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神の怠惰な日常〜めんどくさがりの神が本気を出す時〜  作者: おまめあずき
第二章 南都セーヴィンと第二王子ストライフ
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第三十八話 狐の獣人は過去を語り


私は、村で一番の猟師の父と、優しい、でも怒るとちょっぴり怖い母の間に生まれた。父と母は、どちらも(きつね)の獣人で、父は焦げ茶色の、母はきつね色の耳と尻尾を持っていました。

そんな二人の間に生まれた私は、母と同じきつね色の耳と尻尾を持ち、父と同じ髪の色を持っていました。


私達の村は、獣人や森人(エルフ)土人(ドワーフ)など、色々な種族の人達がいた。

種族が違う人ばかりだけど、みんな優しく、穏やかな人たちばかりで。

諍いや、殴り合いの喧嘩がほぼ起こったことがないほど平和な村だった。


ただ、私達亜人は迫害されている種族で、その平和も、続かないことが多かったのです。

一年に一回の周期である村ごとの移動。

それは、斥候に長けている妖精族(フェアリー)のみんなが教えてくれた、情報によるものでした。


『亜人は人神の敵である』。

教会の一部の信者たちが神の教えを捻じ曲げ、自分たちの都合のいいように作り出したこの一文のせいで、亜人は殺され、数を減らしていったのです。


小さい頃の私は、移動のたびに村の人たちが数人、いなくなっていっていることに、気づきませんでした。

そして、その村の人達が私達―――まだ小さい子供や、働き手である若い男衆を守るために、自ら進んで犠牲になっていったことも、知らなかったのです。


そして、平和な村に悲劇が訪れました。

人間の襲来です。


まず、人間は、斥候役として村を支えてきてくれていた妖精族(フェアリー)のみんなを皆殺しにし、村に情報が届かないようにしました。

妖精族のみんなは、村の外れに住んでいて、その時の妖精族(フェアリー)の長は気難しく、あまり他の亜人と関わり合おうとしませんでした。

唯一関わってくるときといえば、なにか必要な情報を伝えるときだけ。それも、数ヶ月に一回程度のものだったので、気づくのが遅れたのです。


そして、村の唯一の水源である、川の水をせき止めました。

水がなくなり、私達は水源が枯れてしまったのだと思っていました。何分、最近川の水量が減ってきていたのですから、そういう思い込みをしてしまっても仕方がなかったと思います。

村長の命令で、私の父を含む村の男衆が、新たな水源を確保しに森に向かいました。


…けれど、いつまで待っても、男衆が帰ってくることはありませんでした。

それもそのはず、彼らはすでに人間の手によって男衆は捕らえられ、奴隷へとおちていたのです。

そんなことにも気づかず、パパ、遅いなぁなんて思いながら、家でのんきにご飯を食べていた自分たちが恥ずかしいと、今も思います。


そしてついに、人間が襲ってきました。

人間は火矢を放ち、私達はごうごうと燃え盛る家からでなければいけませんでした。

火に巻き込まれないように、と急いで出てきたせいで、武器や身を守る道具もろくに持つことができませんでした。

外に出ると、あちらこちらで人間たちに捕まってしまった村の人達の悲鳴が聞こえました。


人間たちに捕まらないように、母と私は必死で逃げました。

私の走る速さでは追いつかれてしまうから、母が私を抱っこして。

何日も、不眠不休で走り続けました。


母は、もうすでに限界でした。

一緒に逃げていた村の人達も次々と死んでいってしまい、父も死んでしまった。母の精神は、もうすでに壊れていました。

母はずっと私を抱き上げていたので、いくら体力の多い獣人といえども、限界だったのでしょう。


―――ついに、母も死んでしまいました。


私一人ではどうしようもありません。

力も知識も足りないただの子供なのですから。

ただ、私がいたのは山の中でした。

最悪なことに、山賊が居る山だったのです。


まぁ、そこからはお察し、ということで。

私は山賊に見つかり、売り飛ばされ、奴隷に堕ちました。

もう、そこからのことは思い出したくもありません。……というか、思い出せません。

記憶が曖昧なのです。

ですが、人間へのとてつもない恐怖が心の底から湧き上がってくるのです。


もう、私にあるものといえば、この身体一つだけ。

…いえ、私は奴隷なので、この身体さえも自分のものではないんでした。



では、何も持たない私は、どうすれば良いのでしょう?

だれか、教えて下さい………

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