第三十三話 訴え
今回はマーヴィリー視点です。
遅くなってすいません!!
「………………………ぉ……ね…ぇ…さ、ま………………?」
かすかに、どこからかそんな声が聞こえる。
「イネッセ…っ?」
イネッセだ、と確信し、あたりを見渡すが、瓦礫が多く、見つけることができない。
«………う゛……う゛ぁ…………»
うめき声を発しながら、黒く禍々しい球体は私を排除しようと動き始める。
「っ!?」
まずい、まだ大本が残っているのを忘れてた!
とりあえず、一度魔力で吹き飛ばして―――
「……ぉ、ね……さ、ま………だ……め……っ!」
「!?」
そんな私を止めるように、イネッセが飛び出してきた。
服はボロボロ、足も引きずっており、半ば這って来たからなのか、いくつも血が滲んでいる箇所がある。
おそらく、怪我のせいで逃げることもままならず、とりあえず瓦礫の下に居た、というところだろう。
「イネッセっ! なんで…………。」
なんでこの怪我で出てきたのか、と慌てて回復魔法を使う。
「だめ…。こ、の…こは、……この子、の……意思……じゃ…な、い……か…ら………。」
「わかったわ、わかったから。
イネッセ、話しちゃダメよ。」
内部の損傷も激しい。
回復が終わったとしても、精神が大丈夫かどうか……。
まだこんなに幼いこの子に、アイツ、何やってんだよ……ッ!
絶対、●●●●(自主規制)
っと、今は、回復に集中しなければ。
「だから、ちょっかいかけないでね。」
そう言って、黒い球体を鎖で一時的に拘束する。
攻撃はしない。
イネッセが言ったからね。あと、なんでそういったのかも気になるし。
「……ぁっ……かふッ…けホッ………。けホッ…ケほっ、けホッ……。」
イネッセが苦しげに何度も咳をする。
大丈夫か、と顔を覗き込んだのも束の間、ゆっくりと顔色が良くなっていく。
何度も咳をしていたのは、口の中にあった砂や埃………そして、血を吐き出すためだったんでしょう。
というか、口の中に血があるってことは、そこまで厳しい教育という名の拷問にも等しいモノを受けていたんでしょう。
ブッk……ゴホンッ。
いや、失礼失礼。少々気が立ってたもので。
そんな事言ってる場合じゃないの。うん。
イネッセを早く安全な場所に―――
「ぉ……ねぇちゃ………。」
「イネッセ、しーっ。」
この姿でお姉ちゃんって呼ばれるのはちょっと、いやかなりマズイからね。
いや、別に! お姉ちゃんって呼ばれるのが嫌なわけじゃないから!! 違うから!!
だからそんなに悲しそうな目で見ないで!!
「あの子…は……。」
「うん、うん、わかったから。安全な場所へ行こう? 怖かったでしょ?」
「ちがっ……ちがくて……。あの子、あの子……助け、られなぃ…?」
必死にそう訴えてくるイネッセ。
うん。
そうだね。
あの子も、瘴気に侵されているだけで、元々は平凡な少女だったんだろうね。
でも、私じゃ世界の理を変えることはできない。
神の体に戻るとしても、時間がかかってしまう。
「………。」
どうしようかな。
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