89 対策
すみません、以前のクローヴィスのステータスで装備の項目が設定されていませんでした。今回の話の冒頭で再確認しています。
「魔神化」「魔人化」ですが、連続使用できないような制限が必要ではとのご指摘をいただいたので、スキル説明文を補った上で再掲しています。
湿ってひんやりとした鍾乳洞を進みながら、
「『窃視』『看破』『再鑑定』」
クローヴィスの現在のステータスを確認する。
Status──────────────────
クローヴィス・エルトランド
エルフ
レベル 5079
HP 50790/50790
MP 914902/914902
攻撃力 99811
防御力 187742
魔 力 1409381
精神力 585123
敏 捷 567269
幸 運 12032
・固有スキル
人間物品化
・取得スキル
高慢5 精霊魔法5 儀式魔法5 魔獣召喚5 古式詠唱5 高速詠唱5 無詠唱1 魔導具作成3 従魔術3 アイテムボックス5 鑑定 偽装
・装備
世界樹の杖(世界樹の幹から削り出された杖。攻撃力+11200、魔力+34100、精神力+34100、幸運+14300)
エルヴンマント(防御力+21110、敏捷+23400)
隼の靴(防御力+10600、敏捷+10600)
殺戮の指輪(古代の虐殺者が好んだという指輪。攻撃力・魔力+42900、防御力・精神力-21000、幸運-42900)
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Skill──────────────────
人間物品化
(中略)
現在物品化している人間:
椎名明里Lv1352
文月夢乃Lv1024
能勢直哉Lv1144
石上俊介Lv1223
神林カレンLv1538
ハン・ジウォンLv1100
ルイーズ・ノースタインlv1297
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物品化された人たちのリストに変化はなかった。
クローヴィスはまだ、探索者たちを生贄にはしてないらしい。
ひょっとしたらはるかさんが時間を稼いでるのかもしれないな。
でも、時間の猶予はないと思うべきだ。
ここに来るまでのあいだ、俺はただUFOに乗ってたわけじゃない。
久留里城ダンジョンのボスから得たSPを使ってスキルの強化を図っている。
「隠密」を3から5に。
「気配探知」を1から4に。
これに「ステルス」を合わせることで、奥多摩湖ダンジョンをうろつく水棲・半水棲モンスターのほとんどをスルーできた。
どういう仕組みでか、ローパー(イソギンチャクのような細い触手をうねうね生やしたモンスター)だけは俺に反応するんだが、こいつは出現場所から動けない。
多少の被弾は覚悟で強引に駆け抜けた。
ちなみに「逃げる」は使ってない。
以前芹香が言ってたように、狭いダンジョン内でモンスターから(普通に)逃げるのは難しい。
「逃げる」と違って、どこまでもモンスターが追いかけてくるからな。
だが、普通に逃げるばあいには、「逃げる」と違って、逃げタイマーや逃げエリアの制約がない。
モンスターを完全に撒くことができる状況なら、「逃げる」より(普通に)逃げるほうが早いのだ。
最初に俺が「逃げる」のことをハズレスキルだと思ったのもそのせいだ。
源内(からくりドクター)が加入したので、「シークレットモンスター召喚」を2から3に上げた。
これで堡備人海、布袋、源内の3体を同時に召喚できる。
今の道中では隠密性を優先して堡備人海や布袋は召喚してないけどな。
じゃあクローヴィスとの戦いでは活躍できるのかというと、それもちょっと難しそうだ。
俺の召喚できるモンスターのレベルは現在2941。
レベル5079のクローヴィスの相手をするのは荷が重い。
人手が必要なばあいに備えて召喚できるようにはしたが、クローヴィスに直接ぶつけるのは避けたいところだ。
クローヴィスのサンダーグリフォン(や他にも召喚できるかもしれない魔獣)との召喚獣バトルも、勝ち目があるとは思えない。
レベル差を抜きにしても、「相撲」主体の堡備人海は相手が人型をしてないと本領を発揮できないからな。空なんて飛ばれたらなおさらだ。
トレハン要員である布袋の直接戦闘力は微妙だし、源内はからくりUFOのパイロットとしてダンジョンの外で待機中だ。
もしぶつけるならクダーヴェだが、クローヴィスが何か対策を講じてくる可能性もある。
天狗峯神社境内での戦いでは、詠唱速度の遅さがネックになってクローヴィスを逃してしまった。
その反省と、クローヴィスの保有スキルへの対抗を兼ねて、「高速詠唱」を3から5に。
さらに、「高速詠唱5」で取得可能になった「無詠唱1」も取得した。
クローヴィスも「高速詠唱5」と「無詠唱1」を持ってるからな。
スキルが同等になったことで、詠唱時間の不利はなくなった。
動きの素早いサンダーグリフォンを捉えるためにも、詠唱の高速化は欠かせない。
逆に、なぜこれまで「高速詠唱」を上げなかったのか? と言われるかもしれないな。
その理由は単純で、必要なSPが高すぎたからだ。
「高速詠唱」は取得必要SPが1600の系統だから、スキルレベルアップに必要なSPは、6400→25600→102400→409600と膨らんでいく。
3から5に上げるのに、なんと512000ものSPが必要だった。
手痛い出費ではあるが、必要SPが高いことにはメリットもある。
スキル取得・レベルアップで加算される能力値ボーナスのことだ。
スキルを取得・レベルアップすると、それに費やしたSPと同じ額のボーナスが、関連する能力値に付与される。
「高速詠唱」なら、「魔力」と「精神力」に半々だ。
つまり、「高速詠唱」をレベル5にしたことで、俺の「魔力」「精神力」はそれぞれ256000も上がってる。
……まあ、クローヴィスも同じスキルを持ってるんだから、能力値ボーナスも同じなんだけどな。
それでも詠唱速度と能力値ボーナスの面でイーブンの状況になるわけだ。
さらに、「上級雷魔法」がサンダーグリフォンに通りにくかったことを踏まえて、「風魔法」を5まで上げ、「上級風魔法」を取得。
風属性の魔法は、雷属性ほどではないが弾速が速い。
空気の流れを乱すことで、サンダーグリフォンの飛行を阻害することもできるだろう。
とはいえ、「風魔法」は取得SP100系スキルだ。
5まで上げ切っても消費するSPは34100にすぎない。
「上級風魔法」の取得SP25600と合わせても59700。
能力値ボーナスの面ではないよりはマシといったレベルに留まってる。
……まあ、「ないよりはマシ(MP・魔力+29850)」というのも贅沢な話ではあるんだが。
平均的な探索者(オール10君)換算で2985レベル分のボーナスだ。
そもそも、必要SPが多かったら多かったで文句を言い、少なかったら少なかったで文句を言うのもおかしいだろう。
ダメ押しで、「強撃魔法」を2から5に一気に上げて、魔法の火力を底上げした。
最初期から愛用してる「強撃魔法」は、
Skill──────────────────
強撃魔法5
消費MPが(S.Lv×10)%増える代わりに魔法の威力が(S.Lv×15)%上がり、ノックバックが発生する。
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という効果。
スキルレベル5になれば、魔法の威力は1.75倍にもなる。
なお、このスキルは常時発動ではなく、自分の意思でオンオフが切り替えられる。
だから、スキルレベルを上げても、恒常的に消費MPが多くなってしまうわけではない。
魔法の火力の底上げでは、「二重詠唱」も候補ではあった。
Skill──────────────────
二重詠唱1
呪文の音節に複数の意味を持たせることで、二つの魔法を同時に詠唱することができる。(50-S.Lv×10)%詠唱時間が長くなる。
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でも、「二重詠唱」は詠唱時間が長くなるデメリットがある。
「無詠唱」でその詠唱時間をなくせないかとも思ったんだが、UFO内で試したところでは無理だった。
SPに余裕があれば両方覚えてしまう手もあったが、他のスキルとの兼ね合いもあって、「二重詠唱」の強化は見送った。
「SPに余裕があれば(現在SP185万)」なんてのは、他の探索者からしたら噴飯ものだろうけどな。
他には、「自己再生」を5に、「忍術」を4に上げている。
もうひとつ、「ショートテレポート」を1から4まで一気に上げた。
Skill──────────────────
ショートテレポート4
空間を飛び越え転移する。転移可能距離は(S.Lv×2)メートル以内。再使用には(60-S.Lv×10)秒が必要。ダンジョンの壁を通り抜けることはできない。
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これで転移可能距離は8メートル。
5まで上げきれば10メートルにできるが、「ショートテレポート」も取得必要SPが1600の系統だ。
4から5に上げるのにSPが409600もかかってしまう。
現在のSPなら取れなくもないが、今の状況でSPを完全に空にしてしまうのも問題だろう。
「高速詠唱」を欲張った分、「ショートテレポート」は4までに留めておくことにした。
どうしても必要ならその場で上げるという手もなくはない。
ちょっと悩んだのは、次の二つのどっちを上げるかだな。
Skill──────────────────
魔人化1
(S.Lv×15)秒間、最大HPが半分になる代わりにそれ以外の能力値が3倍になる。連続使用すると寿命が縮む。連続使用のデメリットがなくなるまでには12時間が必要。
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Skill──────────────────
魔神化1
(S.Lv×12)秒間、最大HPが20%になる代わりにそれ以外の能力値が10倍になる。連続使用すると魂が燃焼する。連続使用のデメリットがなくなるまでには72時間が必要。
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この二つの比較では、今回は「魔人化」を選んでいる。
クローヴィス相手なら十倍もの火力は必要ないだろう。
「魔人化」のほうが持続が若干長いので、戦いを安定させたいならこっちのほうがよさそうだ。
「魔神化」も使わないと決まったわけではなく、スポット的に火力アップのために使う可能性は残ってる。
先々のことまで考えるなら、連続使用のクールダウンが短い「魔人化」のほうが使いやすいという理由もあるな。
というわけで、「魔人化」のスキルレベルを3まで上げた。
これで持続時間は45秒。
かなり扱いやすくなったんじゃないだろうか。
他にもいくつか細かいスキルを取ったが……それは使うときに説明しよう。
クローヴィス対策は以上だな。
使ったSPは120万をちょっと超えるくらい。
65万ほどを温存した格好だ。
本当は「切り札化」も上げたかったが、これもコストが重すぎた。
「獲得SPアップ」も今の状況では後回しにするしかない。
他にもシナジーの利くスキルがありそうな気もするけど、UFOでの移動時間ではこれが限界だった。
ちなみに、「切り札化」の切り札設定は「獲得SPアップ」のままになっている。
どれか攻撃系のスキルに付け替えることも考えたが、24時間に一回しか変更できないからな。
状況を見て臨機応変に判断したほうがいいだろう。
そうそう。久留里城ダンジョン踏破時の特殊条件で手に入れたアイテム類の処理もあった。
Item──────────────────
奥義書・破の巻
使用すると一部の秘匿されたスキルを取得可能状態にする。
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これは使用。
武器関連でいくつかよさげなスキルがあったものの、クローヴィスが相手なら武器スキルは十分間に合ってる。
スキルの取得は見送りだ。
Item──────────────────
極意書
使用すると固有スキル以外の任意のスキルのスキルレベルの上限が6になる。
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判断難しすぎ! 保留だ、保留。
Item──────────────────
秘伝書・急の巻
使用するとSPを100000獲得。
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これも保留。
というか、たぶん自分では使わない。
SPは自力で稼げるから、アイテムとして取っておいたほうがいいだろう。
信用できる探索者に内密に売る、なんて発想もありだ。
芹香にあげてもいいんだが、前のときはもっと色気のあるプレゼントを用意しろと怒られてしまった。
Item──────────────────
賢者の石のかけら
使用することで取得済みのスキルのデメリットを一つ削除する。
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もちろん保留だ。
「極意書」と同じく、熟慮が必要なアイテムだな。
使ってしまってからもっといい使い方を思いついたらと思うと、おそろしくて簡単には使えない。
……ひとまず、これだけ手を打っておけば大丈夫だろう。
ちょっとやりすぎたかと思ったが、準備不足になるくらいなら準備が無駄になったほうがずっといい。
灰谷さんからの情報によると、奥多摩湖ダンジョンは横に広く縦に狭い造りになってるという。
一フロアが広く、階層数が少ないってことだ。
階層数は4と、Aランクダンジョンでは有数の浅さ。
その代わり、各階層は他のAランクダンジョンの数倍以上。
久留里城ダンジョンと比べると、各階層の広さは5〜7倍にもなるらしい。
だが、俺には「ミニマップ」がある。
からくりタワーの異名を持つ久留里城ダンジョンと違って、各フロアの造りもシンプルだ。
簡単なものながら、灰谷さんからマップのデータももらってる。
奥多摩湖ダンジョンは過去にフラッドが起きたことがあり、そのときに芹香が潜ったらしい。
出現モンスターのレベルは475から。
久留里城ダンジョンよりかなり高いが、スルーする分には関係ない。
いや、今の俺のステータスなら、正面から戦ってもなんの問題もないだろうけどな。
結果、一時間半ほどで、俺は第四層へのポータルの前までやってきた。
これまで同様、ポータルに飛び込む。
が、予想に反して、俺が出たのは奥多摩湖ダンジョンの第四層ではなかった。
剥げかけた朱塗の鳥居が目の前にある。
すぐそばに立つ石碑には「断時世於神社」の刻み文字。
「こんなときに……! いや、こんなときだからか!?」
俺はダンジョン神社の石段を、数段飛ばしで駆け上がった。





