第二十話 イネッセ奪還作戦 第三段階 ①
「―――…………………ん……。」
体を起こした途端、痛みが襲いかかってくる。
石造りの床に寝そべっていたからだ。
――私とアレンジの誘拐から数時間。
私達は石造りの牢獄で目が覚める。
最初から目が覚めてたから違うんじゃないかって?
うん、そのとおりだよ。
だって、睡眠薬なんて効かないんだもん、私達。
今頃、アイたちは商会かな。
流石にアイの方もオークションにねじり込むなんてことできるわけがない。
ねじり込めるとしたら、一人二人くらいだろう。
私達みたいな足がつく子供じゃなくて雇われた冒険者―――足がつかない美女を狙うほうが得策だと思うし。
「……無事ですか、マイさん。」
最低限の敬語で話しかけてくるアレンジ。
どうやら二人一緒の檻に放り込まれたようである。
「……ええ。アレンジは?」
「無事です。
ただ、武器は回収されてしまったので、体術のみになるかと。」
ま、武器は回収されるわな。
というか、まじで奴隷化するつもりかな?
聞いた話だと、オークションは奴隷化はされていないが、鎖などで縛られた人々が商品として売り出されるらしい。
この国は生活水準は高い方なので、生活難民者は約十九%と少ない。
奴隷として家族を売りに出す、なんてことはほぼないと言っていいだろう。
なので、奴隷の殆どが無理やり捕まえられてきたか、盗賊などに売られてきたか、そのどちらかの可能性が高い。
「……ふぅ。」
にしても、この牢屋の中はなにもないのね。
あるとしたら寝る時用の毛布くらいかしら。それも粗悪品。
周りには同じような人々が眠っていて、その服は様々。
貴族のような身なりをしている者、町娘のような服を着ている者、エプロンを付けている者など。
無差別に誘拐しているようである。
イネッセは……いないわね。
私達以外、起きている人はいない。
もうほぼ深夜だしね。
「……ふぁ……
流石に眠たいわ。一度寝ましょうか。
一応私かアレンジが起きて見張りをして。」
「そうですね。まずはマイさんが寝てください。」
あー、本当に今日はもう疲れたわ。
△▼△▼
―――全快……とはいかずとも、まぁまぁ回復したんじゃないかしら。
あれから数時間。
少しの休眠だったが、疲労感はだいぶ軽減された。
「……ふぁ……。」
といっても、少しの間だったから、眠いことは眠いが。
……話を聞いた限りだと、オークションがあるのは今日。
つまり、ギリギリだった、ということだ。
よかった、間に合って。
「おい!」
と、そこでガラが悪い男たちが入ってくる。
どうやら、外に出ろ、と言いに来たようだ。
先程眠ったばかりのアレンジには悪いが、もう起きないといけない。
周りの檻に入っていた人達が出ていく。
その手には黒い鉄でできた枷がはめられている。
【能力・魔封じ】。異能力と魔法を封じる枷で、ダイアモンドほどの硬度を誇る。
力だけで外せる枷でもないのだ。
私達の手に嵌っているのと同じものだろう。
「おい、そこ!
早く出ろ!」
アレンジが起きたばかりでモタモタしていると、ガラの悪い男から強い口調で怒られた。
面倒くさ……。
でも、移動するってことは、イネッセに会えるかもしれないわね。
イネッセはその用紙の珍しさからメインでしょうから、あまり期待せず行きましょうか。
次話は、イネッセとアイ(アマイラ)視点へと移り変わります。




