第二話 アマイラを傷つけた罪は。
短くてすいません……!!
「っ………、はぁ、っ……はぁっ…」
淑女としてはぎりぎりのラインの速度でアマイラの部屋へと向かう。
アマイラ……!
今世でここまで動いたことはあまりない。
もう息はゼイゼイで、肺も痛い。この貧弱な体が嫌になる。
それでも今は、アマイラのことが最優先。
早く、早く行かなければアマイラが危ない。
私は基本的に人間に興味はない。
が、アマイラは別だ。
今の私の半身。双子の妹。
私の心を理解してくれた、たった一人の人間。
絶対に、死なせたくない人間。
「きゃあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
悲鳴が聞こえる。向かっている先で。
間に合わなかった!?
いえ、まだ大丈夫!
すぐ処置をすれば…!!
「……アマイラ!」
アマイラの部屋についた瞬間、様子を確認する。………アマイラの血が、カーペットにシミを作っていた。周りを見渡しても、狙撃手の姿を見ることはできなかった。
逃げられたか………っ!
「ホープっ。」
「はい。」
後ろをついてきていたホープがすぐさま返事をする。
そしてホープはアマイラの近くに座り込み、両手を組む。
「【すべてを救うことはできぬと知った ならば目の前の者を助けると誓った 神が見ているのならば願う
我が名は、ギヴ・ホープ】!!」
その言葉を引き金にして、魔法陣が展開される。
治癒魔術。
神の力を借りて行うと定義されている行為。
「………っ、かはっ……っ、……」
「あ、アマイラ!!」
口の中に入っていた血液を吐き出し、アマイラが、目を覚ます。
私は思わず手を伸ばし、アマイラを抱きしめる。
「良かった、良かった、アマイラ……。」
「おね、さま…?」
アマイラはそう呟くと、安心したように体を此方に預けてくる。
しばらくそうしていると、アマイラは安らかな寝息を立て始めた。
「マーヴィリー殿下、後は……。」
「ええ、そうね。」
私はホープたち治癒術師にアマイラのことを任せると、自室に戻るよう促される。
廊下を歩きながら、それにしても、と考える。
王位継承争いに関わってくるかもしれない、というだけで狙撃とは。
…そのようなことをする王に、この世界を任せて良いのもか………。
しかもアマイラが警戒心を薄れさせているであろう、アマイラの自室で狙撃するなんて…
「…なんと悪劣な。」
人生で一度も出したことのないであろう、低い、低い声。
こうなれば、アマイラを王位にと押している貴族たちが騒ぎ出してしまう。
タダでさえ騒がしいというのに、更に面倒事が増えてきているなぁ……。
だけれども。
王位継承争いにかこつけて、私のアマイラに手を出そうとするなんて……
「……必ず。」
アマイラを傷つけた罪は、必ず、償わせる。
首を洗って待っていなさいよ?




