第十九話 イネッセ奪還作戦 第二段階
翌日。
私達は、目をつけていた商会のうちの一つ、オリゴ商会の商会長に会っていた。
「―――いやぁ〜、本当にお美しいですなぁ、アイさんもマイさんも。
そんなお二方が継がれるのであれば、ジークレット商会も安定するでしょうなぁ〜。」
ニヤニヤと気色悪い笑みを漏らしながら対面に座っている、オリゴ商会の商会長、イエガル。
その目は私達二人……。というか、アマイラの方へと向かっている。
気持ち悪いものには少し耐性がついている私もアマイラも、少し引き気味である。
「い、いえ〜。そんなそんなぁ。
ちなみに、秘密のお話とはなんのことなんですか?」
「ぐふふ、実はですねぇ、お二方、奴隷オークションにご興味はお有りで?」
笑い方も気色悪いが、そこはスルー。
オークション、ね。思ったよりも早いわ。
『第二段階として、オークションへの参加権を得て、オークションへの参加を決める。』
第二段階に行くの、ここまでスムーズに行くとは思ってもなかったわ。
「! 奴隷オークションですか?」
アマイ――アイも、これには驚いているようだ。
此処までうまくいくと思っていなかったのはアイも同じようだ。
「ぐふ、じつは、もうじき開催されるのですよぉ、そのオークションが。
なんとも、今回は珍しい奴隷が出るとか。」
「!」
珍しい奴隷……おそらくだが、イネッセのことだろう。
髪と瞳の色が神秘的だし、まだ10歳と、洗脳に対する抗体が出来上がっておらず、洗脳しやすい年齢だからだろう。
イカれた研究者や、幼女趣味の変態など、幅広く人気が出そうである。
「……ぜひ、参加させていただきたいのですが…。」
この場では初めて私が口を開く。
「ぐふ、それをしたいのはやまやまなのですがぁ、オークションに出るには色々と誓約がありましてぇ。」
誓約、ね。
色々と読めてきたわ。
「誓約、ですか?」
アイがキョトンとしたように返す。
「えぇ〜。
このオークション、実は実績がないと入れなくてですねぇ。
しかも、同伴者は一名のみなのですよ〜。」
ふぅん、それで同伴者にならなかった方を奴隷にする魂胆かな?
白々しい。
「……私はいいので、アイを同伴者として連れて行ってくださいませんか?」
身代わりじぞ―――旗頭であるアイを危険に晒すわけにはいかないし、いざとなればアレを使えばいい。
「ぐふふ、ええ、それはいいですよぉ。」
「マイ姉さん、いいの?」
アイもちゃんと意図を理解してくれたみたいだけど。
「……いいの。楽しんでらっしゃい。」
「ぐふ、ではアイさん、打ち合わせがあるのでこちらへ。
ああ、護衛の方もどうぞ。」
そそくさとイエガルは退出していく。
それに続いてアイも不安げに私の方を振り返りながら退出していく。かわいい。
そして、アイの方へとナナリーさんとホープが向かう。
私の方はアレンジだけである。
「……私は何をすればいいのかしら?」
ポツリと呟く。
先程出された紅茶。アレには睡眠薬がもられていた。
アイの方はさり気なく解毒してそのことを伝えておいたからちゃんとうまくしてくれるでしょう。
アレンジに目配せする。
そのあとすぐに、私はいきなり寝落ちしたふりをする。
それに伴ってアレンジも寝たふりをする。
アレンジたちも席に座って紅茶を飲んでいたからね。
まぁ、アレンジとホープには効かないんだけど。
しばらくすると、周りを黒い服を着た男たち―――王家で言う、「影」のようなものだろう―――が私とアレンジを運んでいく。
はぁ……。
思った通り過ぎて、なんの面白みもないわねー。
さて、どう料理してあげましょうか。




