りし者』!!」
私たちを中心として、四方八方に巨大な立体型の魔法陣が浮かび、ゆっくりと回る。
そして、その速度はどんどんと早くなっていき、淡い光が舞う。
「『今願おう 我が作りし理を さすべきものに使うことを』!」
一気に魔法陣が収縮し、一際強い光を放つ。
「『反転させし その理は 全を司るもの』!」
唇を噛みしめる。
痛い。
体中が痛い。
力が失われていく。
「『森羅万象』ッッ!」
最後の一節を唱い上げ、術式を開放する。
“アアアアああ゛あ゛あ゛!?!? う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!”
悪魔が絶叫する。
無茶苦茶に暴れるが、それすらも強固な鎖が許さない。
「あの子が、なんにもわがままを言わなかったあの子の、願いなのよ!!」
チカチカと、目の前が点滅する。
ずぐりと、体が鈍く痛み、何かが体の中で暴れだす。
強引に、術を発動させた代償が、来た。
―――イネッセ。
私の、妹。
わがままを言わなかった、言えなかったあの子の願い。
「叶えなければ!! 私は姉としてあの子に誇れないッ!!!!」
打算まみれだとしても、コレが私の本音だ。
「戻、って来なさいッッ!!!!」
ぐん、と一歩踏み込む。
徐々に、術式にほころびがでてくる。
それを力で無理やり抑え込み、力を注ぎ続ける。
“あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!! や゛だ、あ゛ッもどり、だぐな゛い゛、ぅ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!!”
それは正しく、絶叫。
少女の、心の叫び。
「ごめんなさいね!
これは完全に私のワガママよ!!」
けれど、彼女一つ、決定的な勘違いをしている。
わたしも、言い方を間違えたわね。
「貴方は、戻らなくて良い! 戻らなくていいわ!
私は!!
―――前に進めって言ってるのよ!!」




