第一話 妹が狙撃されることの知らせ
第一話です。
数日は一日に一話のペースで上げていきたいです。
「…ふぅ………。」
疲れたなぁ。
どうにかこうにか秘密裏に神託を終え、部屋へと戻ってきた私は、ふわふわのクッションを抱きしめる。
秘密裏にしなければいけないから精神力を使うし、神託自体も結構な魔力を使う。
誰か代わりにやってくれる人とかいないかな……。
そうだ、私の妹、アマイラもできるんじゃないかな……魔力は多いし…
そんな事を考えていたとき。
―――コンコン…
「マーヴィリー殿下、失礼いたします!!」
何やら慌てた声が聞こえてくる。
「…どうぞ。」
この声は、私についてきた一人、ペイト―――アンティス・ペイトの声だ。
「マーヴィリー殿下、失礼いたします!!
妹君が、アマイラ殿下が、狙撃されたとの見通しが!」
私についてきた世話係―――神官には、個々の力がある。
異能力や、魔法とはちがう力が。
例えば、サルヴィン・ザードは、仕えた主に幸福を与える力があり、アンティス・ペイトは、未来を見据える力を持っている。
ザードのようなささやかな力もあれば、ペイトのような強力な力もある。
この力は知られるわけにはいかないから普段隠している。
………それにしても、アマイラ、私の双子の妹が狙撃された未来を見た、とは。
「……アマイラの容態は? …そして、だれが、アマイラを?」
ふつふつと、怒りがこみ上げる。
私も神とはいえ、怒りを覚えないわけでは無い。
この国、フォレスト王国の今代の国王は子が多く、小さな子まで含めると九人もいる。それに加えて四人の妻がいる。
フォレスト王国では、「王位争い」がある。
周辺の国ではそんな古いしきたりはもう無い。
だが、この王国では王位争いというものがあった。
古臭くて、カビの生えたようなただの儀式だ。
まぁ、そんなわけでかなり家族の中は険悪、特に兄弟間の仲の悪さは地獄。
そんな家族の中でも、特に良くしてくれたのが母である第二王妃と、アマイラ、そして妹である第四王女、である。
それに加えて、アマイラは私の片割れ。
生まれたときから一緒に居て、私にとって可愛い妹だ。
そんなアマイラを狙撃するとは……
巫山戯ないでいただきたい。
ペイトが言いにくそうに、口を開く。
「アマイラ様はすぐ治療を受ければ命には別状ありませんが、受けられなかった場合……。
…そしておそらく、王位争いに参加している候補の皆様のお一人が、牽制のために狙撃手を雇った可能性が高いかと。」
「……王位争い…といえば。」
「はい。
……今、候補として争っていらっしゃるのは、
第二王子、フォレスト・ストライフ王子殿下、
第一王女、フォレスト・ノーレッジ王女殿下、
第四王子、フォレスト・イヴォデヴァ王子殿下
……かと。」
第二王子、フォレスト・ストライフ。
争いを好む、好戦的な性格。
第二王女、フォレスト・ノーレッジ。
知識に貪欲な者。
第四王子、フォレスト・イヴォデヴァ。
こいつだったら一番面倒くさい自体になる。なんせ、こいつは―――
「マーヴィリー殿下、時間がございません。
ホープを連れて、早く!!」
ギヴ・ホープ、か。
確かに、ホープは治療の魔術を扱うことができる。
ああ、どうしよう。
今ココでこんな事を考えている暇はない。
早くつれて行かないと。アマイラが。
ああもう!
そして、私はホープを連れてアマイラのところへ向かったのだった。




