第三十四話 少女の第二形態。有給申請確定。
作者の都合により、次の投稿から投稿時間が十二時から十六時となります。
ご了承ください。
マーヴィリーの性格が当初と変わっている気がしないでもない作者です。すいません。
本編どうぞ。
―――あまり、時間がない。
イネッセはボロボロ、私もここに来るまでに魔物を浄化しすぎた。
あの黒いモノも、一時的に抑え込んでいるだけ。いつ、暴れ出すかもわからない。
瘴気に完全に取り込まれてしまっているあの少女を助け出すためには、時間を逆行するか何なりして、“最初からなかったこと”にしてしまうくらいしか思いつかない。
が、この体では、そこまでの力は使えない。
どうにかして神のときの身体に戻りたいが、それも、神界とこの現界の力の差から、どうしても時間がかかってしまう。
私が連れてきている神官も、アレンジのみ。
他の神官がいればどうにかなったかもしれないが、流石に今呼び出すことは残りの力的に困難。
どうしようか。
今の残りの力を使って、黒いモノを浄化してしまうのは容易。
だが、イネッセの要望は、あの瘴気に完全に取り込まれてしまっている少女を、あの瘴気の中から「助け出す」こと。
あの少女ごと浄化してしまうのは、さすがに違うだろう。
「…………せ、ぃん…と、せー、じゃ……さま。ごめっ……な、っさ……。」
イネッセが、セイント・セージャーの名を呼ぶ。
少し他人行儀で悲しい………と思うも、今はそれどころじゃない、と顔を引き締める。
「……謝らなくて、いいから。…ね? 大丈夫。……じっとしてなさい?」
そう言うと、イネッセは安心したのか、
「は…ぃ……。」
と言って、私に身を委ねる。
イネッセに大丈夫、とは言ったけれど、正直、どうにもならない。
浄化するか、しないか。
«…………ゔ、ぁ……っぁ…………が……うぁ…»
鎖で一時的に拘束するついでに、少しだけだが、周りの瘴気を浄化しておいた。
そのおかげか、勢いもおさまってはいるが…。止まる気配はない。
どうやら、少女自身が瘴気を抑えるのは無理のようだ。
やはり、王クラスの魂の練度でないと、瘴気を抑えるのは無理だったか。
イネッセを一旦どこか安全な場所に送り届けようと、立ち上がる。
その時、衣の裾が大きな破片に引っかかる。
「…あー、これ邪魔だね。」
そう言って、無駄に長い衣の裾を抑える。
«…が、ぁ……あ、ゔ………ああああああああああああ゛あ゛あ゛…!»
そして、ついに獣の咆哮のような声をあげた少女が、黒い球体の中から浮き出てくる。
その時点で、私が巻き付けた鎖が無用の長物と化し、霧散していく。
少女の体に瘴気がどんどんと取り込まれており、少女の肌がみるみるうちにどす黒く変色する。見開かれていた瞳が充血して赤くなり、猫のように縦長の虹彩が入る。
「……っどんどん人外みたいな見た目になるわね……!」
というか、進行が早い。早すぎる。
先程のように球体のままでいてくれたらどんなに楽だったか。
あー、うん。これは有給申請確定だわ。
«………あ゛、ぅゔぁ……………»
変化には痛みも伴うのか、時折うめき声を上げる。
ここは危険なので、イネッセをを連れて行ったん退散したいところだが………。
この少女をほったらかしにはできないので、イネッセを転移させる他ない。
「オースティング・ガーバナーの名において命ず 理の一端に 【森羅万象】」
「ぉ、ね………せぃ……んと、さ、ま? なにを―――」
危ないので、問答無用で転移させる。緊急事態だから、しょうがないと言えばそうなのだが……。すごい申し訳ない。後で謝っておこう…。
あと、向こうに送る前、なにかイネッセが言っていた……かな?
…………終わった後に聞こう。
その時、ドグン、と大きな波動があった。
少女の方を見やると、元々は面影がまったくない、まるで悪魔のような容姿に変わっている。
縦長の虹彩が入った瞳を愉悦に染め、その紅く長い髪を漂わせながら、ギザギザとした歯が並ぶ口をニヤリと歪ませ、ケタケタと笑う。
この状況のなにが面白いのやら。
これが終わったら、絶対、有給、申請してやる…。
そう、心に決めた。
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