第二十六話 イネッセ奪還作戦 最終段階④
視点がコロコロ変わり申し訳ございません。
今回はマーヴィリー(マイ)からアマイラ(アイ)に変わります。
「―――では、会場の皆様。これから奴隷オークションを開始いたします!」
多くの仮面をつけた人々がいる会場へと、司会が高らかに宣言する。
その声とともに、リン、リン……とどこからか鈴の音が聞こえてくる。
鈴の音。今、たとえその音はわたしにしか聞こえないとしても。
「な……。」
数秒もすれば、聞こえてくるだろう。
はっきり、鮮明に。
―――己の破滅を告げる鈴の音が。
……我が国、フォレスト王国。
その軍事力は、他国を遥かに凌駕する。
魔族領に属するという隣国を抱え、なおも大国として君臨するフォレスト王国。
フォレスト王国のその防衛には、とある騎士団が関わっていた。
その騎士団の名は、【ディソール騎士団】。
主人の悪を裁いたとされる騎士たちの集まりだ。
団員たちは一致団結し、仲間のためなら命を賭けるほどの協力関係を築いている。
そんな騎士団のトレードマークと言えるものは、アザミの花が描かれた鈴。
その鈴の音は、この国の人間の誰もが知っている音であり、悪を裁く象徴でもある。
――さあ、ショーを始めましょうか。
△▼△▼
「―――では、会場の皆様。これから奴隷オークションを開始いたします!」
司会が宣言する。
これから、何が起こるのかも知らずに。
―――私、アイ(アマイラ)は、イエガル商会長に連れられ会場まで来ていた。
結局最後に私は奴隷化されるけども、ちょっとは希望を叶えようとでもしたのかしら。
私は無事にオークションを閲覧することができている。
まぁ、始まりの宣誓はされたけど、とあるもののせいで周りは騒がしく、人が運ばれてきたりはしておらず、舞台の上には司会がいるのみだ。
―――リン、リン……
一定のリズムで聞こえてくる鈴の音。
それとともに、彼らが来ているであろう鎧の擦れる音も聞こえてくる。
もう既に会場は阿鼻叫喚の図となっており、騒がしいことこの上ない。
まさかバレるとは思っていなかったようである。
なぜなのだろう。
程なくして、会場に騎士団が現れる。
その兜にはアザミの花が描かれた鈴が揺れている。
お姉さま、いつの間に手配したんでしょう?
まぁ、あの方が化け物じみているのは昔っからですものね。
それをいちいち気にしていたらきりがないわ。
そう納得し、頭を切り替える。
騒然とするなか、私はスッと前へ一歩踏み出す。
そして、仮面を脱ぎ捨て、淑女の礼をする。
「お集まりいただき、光栄ですわ。【ディソール騎士団】の皆様。」
顔を上げ、騎士たちと真っ直ぐ向かい合う。
いつの間にかナナリーとホープさんも後ろに控えてくれている。
「……お言葉、感謝いたします。
我らは命に従ったまででございます。…それで、貴殿の姉上はどちらに。」
先頭に立つ寡黙な騎士がそう告げる。
淑女の笑みは崩さない。
「あちらに。」
私は舞台の方へ視線を投げる。
それとともに、舞台の袖からガシャン、と音がする。
それは、檻が破壊された音。
舞台袖から数十人の人々が出てきており、その中には子供もいた。
その先頭には、マーヴィリーお姉さまがいた。
「お約束は守れたかしら?
騎士団長様。」
「……まさか、本当に。
…。ええ。もちろんですとも。」
お姉さまは、舞台の上で微笑んだ。
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