第三十一話 さぁ、行きましょうか。
今回はちゃんとマーヴィリー視点です。前半はイネッセ視点ですが。
«……痛…い………痛イ…………イタ、イ…よ、う………»
真っ白になった頭に流れ込む、気持ち。
「あ、ああ。」
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
それは、それは、誰に向けて、何についての謝罪なのか。
ただ、罪悪感だけがこみ上げてくる。
見なくて、ごめんなさい。
ちゃんと、あなた達のことを見なくて、気づかなくて、ごめんなさい。
寄り添えなくてごめんなさい。
救えなくて、ごめんなさい。
力がなくて、ごめんなさい。
何もできなくて、何もしてあげられなくて。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
«う……………う゛…? あ゛、ナタ゛……は…?»
…………………………え?
わたし?
わたしは、イネッセ・フォレスト。
フォレスト王国の第四王女で、マーヴィリー姉様の、妹。
«ま………ゔぃ…り…?»
姉様はね、すごいの。
「しんたく」っていうやつもできるし、「じょうか」ってやつもできる。
〈神の御子〉っていう人なんだ。
あぁ、マーヴィリー姉様なら、あなたを救えるかな?
マーヴィリー姉様……
△▼△▼
「マーヴィリー殿下!? どこへ行かれるのです!?」
騎士たちの合流後、私は安全圏に避難するとすぐに騎士たちから離れていった。
「……どこへだって良いでしょう。害をなすことはいたしませんし。
ただ、私の侍女の方へ向かうだけです。」
「……。」
騎士たちが絶句する。
そりゃそうだろう。
だって、この緊急時に此処で一番位の高い私がアマイラにすべてを委ね、侍女の方へと向かおうとしているのだから。
他の王子や王女たちなら行くのかもしれないが、たとえ私が行ってもただ混乱させるだけで役にはたたない。
やくたたずは引っ込んでますよ。
「やくたたず」は、ね。
でも、別にあの瘴気で感情が汚染されている少女のところに、神の御子としての私がいっても、良いわよね?
だって、一般的に神の御子は浄化をするために生まれてきているとされているのだから。
「…アレンジ。」
「はい。」
私の優秀な侍女は、瞬時に私の意図を察して準備をする。
「さぁ、行きましょうか。」




