第三十九話 王女は孤独な少女をを拾い上げる
更新が遅くなってしまい、申し訳ございません。
「……貴方は、辛かったの?」
彼女の記憶を読み取った私は、思わずそう問いかける。
「………」
少女は、答えない。
私は、生み出した鎖で檻を破壊する。
私を阻むものがなくなり、私は少女の前にしゃがみ込む。
「…………貴方の気持ちは、わからない。…なぜなら、私と貴方は…違うから。」
私は、そこまで言ってから、少女の棒切れのような身体を優しく抱きしめる。
「…私は、貴方にお願いがある。」
抱きしめられたことによって、少女がピクリと身体を震わすのがわかる。
「お願い………私に強力をしてほしいの。…私の妹の、力になってほしいの。あの子は……あの子の周りは………悪意あるものが、多すぎるから。」
母様やイネッセは、私の手の者たちが守ってくれている。
でも、アマイラは。
あの子は、王位継承者となるならば、自分で自分自身を守る力を手に入れなければならない。
「力になるかどうかは………貴方が決めれば良い。
…あの子が貴方を必要だと考えれば、あの子は動く。」
これは、私のエゴだし、まずまず強制する気はない。
この行動もかなりグレーゾーンに入りそうな行動ではあるけれど、この子をどうにか助け出させてもらうためだ、仕方がない。……と思いたい。
「貴方を……待っている人が、居るの。……だから、お願い。
……私に、貴方を助け出させて。」
イネッセが、あの子が、あんなに必死になっているところを初めてみた。
そんなあの子の願いを、私が、姉である私が叶えないなんて……駄目でしょ?
私は、抱きついていた腕をほどき、彼女の体を離す。
そして、正面から彼女を見る。
少女は、虚ろな瞳でこちらを見る。
「…少しだけ、ほんの少しだけ、抵抗するだけでいいの。……お願い。」
少女の瞳が、揺れる。
光が、舞う。
時間がなくなってきていることがわかる。
どんどんと、白い光に支配されていく視界の中で、
少女が、こくんと、うなずいたように見えた。
△▼△▼△
「……。」
私の意識は現実に引き戻され、目の前には異形と化した少女の姿が居る。
その瞳は閉じられていて、凶暴化していた禍々しい瘴気も、今はすっかり沈静化していた。
ぴくり、と少女の身体が痙攣する。
異形の少女の、瞳が開く。
その瞳は、すっかり元のものに戻っていて、それが他のもとに戻っていない部分とアンバランスなような気がした。
虚ろだった瞳は、もう無い。
そこには、光をたたえた意思のある、瞳があった。
「…ありがとう…。」
私は、あの少女が私のお願い事を聞いてくれたのだと感じ、そうこぼす。
瞬きをする。
そして、私は意識を切り替えると、口を開いた。




